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第12話 置かれた神




祠の上に、黒い嵐が渦巻いていた。


街の中心。


本来なら、そこには小さな祠と穏やかな神がいるはずだった。


だが今、立っているのは――


巨大な神だった。


高さは十メートルほど。


人型だが、身体は黒い霧に覆われている。


そして顔。


白い面のようなものが、歪んでいた。


リョウが呟く。


「……神堕ち?」


サクヤは首を振る。


「違う」


刀を構える。


「堕ちてない」


リョウもそれを感じていた。


神の周囲には災気がある。


だが。


神自身はまだ壊れていない。


つまり――


「正常な神」


リョウは言った。


「でも」


目を細める。


「こんな神、知らない」


サクヤが聞く。


「どういう意味だ」


リョウは祠を見上げる。


「祠の神って」


「その土地に合わせて作られるんだ」


サクヤの眉が動く。


「作られる?」


リョウは言葉を止めた。


「あ……」


サクヤが言う。


「続けろ」


リョウは少し考えた。


記憶の奥から言葉を引き出す。


「祠の神は」


「その土地の災気を処理するための形をしてる」


サクヤが聞く。


「つまり」


「適材適所ってこと」


「うん」


リョウは頷く。


「でも」


祠の上の神を見る。


「これは違う」


サクヤが聞く。


「何が」


リョウは言った。


「戦闘用」


その瞬間。


神が動いた。


ズゥン……


地面が震える。


神の目が、ゆっくり街を見渡す。


そして。


腕を振り上げた。


リョウが叫ぶ。


「まずい!」


ドォォォォン!!


神の腕が振り下ろされる。


石畳が爆発する。


建物が崩れる。


悲鳴が上がる。


リョウが叫ぶ。


「なんで攻撃するんだ!?」


サクヤが答える。


「神祀庁」


リョウの顔が青ざめる。


「……実験」


サクヤは走り出した。


「止める」


祠へ向かう。


その途中。


リョウの頭に何かが浮かんだ。


白い部屋。


巨大な装置。


神を作る施設。


そして――


神祀庁の紋章。


リョウが呟く。


「……工房」


サクヤが聞く。


「何だ」


リョウは言った。


「神祀庁」


「神を作ってる」


サクヤの足が一瞬止まる。


「作る?」


「うん」


リョウは祠の神を見る。


「本物じゃない」


「人工神」


その瞬間。


神がサクヤを見た。


闇の目。


そして。


拳を振り上げる。


ドォォン!!


サクヤが跳ぶ。


屋根に着地。


神の肩へ走る。


リョウが叫ぶ。


「核ある!?」


サクヤは一瞬観察する。


胸。


中心。


そこに。


淡い光があった。


「ある」


「小さい!」


リョウが叫ぶ。


「人工神は核が弱い!」


サクヤは言った。


「なら簡単だ」


神の肩を蹴る。


空中へ。


刀を振り上げる。


「――斬る」


ザン!!


核が裂けた。


一瞬。


静寂。


そして。


神の身体が崩れた。


黒い霧が空へ消える。


祠の上に何も残らない。


リョウが息を吐く。


「……早」


サクヤが着地する。


「弱い」


リョウは祠を見上げた。


そこには、もう神はいない。


ぽつりと言う。


「……神って」


「こんなに簡単に作れるのか」


サクヤは答えない。


だが。


その時だった。


遠くの屋根の上で。


誰かが拍手した。


パン。


パン。


二人が同時に振り向く。


屋根の上に。


白い装束の男が立っていた。


神祀庁の男。


森で会った男だ。


リョウが叫ぶ。


「お前!」


男は笑った。


「実験成功」


サクヤの目が冷たくなる。


「神を置いたのか」


男は頷いた。


「そうだ」


そして街を見渡す。


「祠の神を回収」


「代わりに人工神を配置」


リョウが怒る。


「なんでそんなことする!」


男は静かに言った。


「データだ」


リョウが叫ぶ。


「人が死ぬぞ!」


男は答える。


「多少はな」


空気が凍った。


サクヤの手が刀の柄を握る。


男は続ける。


「だが必要だ」


「神システムはもう限界」


「だから」


静かに言う。


「次の神を作る」


リョウが言う。


「巨大中枢神」


男は笑った。


「理解が早い」


そして。


街を指差す。


「この街の神も」


「材料だ」


リョウが凍りつく。


「……全部回収する気か」


男は頷いた。


「もちろん」


そしてリョウを見る。


「君も」


サクヤが一歩前に出る。


「断る」


男は肩をすくめた。


「予想通りだ」


そして言った。


「だから」


手を軽く振る。


「用意してある」


その瞬間。


街のあちこちで。


祠が光った。


リョウの顔が青くなる。


「……嘘だろ」


一つ。


二つ。


三つ。


四つ。


祠の上に。


次々と光が生まれる。


リョウの声が震える。


「人工神」


「……四体」


サクヤは静かに刀を抜いた。


キィン。


男は楽しそうに言った。


「第二実験」


街の中心で。


四体の神が立ち上がる。


「神喰らいは何体まで斬れるのか」


サクヤは小さく息を吐いた。


「……面倒だ」


リョウが叫ぶ。


「今回ばかりは同意する!!」


四体の神が、同時に動いた。

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