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第47話 中枢の影


巨大な祠は、空に“刺さる”ように浮かんでいた。


近づくほどに、その異様さが分かる。


ただ大きいだけじゃない。


重い。


存在そのものが、空間を歪めている。


リョウが息を吐く。


「……圧、やばいな」


サクヤは歩みを止めない。


「中心だ」


祠の下。


すでに地面はひび割れ、抉れている。


まるで、そこにあるだけで世界が耐えきれていないように。


リョウが言う。


「中、どうなってる」


核を握る。


ドクン。


視界が変わる。


祠の内部。


流れ。


構造。


そして――


リョウの顔が凍る。


「……嘘だろ」


サクヤが聞く。


「何が見える」


リョウは言った。


「神が……重なってる」


沈黙。


祠の中。


一柱じゃない。


無数の神。


それが――


融合している。


サクヤが低く言う。


「……集約か」


リョウは首を振る。


「違う」


「押し込まれてる」


無理やり。


詰め込まれている。


その結果。


内部は、限界ギリギリ。


いつ爆発してもおかしくない。


リョウが呟く。


「……これが、“中枢”」


神祀庁の目的。


巨大中枢神。


その未完成体。


サクヤが刀に手をかける。


「壊す」


リョウが即座に言う。


「待て!!」


サクヤが止まる。


リョウは続ける。


「これ、普通に壊したら」


「全部、外に出る」


中に詰まっている災気。


神。


全部が一気に解放される。


この街どころじゃない。


周囲一帯が、消える。


サクヤは言う。


「ならどうする」


リョウは歯を食いしばる。


「……分解するしかない」


一つずつ。


中の神を切り離す。


その上で、処理。


だが――


「時間がかかる」


その間にも。


他の神堕ちは落ち続ける。


サクヤが言う。


「選べ」


また、その言葉。


リョウは目を閉じる。


一瞬だけ。


そして、開く。


「……やる」


サクヤが頷く。


「分かった」


二人は祠へ踏み込む。


入口。


扉は、すでに歪んでいる。


触れた瞬間。


ドクン。


祠の中へ引き込まれる。


白でも黒でもない空間。


歪んだ光。


その中に――


無数の影。


神。


それぞれが、形を保てずに重なっている。


呻き。


叫び。


言葉にならない声。


リョウの顔が歪む。


「……地獄かよ」


サクヤは静かに構える。


「順番にやる」


リョウが言う。


「核を見つける」


「一つずつ切り離す」


サクヤが頷く。


「斬る」


単純だ。


だが。


その難易度は、今までと桁が違う。


最初の一体。


近づく。


形が崩れた神。


半分、人。


半分、塊。


目だけがこちらを見る。


「……」


何かを言おうとしている。


だが。


声にならない。


リョウが呟く。


「……まだ、壊れてない」


サクヤが言う。


「関係ない」


振りかぶる。


その時。


神が、動いた。


遅い。


だが。


重い。


触れた瞬間、飲み込まれそうな圧。


リョウが叫ぶ。


「右に核!!」


サクヤが動く。


迷いなし。


ザン!!


神が、二つに分かれる。


だが。


今度は崩れない。


中から、別の神が露出する。


リョウの顔が青ざめる。


「……層になってる」


一つ斬っても、終わらない。


何層も、何層も。


サクヤが言う。


「面倒だな」


リョウが苦笑する。


「過去一でな」


だが。


やるしかない。


リョウは核を握る。


「次、奥!」


サクヤが斬る。


ザン!!


また一つ。


また一つ。


少しずつ。


確実に。


削っていく。


その時。


奥から、声が響いた。


『――非効率』


空気が変わる。


リョウが顔を上げる。


「……来たか」


サクヤも構える。


奥の中心。


そこに――


一つの“形”がある。


他と違う。


明確な輪郭。


人の形をした神。


だが。


その背後には、無数の影が繋がっている。


リョウが呟く。


「……中枢」


それが、口を開く。


『処理速度 不足』


『排除対象 認定』


サクヤが前に出る。


「話は終わりだな」


リョウが言う。


「いや、最初からな」


中枢神が手を上げる。


その瞬間。


周囲の神が、一斉に動く。


サクヤが低く言う。


「……まとめて来るか」


リョウが笑う。


「上等だ」


核が光る。


刀が構えられる。


中枢神が言う。


『統合処理 開始』


その言葉と同時に。


無数の神が、一つの意思で襲いかかる。


ここが中心。


ここを壊せば――


世界が変わる。


戦いは、最終局面へと加速する。

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