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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
三年の刃、静かに研がれる

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噛み合わない歯車

「善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」

ーー孫子ーー


戦い上手な者は、勝ちやすい状況を作って勝つ。

しかし、「勝ちやすい状況」とは何か?

10人が噛み合わない時、勝てる状況など、どこにもない。



三日目。


フリッツが新しい課題を出した。


「模擬戦をします。5対5で。 俺のチームと、ヴィクターチームに分かれます」


俺のチームは、ミア姉様、エド、ラウル、クルト。

相手のチームは、ヴィクター、エリカ、ニコラス、マルティン、ヴォルフガング。


木剣を持った。

合図が鳴った。


相手チームが、 一斉に動いた。

速かった。

全員、俺より年上だ。体格も脚力も上だ。


俺は、後ろに下がった。


……正面からは勝てない。

……どこかに隙がある。


見た。


相手チームの右端の者が、少し前に出ていた。

左端が、遅れていた。

横の連携が、崩れていた。


「ミア姉様、右を!!」

「エド左だ!!」

「俺は、中央を引く!」


三人が同時に動いた。


しかし、ラウルとクルトが、動かなかった…


俺が中央を引いた瞬間、相手の三名が俺に集中した。

ミアとエドが右と左を制したが、中央で俺が三対一になった。


木剣が、俺の肩を叩いた。

「一本」とフリッツが言った。


俺のチームの負けだった。


二回戦。


今度は、指示を変えた。

「全員、俺の後ろについてください。俺が動いたら、同じ方向に動く。それだけでいい…。」


四年生の1人が、少し顔をしかめた。

「……それでは、各自の判断が活かせません!」


「今は捨ててください…。」


合図が鳴った。


俺は、左に動いた。

全員が、左に動いた。

相手チームが混乱した。

どこを見ればいいかわからなくなった。


その隙に、ミアが右から入った。

エドが左から入った。

俺が正面から、相手の中央を割った。


「三本。ルーク殿下チームの勝ち。」


……勝てた。

……しかし、俺が全員を動かしたから勝てた。

……それは「集」の力ではない。

……俺という「個」が、10人をいや5人を、道具にしただけだ。


休憩の時間、ラーツが俺に近づいてきた。


ラーツは背が高く、剣の腕は十人の中でも上位だ。

玄狼衆では剣の訓練を担当していたが、修行の場では別の顔がある。


「……殿下。二回戦は勝ちましたが、あれは、殿下が全員を支配しただけです。」


「わかっています。」


「……では、なぜあの指示を?」


俺は少し考えた。

「まず、勝つ体験が必要だったから。噛み合わないまま負け続けても、何も生まれない。

1度勝つことで、「噛み合えば勝てる」という感覚を、体に入れたかった。」


ラーツが、少し黙った。

それから、頷いた。


「……なるほど。では次は、各自の判断で噛み合わせる、ということですか?」


「はい。それが本当の「集」です。」


ラーツが、少し目を細めた。

「……8歳に言われるとは思いませんでした。」


「俺も、お前に言うとは思っていませんでした…」


ラーツが── 小さく笑った。


最初の亀裂が、少し、埋まった。

「個」と「個」が、言葉を交わした。

それだけで、歯車の形が、少し変わる。


夕方の修行の締めに、フリッツが全員の前で言った。


「今日の模擬戦を見ていました。二回戦の勝ち方は、 正しくありません。しかし、正しくない勝ち方の中に、正しいものが1つあった…」


全員が、フリッツを見た。


「ルーク殿下が、 負けた理由を、正確に分析していたことです。「なぜ負けたか」を知る者は、次に勝てる。「なぜ勝ったか」だけを知る者は、次に負ける。」


フリッツが── 全員を見渡した。

「明日は── 各自の判断で、噛み合わせてみてください。

何度負けても構いません。但し、負けるたびに、「なぜ」を言えるようになってください。」


なぜ負けたか?

なぜ噛み合わなかったか?

その問いを持ち続けることが、修行だ…


「過ちを知りて改めざるは、過ちの過ちたる所以なり」

ーー韓非子ーー


過ちを知って改めないのが、本当の過ちだ。

噛み合わない歯車は、噛み合わないことを知った時から、初めて変わり始める。

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