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第67話 行き場のないものへ


夜。


あの“音”がした場所へ、リョウたちは走る――


(ここから「排出」と「循環」の答えに踏み込む)



お願いします


第67話 行き場のないものへ

夜の外れ。


音のした場所は――古い墓地だった。


風が、止まっている。


リョウが足を止める。


「……ここか」


サクヤが頷く。


「ああ」


ユナは少し後ろで、小さく息を呑む。


「なんか……重い」


空気が違う。


濃い。


でも、今までの“溜まり”とも違う。


リョウが低く言う。


「……流れてないな」


その一言。


今回の異常の本質。


墓石の間を進む。


奥。


ひときわ古い区画。


そこに――


“歪み”がある。


空間が、わずかに沈んでいるような感覚。


サクヤが言う。


「溜まり場だ」


リョウが首を振る。


「いや」


目を細める。


「……溜まり“かけ”てる」


完全じゃない。


まだ、途中。


ユナが震える声で言う。


「これ……どうなるの?」


リョウは答えない。


代わりに、手をかざす。


ドクン。


干渉。


流れを読む。


そして――


顔が歪む。


「……最悪だ」


サクヤが聞く。


「何が」


リョウが言う。


「これ、誰かが“流してる”」


ユナが目を見開く。


「え……」


サクヤの目が細くなる。


「神祀庁か」


リョウは首を振る。


「違う」


一拍。


「……真似だ」


沈黙。


つまり――


誰かが考えた。


“人に流すのがダメなら、死者に”


その結果がこれ。


ユナが小さく言う。


「さっきの話……」


リョウが頷く。


「実践されたな」


苦い顔。


だが、責めない。


発想自体は自然だ。


問題は――


その先を考えてないこと。


その時。


歪みが、脈打つ。


ドクン。


地面がわずかに揺れる。


ユナが声を上げる。


「っ!」


サクヤが前に出る。


「来る」


リョウも構える。


「形になるぞ……!」


次の瞬間。


ズ……ッ


空気が、裂ける。


“何か”が立ち上がる。


人の形。


だが、輪郭が曖昧。


顔も、はっきりしない。


ただ――


重い。


圧倒的な“圧”。


ユナが息を詰まらせる。


「これ……」


リョウが低く言う。


「……未完成の神だ」


溜まりきる前。


だが、形を持ち始めている。


サクヤが刀を抜く。


「斬るか」


リョウが即座に止める。


「待て」


サクヤが見る。


リョウは言う。


「これ、斬ったら散る」


「でも」


「またどっかに溜まる」


サクヤが理解する。


「……根本じゃない」


リョウが頷く。


「そう」


その時。


“それ”が動く。


ゆらり、と。


リョウたちを見る。


いや――


“見る”というより、感じている。


そして。


低い、重なった声。


「……にが、す……」


ユナが震える。


「しゃべった……」


リョウの目が鋭くなる。


「違う」


「これは――」


一歩前に出る。


「“流れ”が言ってる」


溜められたもの。


押し付けられたもの。


行き場のないもの。


それが、形を持って――


「逃がしてくれ」


と言っている。


沈黙。


サクヤが言う。


「どうする」


リョウは、少し考える。


そして。


「試す」


ユナを見る。


「怖いか?」


ユナは震えながらも、頷く。


「……でも、やる」


リョウは笑う。


「いいね」


サクヤが構える。


「失敗したら、斬る」


リョウが頷く。


「任せる」


そして。


“それ”に向かって手を伸ばす。


「……聞こえてるなら」


ドクン。


干渉。


だが今回は――


押さえない。


流す。


「通せ」


一瞬。


何も起きない。


だが。


次の瞬間。


ドクン……


“それ”の中の流れが、動く。


閉じていたものが、開く。


リョウの体を通り――


周囲へ、薄く広がる。


ユナも、それを感じる。


「……きた」


自分の中にも、少し入る。


怖い。


でも。


抱えきれないほどじゃない。


周りの空気に、さらに広がる。


サクヤも、わずかに受ける。


だが、崩れない。


“流れ”が生まれる。


止まっていたものが――


動き出す。


“それ”の形が、揺らぐ。


薄くなる。


声が、消えていく。


「……あ……」


ユナが手を伸ばす。


だが、触れられない。


そのまま――


すうっと、消える。


残ったのは。


静かな空気。


さっきまでの重さが、嘘みたいに軽い。


リョウが大きく息を吐く。


「……いけるな」


サクヤが言う。


「ああ」


確信。


ユナが言う。


「いまの……」


リョウは答える。


「排出じゃねえ」


一拍。


「循環だ」


サクヤが続ける。


「溜めず、流し続ける」


ユナが小さく笑う。


「ちょっと、こわいけど……」


リョウも笑う。


「まあな」


でも。


「誰も壊れてない」


それが全て。


その様子を。


遠くから見ている影。


神祀庁の男。


「……なるほど」


静かに呟く。


「死者ではなく、“流れそのもの”を使うか」


目を細める。


「危険だが……美しい」


そして。


小さく笑う。


「だからこそ、制御したくなる」


その手には、新たな設計図。


“循環”を――


“管理する”ための。


リョウたちは、まだ知らない。


自分たちが見つけた答えが。


最も危うく。


そして最も奪われやすいものだと。


物語は次へ。


“循環”を巡る、本当の戦いへ。

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