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第42話 不完全の刃


風が止まる。


三者の間に、わずかな静寂。


次の一瞬で、すべてが動く。


リョウが息を整える。


「……もう一回いくぞ」


サクヤは短く。


「ああ」


神は、無言。


だが、その視線は鋭い。


もう“同じ手”は通じない。


理解している。


だから――


先に動いたのは、神だった。


消える。


視界から。


リョウが叫ぶ。


「来る!!」


サクヤは動かない。


その場で、待つ。


“読む”のではなく。


“来る前提”で構える。


次の瞬間。


空間が歪む。


サクヤの右側。


そこに、神が現れる。


振る。


だが――


その瞬間。


サクヤは一歩踏み込んでいた。


避けるのではなく。


中へ入る。


神の一撃を、紙一重で外し。


懐へ。


神の目が、わずかに細くなる。


「……」


サクヤが振る。


ザン!!


だが。


神は体をずらす。


致命には届かない。


浅い。


神が反撃する。


距離ゼロ。


回避不能。


リョウが叫ぶ。


「サクヤ!!」


その瞬間。


ドクン!!


核が光る。


時間が、わずかに遅れる。


神の動きが“ほんの少し”ズレる。


サクヤの体が、滑るように動く。


直撃を避ける。


それでも。


衝撃は来る。


ドン!!


吹き飛ばされる。


だが。


致命ではない。


サクヤは地面を滑りながら、立ち上がる。


息を吐く。


「……今のは助かった」


リョウは息を荒げる。


「……ギリギリだ」


だが。


見えた。


“ズレ”は作れる。


完全じゃない。


だが、崩せる。


神が言う。


「学習しているな」


サクヤが答える。


「そっちもな」


神は頷く。


「当然だ」


次の瞬間。


さらに速くなる。


先ほどよりも、一段階。


リョウの目が追いつかない。


「……速っ!」


サクヤも反応が遅れる。


一撃。


かすめる。


血が飛ぶ。


だが止まらない。


サクヤは踏み込む。


「もう一回だ」


リョウが叫ぶ。


「分かってる!」


核を握る。


ドクン!!


負荷が増す。


視界が揺れる。


それでも。


見る。


流れ。


一点。


負荷の集中。


「……そこだ!」


サクヤが動く。


だが。


神も動く。


読まれている。


完全に。


サクヤの進路に、すでに攻撃が置かれている。


回避不能。


その瞬間。


リョウの中で、何かが“噛み合う”。


感覚が変わる。


“見る”だけじゃない。


“触れる”。


ドクン!!


世界が静かになる。


神の流れ。


その一部に、直接干渉する。


ほんの一瞬。


流れを“ねじる”。


神の攻撃が、わずかに逸れる。


サクヤの目が見開かれる。


「……!」


その隙。


サクヤは迷わない。


踏み込む。


振りかぶる。


「――斬る」


ザン!!


今度は、深い。


さっきよりも。


さらに奥へ。


神の胸を、大きく裂く。


空気が震える。


神の体が、初めて大きく揺れる。


リョウが叫ぶ。


「入った!!」


だが。


同時に。


リョウの膝が崩れる。


「……っ!」


負荷が大きすぎる。


さっきよりも、深く干渉した。


その代償。


サクヤが叫ぶ。


「リョウ!」


神が、ゆっくりと後退する。


胸を押さえる。


血が流れる。


今度は。


再生が、遅い。


「……異常」


その声。


わずかに揺れる。


完全なはずの存在に。


確かな“歪み”。


サクヤが構える。


「もう一撃だ」


リョウは息を荒げる。


「……いける」


だが。


その時。


神の様子が変わる。


空気が、さらに重くなる。


圧が増す。


神の目が、わずかに変わる。


「……調整」


次の瞬間。


災気が、爆発的に増える。


ドクン!!


地面が割れる。


空気が歪む。


リョウが顔を上げる。


「……なんだよ、それ」


神は言う。


「制限を解除する」


サクヤの目が鋭くなる。


「……まだ上があるのか」


神は一歩踏み出す。


その一歩で。


空気が悲鳴を上げる。


完全だった存在が。


さらにその上へ。


リョウが呟く。


「……マジかよ」


サクヤは、逆に笑った。


「いい」


刀を握る手に力が入る。


「壊しがいがある」


リョウも笑う。


苦しいのに。


それでも。


「……やってやるよ」


神は静かに言う。


「排除する」


第二段階。


戦いは、さらに激化する。


そしてリョウは――


確実に、“神の領域”へ踏み込み始めていた。

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