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召喚術の支配者  作者: 人間失格
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取り調べ

宴会が終わり、食堂には酔いつぶれた者たちだけが残った。

僕も大部酒を飲まされ、めまいがする。

多少相本がおぼつかないが部屋まで帰り、トイレの中を確認すると縛られた全裸の男たちが詰め込まれていた。

たぶん十人くらいだろうけれど、むさくるしいので見なかったことにした。


それからデコイ達にねぎらいの言葉を伝え、トイレが埋まったら適当な場所に隠しておいてと伝えて扉を召喚、僕の部屋で美鶴の隣で眠りについた。


翌朝は珍しく美鶴に起こされて目を覚ました。

美鶴は朝弱いので僕が起こすことが多いのだが、昨夜の酒が効いたのだろう。

二日酔いにはならなかったが父がそうしていたように台所で水を飲む。

ついでに冷蔵庫に入っていた栄養ドリンクも飲んで目を覚ませた。


「今日は忙しくなるよ」


「そうなの? 」


「うん、昨日の後片付けがあるからね」


後片付け、とは押し入り強盗の後始末の事だ。

1組3人前後で5セットはいたと思う。

それだけの人間が今トイレに全裸で押し込められているというのは、少し考えたくない光景だ。

だがいつまでもそうもいっていられない、ロビーに降りて、琴の顛末を伝えて部屋に来てもらう。

そしてデコイ達に頼んで強盗達を床に並べてもらう。

改めて数えると22人もいた。


最初は美鶴も従業員も、デコイ達に驚いていたが僕の魔法だと伝えると従業員は納得していた。

美鶴は顔を赤らめていたが何を想像したのかは聞かないでおく。

それから従業員には騎士団を呼んでもらい、あらましを伝えた。

強盗達は精神的に衰弱していたがこのまま騎士団の詰所へ連行することとなり僕も後で顔を出すように言われた。


「全裸で市中引き回し」


美鶴がぼそりとつぶやいたが、これは既に刑罰に値するだろう。

そしてこれから更に刑罰を受けると考えると……同情の余地はないがかわいそうに思えてくる。


「それで、春樹はあのデコイを使てナニをしたの」


従業員と騎士団のいる前で美鶴にそういわれたので僕も刑罰を受けた気分だった。

もっとも、美鶴は美鶴で恥ずかしかったらしく顔を真っ赤にしていた。

当然従業員からは冷やかされた。


「それにしても一日で22人の逮捕ですか……」


騎士団の詰所では僕も事情聴取を受けた。

僕のせいで詰所は今大慌てらしい。

今回僕が捕まえた強盗は騎士団が一週間かけて捕まえる犯罪者の総数より多かったらしい。

それだけの人数が一度に来たため書類が山のように増え、さらに牢屋の数も足りない為あのまま一つの牢屋に詰め込んでいるらしい。


「勉学のためにどのように捕まえたかお聞きしても? 」


僕の事情聴取を行っている騎士が尋ねてくるが多くの事は語れない。

僕の魔法で罠を張りました、内容は企業秘密ですとだけ伝えておいた。


「商人の鑑ですな、情報はタダでは渡さないと」


僕が企業秘密という言葉をつかった瞬間背後からそういわれた。

振り返ると豪華な鎧を着た騎士が立っている。

恐らく騎士団の偉い人なのだろう。


「申し遅れました、わたしはアルフォード・デイドリック・アルフォンス。

この騎士団の団長を務めています」


「商人見習いのハルキと申します」


「存じ上げております、昨晩は娘がたいそう世話になったようで」


その言葉で昨晩の事を思い出す。

宴会の時女性はあまりいなかった。

そしてその女性陣は僕に近づこうとしなかったから彼女たちは違うだろう。

では、包丁と人形を買ったあの貴族の女性か。


「こちらこそ、ご息女様はいろいろ買ってくださいましたから」


「ふむ」


騎士団長ことアルフォンスは顎に手を当て何度か頷いて僕の事情聴取を行っていた騎士を見た。

先ほどまでは僕の向かいで座っていた彼も今は立っている。


「それで、このたびはどのようなご用件でしょうか」


「いやなに、娘が話していた面白い商人とやらが大量の強盗を騎士団に連れてきたと聞きましてな。

一目有っておこうと思った次第ですよ」


はっはっはとアルフォンス騎士団長は笑っているが、その目はこちらを睨み付けている。

そこまで疎まれるようなことをしたのだろうか。


「そうですか、それで感想は」


「悪党ではないが善人でもない、特筆することのない平凡な一般人のそれと変わらない。

けれど恐ろしい力を秘めている。

敵に回したくはないが味方にするのも怖い、しいて言うなら首輪のついた化け物といったところでしょうか」


この場に美鶴がいなくてよかったと思う。

僕が彼女に危害を加えられるのを嫌がるように、美鶴は僕が馬鹿にされるのを極端に嫌がる。

以前セレナ王国の使者に切りかかったのもそれが理由だ。

今回は切りかからなくとも掴みかかるくらいはしていただろう。

僕の首輪の手綱を握っている人はそれほどに喧嘩っ早い。


「おい、事情は何処まで聞けた」


「ほとんど聞き終えました! 」


騎士は声を腹から出しているのか、とても響いて耳に障るが本人にとってはそれどころではないのだろう。

よく見ると脂汗を流している。


「どれ……ふむ、これだけまとめられていれば十分だ。

君は他の部署の手伝いに行きなさい。

それとハルキ殿、最近はこの辺りも物騒なようだ。

今日はもう帰ってくださって構いませんので可愛い奥さんを安心させてあげてください。

また何かの話を伺うかもしれませんがね」


アルフォンス騎士団長はそういうと部屋から出ていってしまった。

どうしようか、と迷ってから部屋から出て、騎士団長の言うとおり美鶴を安心させてあげようと宿への帰路を急いだ。

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