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第14話 神を斬る剣




サクヤの刃が振り下ろされた。


ザン!!


だが。


神の胸を覆う黒い災気が、刃を弾いた。


ギィン!!


金属のような音が響く。


リョウが叫ぶ。


「弾かれた!」


サクヤは着地すると同時に後ろへ跳ぶ。


その瞬間。


神の拳が落ちた。


ドォォォン!!


地面が爆発する。


石畳が空へ吹き飛ぶ。


リョウは思わず顔を覆った。


「うわっ!」


サクヤは数メートル先に着地する。


刀を構えたまま、神を見上げる。


「……硬いな」


リョウが叫ぶ。


「災気の鎧だ!」


神の身体の周囲には、渦巻く黒い霧。


それが厚い壁のように守っている。


核はその奥。


まったく見えない。


屋根の上の男が言った。


「人工神・改式」


「災気を圧縮して装甲にする」


リョウが怒鳴る。


「兵器じゃないか!」


男は淡々と答える。


「その通りだ」


その瞬間。


神が腕を広げた。


空気が震える。


街中の災気が、神へ流れ込む。


リョウの顔が青くなる。


「まずい」


サクヤが聞く。


「何だ」


「まだ強くなる!」


神の身体が膨らむ。


災気の鎧がさらに厚くなる。


神祀庁の男が言う。


「実験は成功だ」


リョウが叫ぶ。


「成功じゃない!」


神が動いた。


今までより速い。


一瞬で距離を詰める。


拳が振り下ろされる。


ドォォォン!!


サクヤは避ける。


だが衝撃波で壁に叩きつけられる。


リョウが走った。


「サクヤ!」


サクヤは壁から体を起こす。


息を整える。


「問題ない」


リョウが言う。


「核が見えないと斬れない!」


サクヤは神を見た。


巨大な影。


黒い鎧。


その奥にあるはずの光。


サクヤは静かに言った。


「なら」


刀を構える。


「見せればいい」


リョウが言う。


「どうやって!?」


サクヤは答えた。


「斬る」


リョウが頭を抱える。


「やっぱりそれ!!」


その瞬間。


サクヤが走った。


一直線。


神の足元へ。


神が蹴りを放つ。


サクヤは低く潜る。


そのまま脚へ。


ザン!!


災気の鎧が裂ける。


だが完全には切れない。


神が腕を振るう。


サクヤは跳ぶ。


肩へ。


さらに跳ぶ。


胸の高さへ。


そして――


刀を横に振る。


ザン!!


災気の鎧が裂けた。


リョウの目が見開く。


「見えた!」


胸の奥。


黒い嵐の中心。


小さな光。


核。


サクヤも見ていた。


そして。


静かに呟く。


「そこだ」


神が腕を振り上げる。


だが。


サクヤの方が速い。


一歩踏み込む。


刀を振り上げる。


その瞬間。


屋根の上の男が初めて少し驚いた。


「……ほう」


サクヤの目が鋭く光る。


そして。


刃が走る。


「――斬る」


ズバン!!


光が砕けた。


神の身体が止まる。


一瞬の沈黙。


そして。


ドォォォォォン!!


巨大な身体が崩れ落ちた。


黒い霧が空へ消えていく。


街に静寂が戻る。


リョウはその場に座り込んだ。


「……終わった」


サクヤは刀を振り、鞘に収めた。


カチン。


静かな音。


屋根の上の男が拍手した。


パン。


パン。


「素晴らしい」


リョウが睨む。


「まだいたのか」


男は笑う。


「当然だ」


そしてサクヤを見る。


「やはり危険だ」


サクヤは言う。


「お前を斬れば終わる」


男は首を振る。


「それは無理だ」


リョウが言う。


「どうして」


男は街を指差した。


「見てみろ」


二人が振り向く。


街のあちこち。


祠。


そこに――


何もない。


リョウが呟く。


「……神」


サクヤの目が細くなる。


男は静かに言った。


「回収完了」


リョウの背筋が冷える。


「全部?」


男は頷いた。


「この街の神は」


「すべて回収した」


サクヤが言う。


「だから人工神を置いた」


「その通り」


男は続けた。


「この街はデータを取るのに最適だった」


リョウが怒る。


「神がいないとどうなるか知ってるだろ!」


男は答えた。


「もちろん」


そして。


静かに言う。


「だから次の実験だ」


リョウの胸が嫌な予感でいっぱいになる。


「何する気だ」


男は笑った。


「神がいない街」


「そこに」


空を指差す。


「災気を流す」


リョウの顔が真っ青になる。


「……待て」


男は言う。


「神がいない世界を」


「少しだけ再現する」


サクヤの目が鋭くなる。


「つまり」


男は答えた。


「神なき世界の実験だ」


空が黒く濁り始める。


街に災気が流れ込む。


リョウが震える声で言った。


「……これ」


「街が壊れる」


男は静かに言った。


「いいデータになる」


その瞬間。


サクヤの足が動いた。


屋根へ跳ぶ。


男へ向かう。


だが。


煙玉が弾けた。


白い煙。


視界が消える。


煙が晴れた時。


男はもういなかった。


街の空は黒い。


災気がゆっくり降りてくる。


リョウが呟いた。


「……神がいない世界」


サクヤは刀を握る。


「止める」


リョウが聞く。


「どうやって?」


サクヤは空を見上げた。


黒い災気の雲。


そして言った。


「原因を斬る」


リョウは苦笑した。


「やっぱりそれなんだな」


だが。


その時。


リョウは気づいた。


街の奥。


影が動く。


一体。


また一体。


リョウの声が震える。


「……サクヤ」


サクヤが聞く。


「何だ」


リョウは言った。


「神堕ち」


「増えてる」


神のいない街で。


災気に満ちた街で。


新しい神堕ちが――


次々と生まれ始めていた。

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