美鶴と街回り
騎士団の詰所から帰ってからは街を探索することにした。
美鶴を連れて武具店にも言ったが、あいにく昨日の従業員、実際店主だったらしいが彼は酔いつぶれて今は店の奥で寝ているそうだ。
今日は普通の従業員が対応してくれた。
それと美鶴に渡すのを忘れていたので昨日勝った剣を渡しておいた。
あらかじめ美鶴に持たせていた剣はカードで召喚したものだったので解除しておく。
次に魔法屋に言ったが、ここも武具店同様酒盛りでグロッキーだそうだ。
それからはまだいっていなかった店を回った。
まず雑貨屋、こちらの世界の日用品を必要なだけ買い込む。
とはいえ僕の扉召喚とコピーのコンボである程度の物はそろう。
美鶴の生理用品は母親の物をコピーしてあるし美鶴もそれで問題ないと言っている。
洗剤なんかも、持ち出せないだけで使う分には困らないし扉を召喚するたびに元の量まで戻っているから必要ない。
しいて言うならナイフやこちらの世界の薬が必要だろう。
もしこの世界に僕達に抗体のない病気なんかがあった場合は、こちらの世界の薬に頼るしかない。
そうなったときのためにもお金は温存しておこうという話になっている。
「ん? 」
雑貨屋では先日村で見かけた革製の水筒や衣類、タオル代わりの布切れが売っていたが、その中には武器や木剣も売っていた。
こちらの常識では庶民でもある程度戦えないといけないから、訓練用に子供に買い与えるのだろう。
ただしその中にひときわ目立つものが売っている。
「これはなんですか」
店員にその品物を渡してみる。
見た目は水晶のかけらのようなものだ。
「こいつは魔獣除けの水晶だが……知らんのかい? 」
なんとそんなものが売っているのか。
けれど魔獣除けか。
虫よけのような感覚なのだろう。
「僕達の地元にはありませんでしたね。
ある程度の魔獣くらいなら倒せますし」
僕の言葉に店員が納得したかのようにうなずく。
前伊に寄った村では置いてなかったし、大きな街でないと売っていないのだろう。
たしかに値段を見ると500シンと少々高額だった。
その後は薬屋に行ってみた。
先の通り僕達に免疫のない病気があった場合の下見も兼ねている。
薬屋では薬草や薬の他に乳鉢やフラスコを売っていた。
昨日食堂でも見かけたがガラス製の器などがあるからこちらの世界の技術力はそれなりのようだ。
ただしフラスコ1個だけで3000シン、試験管一本で1500シンと高額だった。
他にもタバコも売っていたため、祖父のタバコはこちらでも売れると判明したのはいいことだ。
最後に酒場に行くとバーテンダーに話しかけられた。
「あなたの酒が素晴らしいとお聞きしました。
定期的にうちの店に卸してもらえませんか」
「申し訳ありません。
あの酒は私の知人が美味い酒を造れないかという試行錯誤の末にできた産物です。
彼の工房はさほど広くない為、一度に沢山は作れず、それ故に数も用意できませんので定期的には難しいと思います。
けれどこの事は知人に会った際には伝えておきますので」
「そうでしたか、是非ともよろしくお願いします」
昨日の酒の件はずいぶん広まっているらしい。
他にも香水や化粧水、石鹸にタオルとさまざまな物の品質の良さと比較的安価で買えると一晩で話題になっているようだ。
これは本格的に無限収納カバンとコピーの効果を併用する必要があるかもしれない。
そう考えているとクイクイと袖を引っ張られた。
振り返ると美鶴が僕の服の裾を掴んでいる。
「春樹、おなか減った」
言われてみればもう昼時だ。
朝からあわただしかったから忘れていたが僕は朝食も食べていない。
「この店は軽食なんかはありますか」
バーテンダーに尋ねるとメニューを見せてくれた。
よく見ると木の板に手書きのメニューを打ちつけてある。
障ってみると地球の物よりも大分粗いが普通の紙だ。
やはり魔法を使った技術があるのだろうか。
そこも今後探るとして今は食事だ。
空腹に気付くと腹が自己主張を始めた。
「美鶴は何が食べたい」
メニューに書かれた名前を見ているがジョウ魚の蒸し焼きやらポース肉の塩焼きとあるがどんな味なのかが想像できない。
昨日食べたつまみとかからは変な味はしなかったものの、ここではどうなのだろう。
「一番人気はなんですか」
美鶴がバーテンダーに尋ねる。
美鶴は多数の人間相手だと途端に気弱になるが一対一ならある程度のコミュニケーションは可能だ。
またそれが店員だった場合は顕著だ。
服を選びに行った際、複数の店員からおすすめされたり、本屋で本を探してもらう際に数人係になったりしなければ問題はないようだ。
「一番人気はこれかな、若鶏の卵蒸し」
店員が指差した先に書かれた文字を見る。
なんとなく想像できるし悪くないかもしれない。
「じゃあ私はこれ」
そう思っていた矢先に美鶴がそれを選んでしまった。
同じものを頼んでもいいがそれではつまらない。
「じゃあ僕はお任せします。
貴方のおすすめをお願いします」
「おすすめか、じゃあこれになるけどいいですか」
バーテンダーの指した料理にはジャージ魚の塩焼きと書かれている。
ジャージ魚がどんな魚か知らないが塩焼きか。
最近食べていないしうまそうだ。
「それでお願いします」
「はいよ、じゃあ適当な席に座っててください」
そう促され、僕たちは店の隅っこにある席に着いた。




