↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/77

第73話 形を変えるということ

夜。


拠点。


机の上に、簡単な図が描かれている。


流すもの

残るもの


そして、その間に――


空白。


リョウがその空白を指で叩く。


「ここだ」


ユナが覗き込む。


「ここ?」


リョウが頷く。


「流せないやつ」


「でも、そのまま抱えると重い」


サクヤが言う。


「処理が必要だな」


リョウが笑う。


「そう」


“変換”


ユナが小さく言う。


「どうやって……?」


リョウは少し考えて、


ぽつりと。


「言葉かな」


サクヤが眉を動かす。


「言語化か」


リョウが頷く。


「形があるなら、形を変えられる」


翌日。


実験が始まる。


例の女性。


“残るもの”を持っていた人。


リョウが向き合う。


「ちょっとやってみるぞ」


女性は少し不安そうに頷く。


リョウが言う。


「それ、何だ?」


女性は戸惑う。


「え……」


言葉にするのは、難しい。


でも、少しずつ。


「後悔……だと思う」


ユナが静かに聞く。


「どんな?」


女性の目が揺れる。


「……あの時、ちゃんと謝れなかった」


空気が変わる。


ただの“災気”じゃない。


物語を持った“感情”。


リョウが手をかざす。


ドクン。


だが今回は、流さない。


「そのまま出してみろ」


女性は震えながら、


少しずつ、それを外に出す。


重い。


濃い。


でも――


広げない。


リョウが言う。


「ユナ」


ユナが頷く。


「うん」


そっと触れる。


やさしく。


包むように。


ドクン……


変化が起きる。


さっきまで“刺さるよう”だったそれが、


少しずつ形を変える。


鋭さが、丸くなる。


重さが、沈む。


ユナが小さく言う。


「……やわらかくなってる」


サクヤが観察する。


「性質が変わっている」


リョウが言う。


「それ、もう一回言ってみろ」


女性が呟く。


「……ごめん、って言いたかった」


その瞬間。


ドクン。


“それ”が、さらに変わる。


後悔 → 想い


重さはある。


でも――


潰す重さじゃない。


支える重さ。


女性の目から涙がこぼれる。


「……軽い」


完全に消えてない。


でも、もう“負担”じゃない。


リョウが笑う。


「いけるな」


サクヤが頷く。


「ああ」


ユナも、ほっと息をつく。


「これなら……」


消さないで、持てる形に変える


その時。


遠くで。


また、あの揺れ。


ドクン……


リョウが顔を上げる。


「……あっちも来てるな」


神祀庁。


中心。


あの“完成された神”。


その内部。


今まで完全に均一だったものに、


わずかな“色”が混じる。


後悔。


怒り。


想い。


“意味を持ったもの”が、


分解されずに残り始めている。


男がそれを見る。


「……興味深い」


だが、その目は冷たい。


「ならば」


操作を開始する。


「意味を、消しましょう」


画面の数値が変わる。


中心の存在から、


“感情の構造”が削ぎ落とされていく。



意味の削除


それは――


最も効率的で、


最も残酷な処理。


リョウたちのやり方は


意味を残す


神祀庁は


意味を消す


ユナがふと呟く。


「……どっちが、いいんだろ」


リョウは少し考えて、


答える。


「選べる方だろ」


サクヤも言う。


「ああ」


戦いは次へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。