第24話 それでも斬る
都市の空気が凍りついた。
「その女は人間ではない」
神祀庁の男の言葉が、静かに響く。
リョウの呼吸が止まる。
「……サクヤ?」
視線が彼女へ向く。
サクヤは――
何も言わなかった。
ただ、試作神を見上げている。
リョウが言う。
「今の……どういう意味だよ」
沈黙。
試作神が腕を振り上げる。
ドクン!!
災気がさらに膨れ上がる。
サクヤが一歩前に出た。
そして、短く言う。
「……関係ない」
リョウが息を呑む。
サクヤは刀を構えた。
「敵だ」
「斬る」
それだけだった。
次の瞬間。
地面を蹴る。
瓦礫が弾ける。
一直線に、試作神へ。
リョウが叫ぶ。
「ちょっと待てって!!」
だが。
止まらない。
サクヤはすでに屋根の上。
さらに跳ぶ。
空中。
そのまま神の胸へ向かう。
神祀庁の男が小さく笑う。
「やはりな」
そして呟く。
「完成度が高い」
試作神が動く。
今度は速い。
腕が横に薙がれる。
ドォォォン!!
空気が裂ける。
サクヤは空中で体をひねり、ギリギリで回避。
そのまま腕に着地。
走る。
腕の上を一直線に。
試作神の目が光る。
重圧がかかる。
ズン。
空気が沈む。
サクヤの動きが鈍る。
だが。
止まらない。
「……遅い」
踏み込む。
一気に肩へ。
さらに胸へ。
核が光る。
サクヤは迷わない。
振り下ろす。
ザン!!
四つ目の核が砕けた。
黒い霧が爆発する。
試作神が咆哮する。
ドォォォォ!!
だが。
今度は違う。
残った核が同時に光る。
ドクン!!
衝撃。
サクヤの身体が吹き飛ばされる。
空中で姿勢を崩す。
その瞬間。
試作神の拳が迫る。
リョウが叫ぶ。
「サクヤ!!」
間に合わない。
――そのはずだった。
サクヤの目が、わずかに細くなる。
「……まだだ」
空中で、無理やり体勢を立て直す。
そして。
拳に向かって踏み込む。
リョウが絶句する。
「は?」
ぶつかる直前。
サクヤの刀が走った。
ザン!!
拳が斬り裂かれる。
衝撃が分散する。
その隙に。
サクヤは拳を踏み台にした。
跳ぶ。
さらに上へ。
リョウが呟く。
「……おかしいだろ」
普通の人間じゃない。
そんな言葉が頭をよぎる。
だが。
サクヤは止まらない。
試作神の胸へ。
再び。
刃を構える。
その時。
リョウの中で、何かが弾けた。
視界が白く染まる。
無数の線が見える。
流れ。
災気の流動。
核同士の接続。
そして。
弱点。
リョウが叫ぶ。
「サクヤ!!」
サクヤがわずかに視線を向ける。
リョウは指差した。
「そこじゃない!」
「主核、ズレてる!!」
サクヤの目が動く。
見え方が変わる。
さっきまで中央にあったはずの核。
だが今は。
少しだけ位置がずれている。
リョウが叫ぶ。
「核同士が干渉してる!」
「位置が安定してない!」
サクヤが理解する。
「……動く核か」
リョウが続ける。
「今なら斬れる!!」
試作神が腕を振る。
だが。
遅い。
サクヤはすでに踏み込んでいる。
核の位置。
ズレ。
一瞬の隙。
そこへ。
刃を振り下ろす。
「――斬る」
ザン!!
主核に、亀裂が入った。
時間が止まる。
次の瞬間。
試作神が絶叫した。
ドォォォォォォォ!!
都市全体が揺れる。
残った核が暴走する。
光が乱れる。
リョウの顔が青ざめる。
「やばい……!」
サクヤは着地した。
地面に膝をつく。
だがすぐに立ち上がる。
空を見る。
主核。
ひび。
だが、まだ壊れていない。
サクヤが呟く。
「……あと一撃」
その時。
塔の上で。
神祀庁の男が、初めて少しだけ目を細めた。
「……ほう」
リョウを見る。
そしてサクヤを見る。
静かに言った。
「中枢神」
「神喰らい」
少しだけ笑う。
「やはり」
「対になる存在か」
空の上。
試作神の身体が膨れ上がる。
災気が暴走する。
リョウが叫ぶ。
「サクヤ!!」
サクヤは刀を握る。
そして。
静かに言った。
「……終わらせる」
次の一撃へ。




