あるいていくのをやめても
アルファポリス主催
第七回絵本・児童書大賞に参加しました。
よろしくお願いします。
「きょうも、いい空だ」
ぼくのすきな、あおい空
それだけで、きぶんがよくなってしまう
すきなものがあること
それは、じぶんをしあわせにしてくれるものなんだと、ぼくはしった
それが、どんなにちいさなものでも……
たびをつづけ、ぼくはしばらくあるきつづけた
そのとちゅうで、ぼくはあるくのをやめてしまった
どれくらいあるいたのか、かぞえるのをやめたとき
あるばしょに、たどりついた
小さなまち
ネコのほかに、だれかにあえずにあるいてきた
「人がいる」
それだけで、むねがドキドキした
ゆっくりとじかんがながれているような、のどかなまち
さいしょにあったのは、おじいさん
「どこからきた」
そっけなくはなしかけてくる
「ずっとむこう」
とだけかえす
だって、ほかにどういえばいいのかわからないんだから
「そうか、むこうか」
おじいさんは、ぼくがあるいてきたみちを、ぼんやりとながめてた
ひさしぶりの、人のこえ
もうすこしいけば、もっと人がいそうだ
「それじゃあ」
と、ぼくはおじいさんにわかれをつげる
「まて」
そんなぼくを、ひきとめるおじいさん
ふりむいたまま立ちどまったぼく
すこしすると、おじいさんがパンとぎゅうにゅうをくれる
「くれるんですか?」
おもわずたしかめたぼくに、だまってそれをおしつけてくる
どうしよう
すごくうれしい
ぼくはそれをギュッとむねにだいて、あたまをさげる
「ありがとう」
ちゃんといえた、かんしゃのきもち
そのことばをいったしゅんかん、むねがあたたかくなった
「いいから、ちゃんとたべなさい」
そういいながらいえの中にもどっていったおじいさんの耳が、赤くなっていた
ぼくの気もちがつたわったのかな
いったほうも、いわれたほうも、しあわせな気もちになれることば
「ありがとう」
もういちどいってから、ぼくはまえへすすんでいく
ちいさなまちだけど、人はおおい
はじめてあうぼくに、「こんにちは」とこえをかけてくれる
「こんにちは」と、ぼくもかえす
まちのこうえんの木の下
ぼくは、おじいさんからもらったパンとぎゅうにゅうを口にする
かむと、ふわっとこむぎこのにおいがする
ほんのりあまいぎゅうにゅうが、カラカラだったのどをしあわせにしていく
やっとたどりついたまちは、なんてことないしあわせをおしえてくれる
あいさつ
たべること
だれかがいることのしあわせ
それから、すこしだけ、足をとめることも
まちをみつけても、そのままとおりすぎたら何もひろえなかった
きょうのぼくは、しあわせをひろった気がした
リュックの中から、にっきをとりだす
おとといひろった、よつばのクローバー
これも、ちいさなしあわせだとぼくはおもった
それっぽっちのことがしあわせなのかと、だれかにいわれてしまうかもしれない
けど、たびをしてきて、おもったんだ
「しあわせは、人それぞれでいいんだ。ぼくは、これっぽっちでもしあわせだ」
ぼんやりしていたぼくに、ひとりの女の子がちかづいてくる
「おにいちゃん、それ、どうするの?」
ゆびさしているのは、リュックいっぱいの石やはっぱに木のみ
「どうもしないさ。なにかにつかえるかなってひろっちゃったんだ」
そうかえしたぼくに、女の子がリュックの中をゆびさしたまま
「じゃあ、それをつかって、いっしょになにかつくらない?」
って、いいだした
「なにか?」
ふしぎそうにききかえすぼくに、リュックの中からこえだとはっぱと木のみをとりだし
「こんなのは?」
それらをまぁるいかたちにして、ならべてみせた
なにかのかざりのようにもみえる
「それじゃ、こういうふうにしてみたらどうかな」
女の子がならべたものに、ぼくはリュックの中からはねをとりだしてのせた
「わぁ! すてき」
とてもうれしそうに、てをたたく女の子
しばらくして、女の子がもってきたどうぐで、ならべたものをつかってかざりをつくった
「これ、あげるよ」
できあがったものをてわたすと、はねるようにあるきながらかえっていった
ひろってきたものが、またやくにたった
「こんなのはどうだろう」
木の下で、女の子がいなくなってからもリュックの中のものでかざりをつくるぼく
こどもみたいなことなんだけど、とてもたのしい
たかが石が
なんてことないえだが、きのみが
ひとつでは何にもならなかったのに、あつめただけでちがうものになった
「ブローチみたいだ」
まっかな木のみをつかってできたそれを、ぼくはまんぞくげにみていた
じかんをわすれて、ずーーーーっと作りつづけていく
「もう、ないや」
きづけば、リュックの中には、にっきだけ
たのしかったじかんは、もうおわり
「きょうはこのままねてしまおう」
まちのこうえんの木の下で、ぼくはゴロンとねころがる
ほしは、きょうもきれいだ
あしたもぼくのすきな空がみられますようにと、ねがいながらねむった
あさになり、ぼくは目を丸くしておきた
ぼくがつくったものを、みている人たちがいたからだ
「これはうりものかい」
くびをよこにふると、「もったいないね」とおばあさんはいう
「たびはいそぐのかい?」
つづけてそうきかれて、またくびをよこにふる
「たびは、たちどまってみるじかんもだいじだよ。すこし、このまちにいてみないかい」
どうしてかな
ぼくは、あるきつづけていくはずだったのに、こんどはくびをたてにふっていた
たちどまってみえるけしきもあるのかもしれない
なんてことを、ちょっとだけかんがえた
つくったものを手に、おばあさんのあとについていく
「ここをつかいなさい。そして、なにかをつくってみるといい」
「なにか?」
おもわずききかえす
「そう、なにか。なにができるのか、たのしみにしながらつくってみるといい」
これをつくっているとき、とてもたのしかった
またぼくはくびをたてにふる
きょうもぼくは、そらにむかって手をのばす
たかいたかい空
あたりまえだけど、とどかないななんていいながら、かんばんを出す
『なにかや』
おきゃくさんからなんてことないものをもらって、それをぼくがかたちにする
いみのないものを、いみのあるかたちに
なにかに、かえるしごとだ
つくったかわりに、パンやくだものをもらうだけ
それがぼくのしごと
「たまにはたちどまるのも、わるくない」
それもしあわせ
あるきつづけるだけじゃなく、たちどまってなにかをさがすこともある
にっきをひらいて、あさのてんきをかく
「きょうのはじまりも、はれ」
ぼくのすきなてんきをかいて、にっきをとじる
ドアのプレートをひっくりかえすと
「おにいちゃーん」
ほら
きょうのおきゃくさん、だいいちごうだ
「いらっしゃい」
ぼくはわらって、おむかえする
「なにかやへ、ようこそ」
女の子はうれしそうに、おみせにはいっていく
さて
きょうはなにをつくろうか
なにに、すがたをかえてあげようか
すがたをかえれば、この小石すら、だれかのたからものになるかもしれない
だからぼくは、なにかやをしていく
だれかのたからものをみつけるために
ぼくのたからものに、であうために
お付き合いいただきありがとうございました。
物も、人の命も、出会ったものに無駄も無意味もないと思います。
誰かの心に届く一文があることを祈りつつ、この作品を贈ります。




