↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/77

第27話 観測者

山を下る道。


神祀都市を離れ、森の中へ。


夕暮れの光が木々の隙間から差し込んでいる。


リョウは歩きながら、手の中の核を見つめていた。


小さな光。


弱く、しかし確かに脈打っている。


サクヤが前を歩きながら言う。


「まだ反応はあるか」


リョウは頷く。


「うん」


少し間を置く。


「ずっと、何か見てる感じがする」


サクヤは振り返らない。


「お前をか」


「たぶん」


リョウは苦笑する。


「気持ち悪いな」


だが。


その表情は、どこか引っかかっている。


リョウは呟いた。


「……観測、って言ってた」


サクヤが聞く。


「どういう意味だ」


リョウは答えない。


代わりに、空を見た。


夕焼け。


だがその奥。


どこかに“視線”を感じる。


「……分からない」


本当は、少しだけ分かっている。


だが、言葉にできない。


その時。


核が光った。


ドクン。


リョウの足が止まる。


「……来る」


サクヤが振り返る。


「何だ」


次の瞬間。


頭の中に声が響いた。


『対象確認』


『中枢神 個体識別:一致』


リョウの目が見開かれる。


「……!」


『観測を継続する』


無機質な声。


感情がない。


だが確実に。


意思がある。


サクヤが一歩近づく。


「何があった」


リョウは息を整える。


「……話しかけてきた」


サクヤの目が細くなる。


「神か」


リョウは首を振った。


「違う」


断言する。


「こんな喋り方、しない」


核を見る。


「もっと……機械みたいだ」


沈黙。


風が吹く。


サクヤが言う。


「壊すか」


リョウは即座に答えた。


「待って」


サクヤが止まる。


リョウは核を見つめた。


「これ、多分……」


言葉を選ぶ。


「ただの神じゃない」


サクヤが聞く。


「何だ」


リョウは小さく言った。


「観測装置」


空気が変わる。


サクヤの手がわずかに止まる。


「……誰の」


リョウはゆっくり答えた。


「分からない」


だが。


その直後。


核が強く光った。


ドクン!!


リョウの視界が白く染まる。


――空間が変わる。


足元が消える。


上下もない。


ただ、白。


そして。


そこに“何か”がいた。


人の形。


だが、輪郭が曖昧。


リョウが呟く。


「……誰だ」


それは答えた。


『観測者』


声は、先ほどと同じ。


だが今は、少しだけ近い。


リョウは言う。


「お前……神じゃないな」


沈黙。


そして。


『否定』


即答。


『我々は神ではない』


リョウの心臓が跳ねる。


「我々?」


それは続ける。


『かつて人であった存在』


時間が止まる。


リョウの呼吸が浅くなる。


「……古代人」


その言葉に。


わずかな間。


そして。


『肯定』


リョウの頭が真っ白になる。


だが。


声は続く。


『我々は観測する』


『神システムの稼働』


『人類の選択』


『終末の可能性』


リョウが叫ぶ。


「何を言ってる!」


声が響く。


だが空間は変わらない。


観測者は淡々と続ける。


『中枢神』


『お前は管理者である』


リョウが言う。


「違う……俺は」


言葉が詰まる。


自分でも分からない。


観測者は続ける。


『だが現在』


『システムは崩壊傾向』


『誤差増大』


『神堕ち増加』


一瞬の沈黙。


そして。


『評価を開始する』


リョウの背筋が凍る。


「評価?」


観測者が言った。


『人類が』


『神なき世界で』


『生存可能か』


空気が消える。


リョウの声が震える。


「……それを」


「決めるのか」


観測者は答えた。


『観測するだけだ』


『判断はしない』


だが。


次の言葉は重かった。


『結果は変わらない』


沈黙。


リョウが歯を食いしばる。


「……ふざけるな」


観測者は反応しない。


ただ。


最後に言った。


『神は限界に近い』


『中枢神』


『選択せよ』


視界が崩れる。


白が消える。


現実に戻る。


リョウは膝をついていた。


「……はぁ……はぁ……」


サクヤが前に立っている。


「戻ったか」


リョウは顔を上げた。


核は、静かに光っている。


さっきと同じ。


だが。


もう違う。


リョウは言った。


「……いた」


サクヤが聞く。


「何が」


リョウは答えた。


「古代人」


沈黙。


森の中。


風が止まる。


サクヤの目が、わずかに鋭くなる。


「……生きているのか」


リョウは頷いた。


「うん」


そして。


静かに言った。


「見てる」


空を見上げる。


どこか遠く。


「俺たちを」


サクヤは少しだけ考えた。


そして言う。


「関係ない」


リョウが苦笑する。


「やっぱりそれか」


サクヤは歩き出した。


「敵は神祀庁だ」


少し間を置く。


「それ以外は後だ」


リョウも立ち上がる。


核を握る。


「……そうだな」


だが。


胸の奥に残る。


観測者の言葉。


選択せよ。


その意味を。


まだ、理解していなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。