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第40話 祠の外の神

空は静かだった。


さっきまでの歪みも、黒もない。


だが――


リョウは確信していた。


「……来る」


サクヤも同じだ。


「気配が違う」


“手”とは違う。


もっと重くて、深い。


それでいて――


澄んでいる。


矛盾した感覚。


その時。


街の中心にある、小さな祠。


そこから、光が漏れた。


リョウが振り向く。


「あれ……」


サクヤが言う。


「祠だな」


次の瞬間。


ドクン。


空気が震えた。


祠の扉が、ひとりでに開く。


ギィ……


中は暗いはずなのに。


光が溢れている。


人々がざわめく。


「なんだ……?」


「神様……?」


リョウの喉が鳴る。


「……出てくるのか」


サクヤが刀に手をかける。


「構えろ」


祠の中から。


“それ”は、ゆっくりと歩いて出てきた。


人の形。


白い衣。


長い髪。


顔は――穏やかだった。


リョウの目が見開かれる。


「……神?」


感じる。


災気の塊。


だが。


濁っていない。


“澄んだ災気”。


存在そのものが、圧倒的。


神は、周囲を見渡した。


静かに。


優しく。


そして――


口を開いた。


「……外だ」


その声。


人と変わらない。


だが。


重い。


街の空気が、押し潰されるように沈む。


神は一歩、前に出る。


その瞬間。


地面が、ひび割れた。


ドクン。


リョウが息を呑む。


「……存在だけで、これか」


サクヤが言う。


「危険だな」


神はリョウを見る。


視線が合う。


一瞬で、見透かされるような感覚。


「……お前」


静かに言う。


「知っている」


リョウの心臓が跳ねる。


「……何を」


神は近づいてくる。


ゆっくりと。


逃げ場はない。


サクヤが前に出る。


「止まれ」


神は足を止めた。


そして。


少しだけ首を傾げる。


「……なぜ、外にいる」


リョウが言葉に詰まる。


サクヤが代わりに言う。


「質問しているのはこっちだ」


神はサクヤを見る。


その視線。


一瞬で、測られる。


「……斬る者か」


サクヤは答えない。


ただ、構える。


神は小さく頷いた。


「理解した」


そして。


言った。


「ならば、排除する」


空気が凍る。


リョウが叫ぶ。


「待て!!」


だが。


神はもう動いていた。


一歩。


それだけで。


距離が消える。


サクヤの目前に現れる。


リョウの目が追いつかない。


サクヤが反応する。


ギィン!!


刀と“何か”がぶつかる。


衝撃。


地面が砕ける。


サクヤが押し戻される。


数メートル滑る。


リョウが叫ぶ。


「速すぎる……!」


神は何も持っていない。


ただの手。


それだけで、刀を受け止めている。


サクヤが低く言う。


「……硬いな」


神は言う。


「当然だ」


次の瞬間。


振る。


空気が裂ける。


サクヤが回避。


背後の壁が、音もなく切断される。


リョウが息を呑む。


「……レベルが違う」


サクヤが踏み込む。


斬る。


だが。


届かない。


すべて、読まれている。


神が言う。


「遅い」


一撃。


サクヤの体が吹き飛ぶ。


ドォン!!


建物に叩きつけられる。


リョウが叫ぶ。


「サクヤ!!」


神が振り向く。


今度はリョウへ。


その視線。


圧倒的な“上位存在”。


リョウの足が震える。


だが。


逃げない。


核を握る。


ドクン!!


“手”とは違う。


だが。


流れは見える。


神の内部。


膨大な災気。


制御されている。


完璧に。


リョウが呟く。


「……これが、神か」


神が一歩踏み出す。


「戻れ」


リョウに向けて言う。


「本来の位置へ」


リョウが叫ぶ。


「断る!!」


核が強く光る。


干渉を試みる。


だが。


弾かれる。


「っ……!」


神が言う。


「未完成だ」


冷たい声。


「それでは届かない」


リョウの視界が揺れる。


圧倒的な差。


サクヤが瓦礫の中から立ち上がる。


血が流れている。


だが、構える。


「……強いな」


神が見る。


「当然だ」


サクヤが言う。


「なら」


一歩踏み出す。


「斬る価値がある」


その言葉に。


神は、初めてわずかに表情を変えた。


「……理解不能」


そして。


再び構える。


街の中心。


人々が逃げ惑う中。


神と、人。


本来、交わらないはずの存在が。


今、ぶつかる。


リョウは歯を食いしばる。


「……どうする」


サクヤが答える。


「決まってる」


刀を握る手に力が入る。


「斬る」


リョウは核を握る。


「……やるしかないか」


神は静かに言う。


「排除する」


次の瞬間。


戦いが、再び始まった。


今度の相手は――


壊れていない“本物の神”。

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