↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/77

第30話 観測は、終わらない


黒い塊が脈打つ。


ドクン。


ドクン。


そのたびに、周囲の影が強くなる。


動きが速く、硬く、鋭く。


もはやただの操り人形ではない。


リョウが歯を食いしばる。


「強くなってる……!」


サクヤは前に出た。


「関係ない」


影が一斉に襲いかかる。


四方から。


死角なし。


だが。


サクヤの足は止まらない。


踏み込む。


一閃。


ザン!!


二体、同時に崩壊。


すぐに次。


ザン!!


さらに三体。


だが。


黒い糸が空中で絡み合う。


新たな形を作る。


リョウが叫ぶ。


「再生してる!」


サクヤが言う。


「なら本体だ」


一直線に黒い塊へ。


影が壁のように立ちはだかる。


だが。


サクヤは止まらない。


刀を振る。


斬る。


砕く。


踏み越える。


距離が縮まる。


あと、数歩。


その瞬間。


黒い塊が大きくうねった。


地面が割れる。


黒い糸が一斉に跳ね上がる。


槍のように。


サクヤへ。


ドン!!


地面を蹴って回避。


だが数が多い。


一本、肩をかすめる。


「……っ」


わずかに血が滲む。


リョウが叫ぶ。


「サクヤ!」


サクヤは構え直す。


「問題ない」


だが。


その傷口から。


黒い糸が、わずかに絡みついた。


リョウの顔が変わる。


「それ……まずい!」


サクヤは即座に判断する。


刀を逆手に持ち替え――


自分の肩を、浅く斬った。


ザン。


血と一緒に、黒い糸が断ち切られる。


リョウが息を呑む。


「迷いがないな……」


サクヤは何も言わない。


ただ前を見る。


黒い塊。


脈打つ“手”。


リョウが核を握る。


「……止める」


集中する。


さっきの感覚。


線。


流れ。


見えるはずだ。


ドクン。


核が応える。


視界が変わる。


黒い糸の流れが見える。


すべてが。


あの塊に繋がっている。


だが。


それだけじゃない。


もっと奥。


もっと深い“何か”。


リョウが呟く。


「……これ」


サクヤが聞く。


「どうした」


リョウは言う。


「本体じゃない」


空気が変わる。


「これ」


黒い塊を見る。


「末端だ」


その言葉と同時に。


黒い塊が声を発した。


『接続強化』


ドクン!!


森全体が揺れる。


影たちが一斉に変形する。


巨大な一体へと集まる。


リョウが叫ぶ。


「合体してる!?」


サクヤが踏み込む。


「ちょうどいい」


巨大な影が腕を振り下ろす。


ドォォン!!


サクヤはその下へ潜り込む。


そして。


一気に駆け上がる。


腕。


肩。


頭部へ。


その中心。


黒い核のような部分。


サクヤが狙う。


だが。


その瞬間。


核が強く光った。


ドクン!!


リョウの身体が勝手に動く。


手が前へ出る。


核が輝く。


そして。


巨大な影の動きが――止まる。


一瞬。


完全に。


サクヤの目が鋭くなる。


「……今だ」


跳ぶ。


振りかぶる。


そして。


迷いなく。


振り下ろす。


「――斬る」


ザン!!


中心が断ち切られる。


一拍遅れて。


ドォォォォォ!!


影が崩壊する。


黒い糸が弾ける。


森に静寂が戻る。


サクヤが地面に着地した。


刀を払う。


リョウはその場に膝をつく。


「はぁ……はぁ……」


核の光が、ゆっくりと弱まる。


黒い塊も、もう動かない。


完全に沈黙している。


しばらくの静けさ。


やがて。


リョウが言った。


「……終わった?」


サクヤは短く答える。


「いや」


黒い塊を見る。


「まだだ」


その時。


核が、微かに光った。


ドクン。


リョウの視界に、また“白”が広がる。


だが今回は、一瞬だけ。


声だけが響く。


『第一段階 終了』


冷たい声。


あの観測者。


リョウが叫ぶ。


「おい!!」


だが応答はない。


代わりに。


『介入データ 取得』


『次段階へ移行』


ノイズ。


途切れる。


現実に戻る。


リョウの顔が青ざめる。


「……今の」


サクヤが聞く。


「何だ」


リョウは答える。


「終わりじゃない」


黒い塊を見る。


「……始まりだ」


風が吹く。


森の奥。


見えないどこかで。


何かが、確実に動き出している。


観測は終わらない。


そして。


介入は、加速する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。