第13話 四柱
街の中心に、四つの影が立ち上がった。
祠の上。
黒い霧が渦を巻き、その中心から人型の神が現れる。
一体。
二体。
三体。
四体。
空気が一気に重くなる。
街の人々が悲鳴を上げて逃げていく。
「また神が!」
「四体もいるぞ!!」
リョウはその光景を見て、思わず頭を抱えた。
「いやいやいや……」
「多すぎるだろ」
サクヤは無言で刀を構えている。
視線はすでに敵を捉えていた。
屋根の上で、神祀庁の男が楽しそうに言う。
「壮観だろう?」
リョウが睨む。
「街でやることじゃない!」
男は肩をすくめた。
「実験には環境が必要だ」
そして静かに続ける。
「神喰らいサクヤ」
「人工神四体」
「君はどこまで戦える?」
その瞬間。
四体の神が同時に動いた。
ズゥン!!
石畳が沈む。
一体が腕を振り上げる。
もう一体が跳ぶ。
残り二体が回り込む。
完全な包囲。
リョウが叫ぶ。
「サクヤ!」
だが。
サクヤは動かなかった。
ただ小さく息を吐く。
「……雑だな」
リョウが言う。
「何が!?」
サクヤは答える。
「連携」
次の瞬間。
神の拳が振り下ろされる。
ドォォォン!!
石畳が爆発する。
だが。
そこにサクヤはいない。
彼女はすでに走っていた。
一直線に、一体目へ。
神が腕を振るう。
サクヤは低く潜る。
足元を抜ける。
そして――
ザン!!
神の脚を斬る。
人工神がよろめく。
サクヤは止まらない。
そのまま胸へ。
核の位置。
刀を振り上げる。
「――斬る」
ズバン!!
光が砕けた。
一体目の神が崩れる。
リョウが叫ぶ。
「一体!」
だが。
すぐ横から衝撃が来た。
ドォン!!
二体目の拳。
サクヤは刀で受ける。
ガン!!
衝撃で屋台の上へ吹き飛ばされる。
三体目が跳ぶ。
巨大な影が落ちてくる。
リョウが叫ぶ。
「上!」
サクヤは屋台を蹴った。
空中へ。
神の肩に着地。
そして振り向きざまに――
ザン!!
神の首を裂く。
黒い霧が噴き出す。
だが。
リョウの顔が変わった。
「サクヤ!」
四体目が背後にいた。
腕が振り上がる。
逃げ場がない。
リョウの頭に、さっきの感覚が蘇る。
神を止めた力。
中枢神の命令。
リョウは手を伸ばした。
「止ま――」
言葉が出ない。
神は止まらない。
巨大な腕が振り下ろされる。
その瞬間。
サクヤが振り向いた。
刀が走る。
ザン!!
神の腕が飛んだ。
そして。
そのまま一歩踏み込む。
胸。
核。
「――斬る」
ズバン!!
三体目が崩れる。
リョウが叫ぶ。
「あと一体!」
残った神が咆哮する。
災気が爆発する。
周囲の建物の窓が一斉に割れた。
リョウが顔をしかめる。
「こいつ強い!」
サクヤも気付いていた。
残った一体。
明らかに他より強い。
神祀庁の男が言った。
「最後の一体は特別製だ」
リョウが怒鳴る。
「人を巻き込むな!」
男は答える。
「そのためのデータだ」
その時。
最後の神が腕を広げた。
災気が渦巻く。
街の空気が一気に重くなる。
リョウの顔が青くなる。
「……災気吸ってる」
サクヤが聞く。
「何だと」
リョウが言う。
「周りの災気を集めてる!」
神の身体が膨らむ。
黒い霧が厚くなる。
神祀庁の男が満足そうに言う。
「人工神・改式」
「災気増幅型」
サクヤが呟く。
「……なるほど」
リョウが叫ぶ。
「なるほどじゃない!」
神が動いた。
ドォォォン!!
地面が吹き飛ぶ。
速度がさっきより速い。
サクヤが避ける。
だが。
神はすぐ追う。
二撃。
三撃。
衝撃で建物が崩れる。
リョウが叫ぶ。
「核は!?」
サクヤは答える。
「見えない」
災気が厚すぎる。
核が隠れている。
神祀庁の男が笑った。
「それが改良点だ」
リョウが怒る。
「ふざけるな!」
神の拳がサクヤへ落ちる。
ドォォォン!!
煙が上がる。
リョウの心臓が跳ねた。
「サクヤ!」
煙の中から声がした。
「……問題ない」
次の瞬間。
煙が裂けた。
サクヤが走り出す。
一直線に神へ。
リョウが叫ぶ。
「核見えないって!」
サクヤは言った。
「なら」
刀を構える。
「全部斬る」
リョウが絶叫する。
「またそれかぁぁ!!」
サクヤが跳んだ。
巨大な神の胸へ。
そして刀を振り上げる。
その瞬間。
屋根の上の男が小さく呟いた。
「なるほど」
「やはり君は」
そして微笑む。
「危険だ」
サクヤの刃が――
神の胸に振り下ろされた。




