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あるいていくさきで

アルファポリス主催

第七回絵本・児童書大賞に参加しました。

よろしくお願いします。

のどがかわいた

おなかがすいた

こんなになにもない日がつづくと

くじけるまえに、ぼくはしんでしまう

「すきでしぬわけじゃないけど、こんなのあんまりだ」

よろよろしつつ、ネコときょうもあるいている

水をのんだのは、いつだっけ

さいごにたべたのは、なんだったかな

ふらつくぼくとおなじで、ネコもようすがおかしい

「だいじょうぶか、ネコ」

今、あるいているところは、すこしさかになっているみち

みちのむこうになにがあるのか、先がみえない

それもぼくのこころを、もっともっとくるしくしている

ただ、そらはあおくて、風は気もちがいい

それだけは、イヤじゃない

「だいてやろうかな」

あしをとめて、ネコをだく

小さなこえで、ニャオンとないただけでグッタリしてしまう

さかのてっぺんまであとすこし

やっと先がみえるんだって、ほんのすこしホッとしたぼく

石じゃなく、ぼくのあしが、ぼくがあるくのをじゃました

「うわわっ」

さかのてっぺんから、ネコをだいたままころがる

あたまや体に、石がこすれてとてもいたい

でも、ネコをはなすことだけはしないぞと、つよくだく

いたいのをがまんして、やっと立てるようになったとき

ぼくのうでからネコがおりていく

さかの下にひろがるけしきは、みどりがいっぱいで

のどはカラカラ、からだはヒリヒリなまま

ぼくは、ネコのうしろをあるきだした

ぼくのこしくらいまでの草の中、ネコのこえとすずの音だけでついていく

「……あ」

水の音がして、もうフラフラなのに音へとはしっていく

かわをみつけて、ネコとぼく

いっしょに、水をいつまでものむ

かわいた体に、水がはいっていく

それはまるで、体にながれている血のように

体のはしっこまで、水がぼくをみたしていく

たくさんのんで、ぼくはねころがってそらをみあげた

「ぼく、生きてるんだ」

水をのんだうれしさとおいしさ

体にのこっている、たくさんのいたみ

生きているから、かんじられることばかりだ

「ぼく、生きてる」

くりかえしながら、いろんなことをかんがえた

どうしてあるくのかわからないまま、ここまでやってきた

なにもひろえないときもあって

ここにくるまで、ネコにしかあえなくて

ぼくがだれなのかも、わからない

おおきくいきをすうと、くうきもおいしいとおもった

「もう、いいや」

あるいていって、みちがどこにつづくのかみえなくても

それでもあるいていたら、ここにこられた

「どこにいくのかなんて、わからなくても、ぼくは生きているんだから」

そらへはなすように、そうしゃべると、ネコがぼくのほほをなめた

「なんだよ、ネコ。元気になったな、おまえも“オレ”も」

ネコにむかって、そうはなしかけたことばに、ぼくはおどろいた

(なんで、じぶんのことを“オレ”っていったのかな)

ドキドキしだす、むね

ふあんになって、ネコに手をのばした

ネコはネコじゃなくなって、ぼくの手の中におちた

ぶあつい本のようなものへと、すがたをかえたんだ

「ネコ?」

よんでも、ネコはもういない

手の中のそれには、カギあながある

ぼくはなにもかんがえないで、ポケットのカギをそのあなにさして回す

かんたんにひらいたその本は、にっきのようなもの

さいしょのページをひらいて、むねが大きくドクンといった

あかちゃんの大きさのてがた

「生まれてくれて、ありがとう……ママより」

てがたのよこに、小さなもじでそうかいてある

もういちまいめくると、しゃしんがおちる

じぶんがだれかしらないのに、すぐにわかったんだ

「これは、ぼくだ」

にっきをだきしめて、ぼくはあふれてくるなみだをそのままこぼす

生まれてくれてありがとう、と、ぼくをおもってくれただれかがいる

「ぼくは、生まれてよかったんだ。そして今、生きてるんだ」

さっきかんじたことをおもいだして、もっともっとにっきをだく

「ぼく、生きてていいんだ」

ネコはいなくなってしまって、ぼくはひとりになった

けど、生きてていい

みちのむこうがみえなくても、あるいていってもいいんだ

にっきをリュックにしまって、また草の中をあるいていく

大きなみちに出て、さいしょにまた石があった

それをリュックに入れる

どんなものと出会っても、ぼくはぼくのままでいい

いつか“オレ”をおもいだせるときがきても、きっとぼくはかわらなくてもいい

「生きてるだけで、じゅうぶんだ」

こんなにおおきなたからものをぼくはだれかからもらえた

それは、生きてるからわかること

「ぼくは、生きてる」

あるいていくさきで、ぼくはずっとぼくらしく生きていく

それだけ

そして、ぼくのたびはどこまでもつづく


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