第4話
「朱莉のバカ!ずっと一緒って言ったじゃん!」
「しょうがないじゃん!斗真くんなんて嫌い!」
水に揺られている。そんな感覚が体中に絡みついて、いつも昔のことを思い出させる。
「朱莉!斗真くんとお別れなんだからちゃんと挨拶しなさい」
「斗真も、ワガママばっかり言わないで、ちゃんと笑顔で!ごめんなさいね」
雪が強くて、足跡はすぐにかき消されてた気がする。だけど私たちの声は冷たい空気をつんざくように鋭くお互いを傷つけていた。それが私を、この先ずっと蝕むなんて知らずに。
あのとき、結局仲直りできたんだっけ?
覚えてるのは、お母さんに手を引かれて車に乗る直前のことだけ。彼は、きっと覚えてないけれど。
「朱莉!」
中二の男子……というか、斗真くんの、きっと恥ずかしいけど、かっこいい所。
振り返ると、彼は大きな目を精一杯見開いて、赤くなった鼻をすすりながら叫んでいた。
「次会ったらさ!」
私だけが知ってる。斗真くんのかっこいい所。
「結婚……じゃなくて……付き合って!僕と!」
記憶は波に攫われて、決して戻らない。飲み込まれた人を一人ぼっちにしておきながら、無責任に。
上では、光が踊るように輝いていて、手を伸ばせばもう一度その空を見ることができる気がする。
ねえ、もしあのとき、私が頷いてたら、あなたはどうしてたの?
私はあなたの隣に立てたのかな?
手を伸ばしてみても、その光はすり抜けて、決して近づくことはできない。
ごめんなさい、斗真くん。
私、自分が思ってたよりもずっと、幼かったみたい。




