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第7話 中枢の欠片

森が震えていた。


巨大な影が立ち上がるたび、地面が揺れる。


高さ二十メートル。


それは神だった。


だが、祠の神とはまるで違う。


身体は黒い嵐のような災気でできている。


顔の輪郭すら曖昧で、中央に闇のような目が二つ浮かんでいるだけだった。


リョウの声が震える。


「……これ」


「神っていうより」


「災気の塊だ」


サクヤは無言で見上げている。


その横顔はいつも通り冷静だった。


神祀庁の男が後ろで言った。


「中枢の欠片」


「正式名称はまだないがな」


リョウが振り返る。


「そんなもの作ったのか?」


男は軽く肩をすくめる。


「研究途中だ」


「だが興味深いだろう?」


巨大な神が一歩踏み出す。


ズゥン……


木々が折れる。


地面が沈む。


リョウが小声で言う。


「サクヤ」


「さすがにあれは」


サクヤは短く答えた。


「神だろ」


「うん」


「なら」


刀を構える。


「斬れる」


リョウが頭を抱えた。


「理屈が雑すぎる」


その瞬間。


巨大な神が腕を振り上げた。


災気が渦巻く。


ドォォォン!!


地面が吹き飛ぶ。


リョウが叫ぶ。


「来た!!」


だが。


そこにサクヤはいない。


彼女はすでに跳んでいた。


人間とは思えない高さ。


倒れた木の幹を蹴り、さらに上へ。


神の肩まで一気に飛び上がる。


神祀庁の男が目を細める。


「ほう」


サクヤは空中で刀を振りかぶった。


「――斬る」


一閃。


ザン!!


巨大な身体が裂ける。


黒い災気が爆発する。


神が低く唸った。


だが。


崩れない。


むしろ傷がすぐに塞がっていく。


リョウが叫ぶ。


「再生してる!」


サクヤは着地した。


表情が少しだけ険しい。


「……硬い」


神祀庁の男が後ろで言う。


「当然だ」


「それは普通の神ではない」


「世界中の災気を模倣している」


リョウが怒鳴る。


「そんなもの暴れたらどうなるかわかってるのか!?」


男は冷静だった。


「だから実験している」


その時。


巨大な神がリョウを見た。


闇の目。


ゆっくり腕が動く。


リョウの背筋が凍る。


「え」


サクヤが叫ぶ。


「下がれ!」


だが。


神の腕は速かった。


ドォン!!


地面が砕ける。


リョウは転がって避けた。


「うわっ!」


サクヤが神へ突っ込む。


ザン!!


脚を斬る。


だが神は止まらない。


再び腕を振るう。


森が壊れていく。


リョウは地面に手をついたまま言った。


「……変だ」


サクヤが一瞬だけ振り向く。


「何が」


リョウは神を見ていた。


その目はさっきと違う。


何かを観察している。


「これ」


「本当に神じゃない」


サクヤが言う。


「知ってる」


「違う」


リョウは首を振る。


「もっと変なんだ」


巨大な神を指差す。


「動いてない部分がある」


サクヤの目が細くなる。


「どこだ」


リョウは胸を指差した。


「中心」


サクヤは次の瞬間、跳んだ。


神の腕を避ける。


肩を蹴る。


そして胸へ。


巨大な災気の嵐の中心。


そこに。


小さな光があった。


サクヤの目が鋭くなる。


「……核」


刀を振り上げる。


その瞬間。


神が咆哮した。


ドォォォォ!!


災気の嵐が爆発する。


サクヤが弾き飛ばされた。


リョウが叫ぶ。


「サクヤ!」


サクヤは地面を転がりながら立ち上がる。


口の端から血が出ていた。


だが。


笑っていた。


「なるほど」


刀を握り直す。


「弱点はそこか」


神祀庁の男が静かに拍手した。


「素晴らしい」


リョウが怒鳴る。


「感心してる場合か!」


男は答えた。


「いや」


「十分だ」


そして懐からもう一枚の札を出す。


リョウの顔が凍る。


「まさか」


男は地面に貼った。


札が光る。


森の奥。


災気の柱がさらに膨れ上がる。


サクヤが呟く。


「……まだあるのか」


男は言った。


「もちろんだ」


リョウが叫ぶ。


「やめろ!」


だが遅かった。


地面が裂ける。


災気が噴き上がる。


そして。


もう一つの影が立ち上がった。


リョウの声が震える。


「……二体目」


サクヤが空を見上げる。


巨大な神。


その向こうにもう一体。


そして。


森の奥の柱はまだ脈打っている。


サクヤはため息をついた。


「面倒だな」


リョウが叫ぶ。


「今さら!?」


サクヤは刀を構えた。


「作戦」


リョウが聞く。


「あるの?」


サクヤは言った。


「一体ずつ斬る」


リョウは叫んだ。


「だから雑なんだって!!」


その瞬間。


二体の巨大な神が同時に動いた。

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