第22話 試作神
都市の上空。
試作神がゆっくり腕を広げた。
空気が歪む。
胸に埋め込まれた複数の核が同時に脈打つ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
リョウの顔が青くなった。
「……まずい」
サクヤは空を見上げる。
「何が」
リョウは震える声で言った。
「核が……共鳴してる」
試作神の胸には十以上の核がある。
普通の神は一つ。
それだけでも暴走する。
なのにこれは。
十の神を一つにした存在。
次の瞬間。
試作神が咆哮した。
ドォォォォォ!!
衝撃波。
都市の屋根が吹き飛ぶ。
塔の一部が崩れる。
研究員たちが逃げ惑う。
「制御不能!」
「災気が臨界です!」
塔のバルコニーで。
神祀庁の男はそれを静かに見ていた。
「……なるほど」
小さく呟く。
「神同士は拒絶するか」
リョウが怒鳴る。
「また実験か!!」
男は笑った。
「もちろんだ」
そして。
サクヤを指差す。
「だが」
「ちょうどいい」
サクヤは刀を構えた。
「何が」
男は言った。
「神喰らい」
「君の剣は」
少し興味深そうに言う。
「どこまで神に届く?」
その瞬間。
試作神が動いた。
巨大な腕が振り下ろされる。
ドォォォン!!
都市の広場が砕けた。
サクヤは跳ぶ。
屋根へ。
さらに跳ぶ。
一気に試作神へ接近する。
リョウが叫ぶ。
「核は胸の中心!」
サクヤはすでに見ていた。
胸。
複数の光。
その中心。
一つだけ。
色が違う。
「……あれか」
リョウが言う。
「主核だ!」
サクヤが踏み込む。
肩へ。
そして胸へ。
刀を振り上げる。
だが。
その瞬間。
試作神の目が光った。
ズン。
空気が重くなる。
サクヤの動きが止まる。
リョウが叫ぶ。
「重力!」
試作神の周囲。
災気が圧縮されている。
まるで重力のように。
身体が押し潰される。
サクヤが初めて顔をしかめた。
「……重い」
試作神の腕が迫る。
ドォォン!!
サクヤは後ろへ跳ぶ。
屋根が砕ける。
リョウが言う。
「普通の神じゃない!」
サクヤが答える。
「見ればわかる」
試作神が歩く。
ズゥン。
ズゥン。
都市が揺れる。
塔の上で。
神祀庁の男が静かに言った。
「神とは」
「世界を維持する装置だ」
リョウが睨む。
「知ってる!」
男は続ける。
「だが」
試作神を見る。
「装置は改良できる」
沈黙。
男はゆっくり言った。
「人間のために」
「より効率的な神を」
サクヤが呟く。
「……狂ってるな」
男は笑った。
「そうか?」
そして空を指差す。
「見てみろ」
都市の上空。
災気が試作神へ流れている。
まるで川のように。
男は言った。
「神は」
「人間の不幸を処理する」
リョウが言う。
「だから壊れる!」
男は答えた。
「だから」
「より強い神が必要だ」
沈黙。
その時。
試作神の胸の核が一斉に光った。
ドクン!!
空が黒く染まる。
リョウの顔が変わる。
「……来る」
サクヤが聞く。
「何だ」
リョウは空を指差した。
都市の上空。
災気が巨大な渦を作っている。
「吸ってる」
試作神が。
都市全体の災気を吸い始めていた。
リョウの声が震える。
「……あれ」
「止めないと」
サクヤが言う。
「どうなる」
リョウは答えた。
「神堕ち」
沈黙。
サクヤの目が鋭くなる。
「つまり」
リョウが言った。
「都市サイズの神堕ちが生まれる」
風が止まる。
試作神の身体が膨らむ。
災気が集まり続ける。
塔の上で。
神祀庁の男は満足そうに頷いた。
「いい」
「実にいい」
そして。
静かに言った。
「これが次の神だ」
サクヤは刀を握る。
そして。
小さく言った。
「……斬る」
リョウが叫ぶ。
「今回は本気で頼む!!」
サクヤが走った。
巨大な神へ。




