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第45話 同時多発神堕ち


空が、崩れていく。


祠が、割れる。


その一つ一つから――黒い光。


リョウは立ち尽くした。


「……多すぎる」


数の問題じゃない。


規模だ。


これはもう、街一つの話じゃない。


世界そのものが揺れている。


サクヤが言う。


「分散するぞ」


リョウが振り向く。


「は?」


サクヤは空を指す。


「全部は無理だ」


当たり前のことを、当たり前に言う。


「近いものから潰す」


リョウは歯を食いしばる。


「……またそれか」


だが。


それしかない。


その時。


一つの祠が、街のすぐ上で完全に崩壊した。


ドクン!!


黒い塊が、落ちる。


巨大。


さっきの“手”の比じゃない。


リョウが叫ぶ。


「来るぞ!!」


サクヤはすでに走っている。


「迎え撃つ」


リョウも続く。


だが。


空を見上げる。


他にも、いくつも落ちている。


遠くの街へ。


山へ。


海へ。


誰かが戦っているかもしれない。


誰もいないかもしれない。


リョウが呟く。


「……間に合わない」


サクヤが言う。


「だから選ぶ」


その言葉。


もう何度も聞いた。


だが、今回は重さが違う。


“世界規模”の選択。


リョウは拳を握る。


「……くそ」


目の前に集中するしかない。


落ちてくる神堕ち。


衝突まで、あと数秒。


サクヤが構える。


「でかいな」


リョウが言う。


「中身も濃い」


今までの比じゃない密度。


災気の塊。


しかも――


不安定。


「……暴発するぞ、これ」


地面に落ちた瞬間。


周囲一帯が消し飛ぶ。


サクヤが言う。


「空中でやる」


リョウが顔をしかめる。


「無茶言うな!」


だが。


もう決まっている。


サクヤは建物を駆け上がる。


跳ぶ準備。


リョウは舌打ちする。


「……やるしかねえか!」


核を握る。


ドクン!!


黒い塊を見る。


流れ。


中心。


だが――


複数ある。


一つじゃない。


「……核がバラけてる!」


サクヤが叫ぶ。


「まとめろ」


リョウは苦笑する。


「簡単に言うな!!」


だが。


やるしかない。


意識を集中する。


複数の流れ。


それを、一つに。


引き寄せる。


圧縮する。


黒い塊が歪む。


中で、何かが抵抗する。


「……暴れるな!」


ドクン!!


負荷が跳ね上がる。


リョウの膝が震える。


だが止めない。


「集まれ……!」


少しずつ。


中心が一つになる。


まだ不完全。


だが――


サクヤが跳んだ。


空中へ。


落ちてくる神堕ちへ向かって。


リョウが叫ぶ。


「まだだ!!」


サクヤは止まらない。


空中で、構える。


一瞬。


リョウと目が合う。


その目は、言っている。


任せた。


リョウは歯を食いしばる。


「……やるしかねえだろ!!」


ドクン!!!


核が、限界まで光る。


無理やり、まとめる。


流れを、押し込む。


一つに。


強引に。


その瞬間。


塊の中心が、固定される。


リョウが叫ぶ。


「今だぁぁ!!」


サクヤが振りかぶる。


空中。


重力も関係ない。


ただ一点へ。


「――斬る」


ザン!!


巨大な神堕ちが、真っ二つに裂ける。


だが――


終わらない。


中の災気が暴れ出す。


爆発する寸前。


リョウが叫ぶ。


「抑える!!」


両手で核を握る。


押さえ込む。


流れを固定する。


逃がさない。


「……ぐっ!!」


限界を超える。


視界が白くなる。


それでも。


止めない。


サクヤが地面に着地する。


振り返る。


「リョウ!」


リョウが叫ぶ。


「燃やせ!!」


サクヤは即座に理解する。


周囲の火。


まだ残っている炎。


それを蹴り上げる。


巻き込む。


黒い塊へ叩き込む。


ボォォォ!!


炎が、災気を焼く。


絶叫のような音。


やがて――


完全に、消える。


静寂。


リョウはその場に倒れた。


「……はぁ……」


サクヤが近づく。


「生きてるか」


リョウは笑う。


「……ギリギリな」


だが。


顔を上げる。


空を見る。


まだ、終わっていない。


無数の祠。


無数の神堕ち。


リョウが呟く。


「……これ、全部やるのか」


サクヤは答える。


「無理だな」


即答。


リョウは苦笑する。


「だよな……」


少し間。


そして。


サクヤは言う。


「だから」


刀を握る。


「できる分だけやる」


リョウは小さく頷く。


「……ああ」


それしかない。


その時。


核が、微かに光る。


ドクン。


『大規模災厄 認定』


『対応レベル 引き上げ』


『中枢権限 解放準備』


リョウの顔が曇る。


「……またか」


だが。


今は止めない。


止められない。


サクヤが歩き出す。


「次だ」


リョウも立ち上がる。


足は重い。


だが。


止まらない。


空から、神が落ち続ける。


世界は、確実に壊れ始めている。


そして二人は――


その中で、斬り続ける。

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