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召喚術の支配者  作者: 人間失格
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競売会を終えて

競売会が終わり、部屋に戻る途中。

食堂で競り落とした酒を飲むものが現れた。

最初に飲み始めたのは武具屋の店員だが、そこからはどんちゃん騒ぎに発展。

僕や美鶴は巻き込まれる前に退散したが、宿の従業員も梅酒で酒盛りを始めたため階下は相当盛り上がっているだろう。


「春樹、私が寝ている間に商売してたの? 」


「いや、普通に店を見て回ってただけなんだけど世間話に花が咲いたらこうなってたんだよね」


事の顛末を話したが、美鶴はいまいち状況をのみこめていないのだろう。

僕も僕とてすべて売り切れるほどにぎわうとは思っていなかった。


「じゃあ今日は売り上げを数えて寝ちゃおうか」


「あ、金額は全部メモしてあるよ」


そういいながら美鶴は一枚の紙を差し出してきた。

いつもポケットに入れているメモの切れ端のようだ。

これは素直にありがたい。


「ありがとう、さすが僕の奥さん」


「旦那様を支えるのがいい妻というものよ」


そういって美鶴が胸を張る、彼女は気づいていないようだから何も言わないが、会談の所で武具屋の店員や宿の従業員がこちらを除きながらにやにやと笑っている。

そして僕が気付いていると分かると、親指を立ててゆっくり階下に戻っていった。

恐らく酒の肴にされるのだろう。

けれど悪い気はしない、地球にいたころは両親に酒の肴にされていたが、今ではそれも懐かしい。

すこし、両親に会いたくなるくらいには。


「春樹? 」


「なんでもない、さぁ早く数えて寝てしまおう」


美鶴の手を取り部屋に入る。

がらんとして部屋でお金の入った袋の中身を空け、金貨銀貨銅貨、それと石貨の四つに分ける。

石かは1シン単位で使われるようで今回はあまり多くない。


「金貨が184枚、銀貨96枚、銅貨540枚、石貨28枚。

携帯電話が動いてよかったよ」


圏外だがそれ以外の機能は生きているため、今回のような面倒な計算をする際には助かる。

今日のもうけは19万9千28シン。

まだまだこちらの貨幣価値は分からないがこれはかなりの儲けなのではないだろうか。


「うん、値段ぴったりだよ」


「それは良かった、じゃあ明日に備えて早く寝よう……いや待った」


ふとあることを思い布団にもぐりこもうとする美鶴を止める。

そして扉を召喚し、中に入ってもらう。


「すまない、今日はそっちで寝てくれ。

僕は下でのみ介している人たちの相手をしてくるから。

アフターサービスってやつだ」


日付も変わったのでコピーを使って酒類を増やす。

ついでにつまみになる物も一緒にコピーして更に盛り付けた。


「美鶴も来る? 」


一応尋ねるが、美鶴は先ほどまでの緊張と合わせていろいろ疲れが出ているのだろう。

首を横に振って僕の部屋のベッドにもぐりこんで寝息を立て始めた。


「じゃあ行ってきます」


美鶴の頭を軽くなでてから部屋を出た。


「【デコイ】【キャプチャー】【ハンター】」


ミツルにばれないようにカバンからカードを取り出して、数体のモンスターを召喚する。

デコイ、名前の通り囮に使うモンスターで耐久力が高い。

また人や物に化けることができるモンスターだ。

今回は美鶴に化けてもらい、部屋で寝たふりをしてもらう。

次にキャプチャー、直訳すれば捕獲する者といったところだろうか。

手に鞭とロープと手錠を持った姿で、生物をとらえることが得意なようだ。

ハンターはキャプチャーの亜種らしく、こちらは罠を張って生物をとらえるらしい。


「この部屋に悪意を持って入って来た者を捕まえろ」


僕の命令に三体は頷いて了解する。

デコイは別途にもぐりこみ、キャプチャーはベッドの下に身を隠し、ハンターは罠を仕掛けてから各部屋に用意されたトイレに身を隠した。


「さて、どんなネズミがかかることやら」


憂鬱な気持ちを隠す気もないが、酒とつまみを持って食堂に降りて行った。


「妻が疲れて眠ってしまったので混ぜてください」


僕の言葉に酒場で盛り上がっていた人たちはにやにやと僕を見る。

先ほどの、部屋の外でのやり取りを肴にしていたのだろう。


「代わりに、酒とつまみを持ってきました」


僕の言葉に食堂が歓声に包まれる。

すぐに従業員がカップを持ってきて僕に渡し、梅酒を注いでくれる。

未成年だが、今夜は仕方ないだろう。

日本風にいうならば郷に入っては郷に従えだ。


「兄ちゃんこの酒うめえな! 」


僕の肩に手を回し武具店の店員が話しかけてくる。

酒気を帯びたその息に顔をそらしそうになるのをこらえ、乾杯する。


「おかげで大成功ですよ」


僕からの感謝を伝えると、武具屋の店員は僕の背中をばしばしとたたき始めた。

その顔は笑顔だが、結構力が入っている。


「俺はなーんもしちゃいねえ。

お前が盛り上げたんだよ、ここにいる笑顔はお前が売ったんだ」


そういわれると照れくさい。

けれど悪い気はしない。


「そんなことより、お前の嫁についてちょいと詳しく聞かせてもらおうか」


それから僕に対する尋問が始まった。

地球でもちょくちょく行われていた光景だが、今回はもう少しめんどくさそうだ。

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