あるいていかない
アルファポリス主催
第七回絵本・児童書大賞に参加しました。
よろしくお願いします。
よるが、どんどんふかくなって
まっくらなみちのむこうに
まっ白なネコの体が、ぼんやりみえるだけ
ときどきこっちをみると、目が光る
「どこまでいくんだよ」
きょうは、もう、あるきたい気もちじゃなかったのに
「まてよ、ネコ」
もんくをいいながら、それでもネコをおいかけるぼく
「あるけないってば」
ランプをつけてても、暗いといえば暗い
石が、ぼくがあるくのをじゃました
「いたっ」
ころんで、ランプがとんでいく
ガチャンと音がして、そのあと、まっくらになった
ネコも、もうみえない
ぼくはまた、ひとりになったんだ
なにもみえない、きこえない
かぜが、ぼくをくすぐるだけ
「またひとりになるなら、ネコと出会わなくてもよかったのに」
そう口にしたら、なみだがこぼれた
「どうしてぼくは、ひとりなんだ。おなかもすいたし、さむいし。なにをしたらいいのか、わからないままだ」
大きなこえをあげてなく
どうせだれもみてない、きいてない
ぼくに気づいてくれるものなんか、みつけられないんだ
ワアワアないて、みちを何回もたたく
くやしくて
さみしくて
……くるしくて
「もうあるかない。うごかない。だって、あるいていってもなにもないんだ」
あるいていかないことを、きめた
ないて、ないて、そのうちつかれて、みちにねころがった
ウトウトしていたぼくの耳に
「チリリリン」
と、小さな音がきこえた
ねぼけた目をこすって、音がするほうをみてだまっていた
まっ白いかたまりがやってきて、ぼくのまえに、なにかをおいた
「ニャアオン」
ひとつだけないて、またいなくなってしまう
月のあかりだけで、おいていったものをさがす
キラリとなにかが光った
かたいもの
グッとつかんで、手のひらをひらいてみた
くらくてよくみえないけれど、なんとなくわかった
「これ、なんのカギだろう」
ネコがおいていったのは、ゴツゴツしたきんぞくのカギ
ぼくはそれを手にしたまま、しばらくかんがえた
かんがえて
かんがえて
うなって
それで、ぼくはみちにカギをおいた
「もう、あるかないってきめたんだ」
なんのカギかをさがしに、またあるきだせばいいのかもしれない
でもぼくは、そうきめたんだ
だって
「こわいじゃないか。またあるき出して、なにもみつけられなかったら」
ネコになにかあるのかって、きっとどこかでおもってたんだってわかった
だから、かなしくなって、さみしくなって、あるくのをやめたんだ
そうしてぼくは、まっくらなみちの上で、目をとじた
すこしさむかったけど、すっかりなれたさむさだからへいき
「あるかないことにも、いつかきっとなれる」
その気もちがつよがりだってわかっていても、ぼくはいわずにはいられない
「もう、あるかない」
いいきかせるように、もういっかいつぶやく
どんなことがあっても、よるがくるのとおなじで
なにがあっても、あさはやってくる
まぶしさと、たいようのあたたかさに目をさました
たいようでキラリと光るカギ
ぼくはカギを手のひらにのせて、なんとなくかおをあげた
「……ネコ」
ずっと、ずーーっとみちのむこう
ネコが、ぼくをみてた
ぼくと、ネコ
じっとみつめあったまま、しばらくそうしてた
たいようがたかくなって、すこしあつくなってきた
ぼくは大きくいきをはいてから、カギをグッとにぎって立ち上がる
このカギで、ドアがひらくのか、たからものが手に入るのか
なにひとつわかってない
だけど、ひとつ気になることができたから、すすんでみよう
ゆっくりとあるき出すぼく
ネコはずっとおなじところで、ぼくをみている
やがてネコのよこをとおりすぎると、ネコがいっしょにあるきだした
あまえてくるわけでも、いなくなるわけでもなくて
すこしはなれたところを、あるいてついてくる
どうしていいのかわからなかったけど、ぼくはネコにいうんだ
「あるいてみるよ、もうちょっとだけ」
ネコはきいてるのかきいてないのか、なきもしない
でも、ぼくからはなれないで、あるいてついてくる
ぼくはそれだけのことなのに、すごくうれしくなった
「さいしょに、みずをみつけられるといいな」
そういいながら、きょうもぼくはあるきだす




