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第17話 災気の嵐



王の身体から、黒い嵐が噴き上がった。


ドォォォォォ!!


街中の空気が一瞬で押し流される。


屋根が吹き飛び、瓦礫が空へ舞う。


リョウは思わず腕で顔を覆った。


「うわっ!!」


視界が黒く染まる。


災気の嵐。


それはただの風ではない。


人の絶望。


怒り。


悲しみ。


無数の感情が、渦を巻いている。


リョウの胸が締め付けられる。


「……苦しい」


サクヤは嵐の中で立っていた。


刀を握り、王を見上げている。


王の胸。


赤い核が激しく脈打っている。


ドクン。


ドクン。


リョウが叫ぶ。


「爆発する!」


サクヤは聞いた。


「時間は」


リョウは空を見た。


災気がどんどん集まっている。


「……数十秒」


サクヤは小さく息を吐いた。


「十分だ」


リョウが叫ぶ。


「十分じゃない!」


その瞬間。


王が動いた。


巨大な腕が嵐を裂いて振り下ろされる。


ドォォォン!!


地面が砕ける。


サクヤは横へ跳ぶ。


着地。


そして走る。


一直線に王へ。


リョウが叫ぶ。


「近づくな!」


だが。


サクヤは止まらない。


嵐の中を突き進む。


瓦礫が飛ぶ。


災気が体を押す。


それでも。


一歩。


また一歩。


王の足元へ。


王が蹴りを放つ。


サクヤは低く潜る。


そのまま脚を蹴る。


跳ぶ。


王の腰。


さらに跳ぶ。


肩。


リョウが叫ぶ。


「核!」


サクヤは見た。


胸の奥。


赤い光。


さっきより大きい。


そして。


ひびが入っている。


リョウが言う。


「暴走してる!」


サクヤは刀を構えた。


だが。


王の腕が振り下ろされる。


逃げ場がない。


リョウの頭が真っ白になる。


「サクヤ!」


その瞬間。


時間が少し遅く感じた。


王の腕。


落ちる影。


赤い核。


そして。


サクヤの声。


「……遅い」


刃が走った。


ザン!!


王の腕が空中で切断される。


黒い霧が爆発する。


サクヤはその勢いでさらに踏み込んだ。


胸へ。


核へ。


刃を振り上げる。


その時。


リョウが叫んだ。


「待て!」


サクヤが一瞬だけ止まる。


リョウは叫んだ。


「核」


「壊したら爆発する!」


沈黙。


嵐の中。


サクヤは赤い光を見る。


ひびだらけの核。


リョウは続ける。


「災気が溜まりすぎてる!」


「壊した瞬間」


「全部解放される!」


サクヤが聞く。


「つまり」


リョウは言った。


「街が吹き飛ぶ!」


数秒。


風の音だけが響く。


王が咆哮する。


災気の嵐がさらに強くなる。


リョウが叫ぶ。


「どうする!?」


サクヤは答えなかった。


ただ。


核を見つめている。


その時。


リョウの頭に、何かが浮かんだ。


白い空間。


巨大な装置。


神を管理する場所。


そして。


自分の声。


「災気は」


「流せばいい」


リョウの目が大きく開く。


「……そうだ」


サクヤが聞く。


「何だ」


リョウは叫んだ。


「核を壊すんじゃない!」


サクヤの目が細くなる。


「どうする」


リョウは言った。


「災気を抜く!」


サクヤが聞く。


「できるのか」


リョウは一瞬迷った。


そして。


言った。


「……やる」


サクヤは頷いた。


「わかった」


そして。


刀を下ろす。


代わりに、王の胸に手を伸ばした。


リョウが叫ぶ。


「触るな!」


サクヤは言った。


「抜くんだろ」


リョウは歯を食いしばった。


「……俺がやる!」


リョウが走る。


嵐の中へ。


王の足元へ。


そして。


跳んだ。


人生で一番高く。


王の胸へ。


サクヤが腕を伸ばす。


リョウの腕を掴む。


王の胸の前。


赤い核。


リョウは手を伸ばした。


そして。


叫ぶ。


「止まれ!!」


その瞬間。


嵐が止まった。


王の身体が固まる。


核の光も止まる。


世界が静かになる。


リョウの手が。


核に触れた。


次の瞬間。


無数の声が流れ込む。


絶望。


怒り。


悲しみ。


災気の洪水。


リョウの意識が揺れる。


「ぐっ……!」


サクヤが腕を掴んでいる。


「持て」


リョウは歯を食いしばった。


そして。


叫ぶ。


「……流れろ!!」


核の光が変わった。


赤から。


黒へ。


そして。


空へ流れ始める。


災気が。


王の身体から抜けていく。


嵐が消えていく。


リョウの視界が白くなる。


意識が遠のく。


最後に見えたのは。


サクヤの顔だった。


サクヤが言った。


「……やったな」


次の瞬間。


王の身体が崩れた。


黒い霧が空へ消えていく。


街に静寂が戻った。


そして。


リョウの意識が落ちた。

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