一仕事終えて
僕がさっき出した指示に従ってか、最初に召喚したパラディンとガーディアンは
武器を構える兵士達に剣を向けている。
後から召喚した者たちは僕を見つめながら指示を待っている。
……腹は決まっている。
「皆殺しだ、僕達に危害を加えようとする者は一切の容赦なく殺せ」
あの兵士たちを逃がして、僕たちの情報が割れれば晴れてお尋ね者だろう。
なにしろ使者を含む兵士数名の殺害、普通に考えておとがめなしとはいかないだろう。
「全員殺したらあの飛行船に詰め込んで、飛行船毎山に向かって投げておけ」
これは飛行船が墜落したように見せかけるためだ。
これで飛行船が墜落、中にいた兵士の半数はその衝撃で死亡、残りも野党や野生動物に殺されたと思うだろう。
あくまでも希望的観測だが、今はこれ以外に手が浮かばない
それに問題があるとしたらこの召喚した奴らがどれくらい強いか、という事だがそれは心配いらなかった。
ガーディアンとパラディンは背中合わせになり四方八方から切りかかってくる兵士に応戦している。
それは防戦一方のように見えるが、ガーディアンもパラディンも目立った損傷はなく、疲労も見られない。
しかし兵士たちはガーディアン達に集中すると後から召喚した者たちが、そちらに警戒するとガーディアンが鋭い一撃を浴びせてくるため気が抜けない状況が続いている。
今はまだいいが集中力が途切れるのは時間の問題だろう。
「くそっ、『フレア』」
先ほどまで腰を抜かしていた使者が大きく叫ぶと掌から炎が吐き出された。
それは火炎放射器のようにパラディンに襲い掛かったが、パラディンはその炎をものともせず近くの兵士を切り倒し続けた。
「なんでだっ、なんでっげぴっ」
そうしているうちにキメラが使者の喉笛をかみちぎる。
使者は目線だけで僕に助けを求めてきたが、程なくして瞳から光が消えた。
それから5分と立たずに兵士も全滅した。
ユニコーンは僕たちの側で待機させ、召喚獣達に金品を奪わせてから死体を飛行船に放り込ませる。
それからギガンテスとアトラスに飛行船を運ばせた。
飛行船自体が相当巨大だが、アトラスとギガンテスもかなりの巨体だ。
問題なく飛行船は山中に投げ捨てられた。
それから総出で地面を耕して踏み固めて戦闘の痕跡を消した。
「美鶴、どうする。
僕はこれで人殺しだ。
それでも一緒に来るかい」
美鶴を見つめて尋ねる、たぶん僕は美鶴に頼りたかっただけかもしれない。
けれど美鶴にはかなわないと実感した。
「春樹、突き放してほしいの?慰めてほしいの? 」
今、美鶴は怒っている。
なにに対してかは大体わかっている。
僕が勝手に行動したこと、そのせいで多数の人が死んだことについてだ。
ただ、別に美鶴は僕のせいで人が死んだことに関してはさほど怒っていない。
昔、美鶴と遊んでいたとき野犬に襲われ、その野犬を石で殴り殺してしまったことがある。
その時は親からは無茶をするなというお叱りと、よく美鶴を守ったという言葉、それと命の尊さについてと食物連鎖についての話を聞かされた。
美鶴の両親からはただただお礼を述べられた。
美鶴からは怒られた。
僕が怪我をしたことについてだ。
美鶴曰く僕が美鶴に傷ついてほしくないのと同じで美鶴も僕には傷ついてほしくないと言っていた。
今回も僕が勝手に行動して傷ついて、美鶴に心配をかけたことに怒っているのだろう。
「慰めてほしい、できるなら一緒にいてほしい」
そこはかとなく告白のようになってしまったが、これが僕の本心だった。
美鶴に見捨てられたら僕はまともに生きていける自信がない。
「じゃあまずはお説教からね」
美鶴はにっこりとほほ笑んで僕を抱きしめてくれた。
中学を卒業するまでは同じくらいの慎重だったが、今では僕のが頭一つ分高いため他から見たら僕が美鶴を抱きしめたいるようにしか見えないだろう。
けど、先ほどまで高鳴っていた心臓は今は落ち着きを取り戻していた。
やっぱり僕は美鶴がいないと生きていけないだろう。
「お説教は後で聞くから今は逃げよう。
これだけの騒動で人目につかないわけがないから」
そう言って抱き着いている美鶴には慣れてもらい、ユニコーンの背中にまたがる。
パラディン達はカードに戻し、辺りをぐるりと見渡してからユニコーン任せの適当な方向へ走らせた。




