表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
流水の陣、影に宿る名 偽りの王子と、沈黙の黒幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/190

孤島の完成

「囲師には闕を遺し、窮寇には迫ることなかれ」

ーー孫子ーー


包囲する時は逃げ道を残せ。追い詰められた敵を、追い詰めすぎるな。

しかし、逃げ道を残すのは、敵のためではない。

こちらの盤を守るためだ。


レオンは、大人しく縄を受けた。


抵抗しなかった。

フリッツが縄をかける間、ただ目を閉じていた。


廃屋の奥の部屋に腰を下ろした時、レオンが言った。

「……聞いていいか?」


「どうぞ…」


「お前は、何王子だ?」


俺は少し考えた。

「第5王子です。」


レオンが、少し笑った。

乾いた笑い方だった。

「第5王子が、直々に来るか…おれもずいぶん、買われたものだ。」


「処断するつもりで来ました。」


「今は違う、と言ったな…」


「はい…」


レオンが目を開けた。俺を見た。

「……何が、変わった。」


俺は答えなかった。

代わりに聞いた。

「レオン・ファルク。あなたは今、何を書いていましたか?」


レオンが止まった。

しばらく俺を見た。

それから、少し表情が変わった。

硬さが、わずかに解けた。


「……手紙だ。」


「誰への?」


「家族への…父と、母と、兄二人への。もう届くことはないとわかっていたが、書かずにいられなかった。」


……手紙。

……処断される覚悟があった、だから書いた。



フリッツが外の確認に出た。

部屋に、俺とレオンだけになった。

「一つ聞いていいですか?」


レオンが目だけで促した。

「あなたは、オスカー兄上を、恨んでいますか?」


沈黙があった。


レオンが、窓の外を見た。

夜明けの光が、少し入り始めていた。

「……恨んでいない。」


「なぜですか?」


「あの方も檻の中にいたからだ…」


俺は黙って聞いた。


「王族というのは、檻だ。金の檻だが、檻には変わりない。あの方が逃げたくなるのは、わかる。俺も逃げたかった…ただ、逃げる場所がなかっただけだ…」


金の檻の中にいた王子と。

逃げ場のなかった影武者と。

二人の男が、同じ檻を違う側から見ていた。


「5年間、「王子」として生きた。ヴォルフ卿の手の者に、喋り方を教わった。歩き方を教わった。貴族との接し方、宴席での振る舞い、剣の構え。何もかもを、叩き込まれた。王家のためになると思っていた。最初は、誇らしかった。自分が国を支えられる気がした。」


レオンが少し間を置いた。


「しかし、反王権派に担ぎ上げられた時、わかった。俺は「人間」ではなかった。俺は「旗」だった。立てる時に使われ、不要になれば降ろされる。」


「それでも、反乱に加わったのですか?」


レオンが、俺を見た。

「望んでいなかった。旗を立てられた。俺が望んでいなくても、連中が勝手に「王子が立った」と叫んだ。もう、止められなかった。止めようとした時には 人が動いていた。俺の名前で人が死んでいた。」


俺の名前で、人が死んでいた。

部屋が、静かだった。



フリッツが戻ってきた。


「殿下。外の護衛は全員始末しました。」


「わかりました。」


フリッツが俺を見た。

「……どうなさいますか?」


俺は少しの間、レオンを見た。


処断する。それが王命だ。

しかし、この男を殺すことが、正しいのか?

操られた男を、その末端で切り捨てることが…

本当に正しいのか?

俺一人では、判断できない。


「フリッツ。父上に、密使を出してください」


フリッツが、少し目を細めた。

「……内容は?」


「「対象を拘束しました。処断の前に、1点だけ判断を仰ぎたいことがあります。対象を一時、軟禁・保護することを、ご許可いただけますか。  第5王子 ルーク」


フリッツが、 何も言わなかった。

しかし、その沈黙は、前と違った。


それから静かに言った。

「……殿下は、変わりましたな…」


「そうですか?」


「はい。学院封鎖戦の時の殿下は、即断でした。今は判断を仰ぐ…」


俺は少し考えた。

「即断できる問題と、できない問題があります。これは、俺1人の判断で決めていい問題ではないと思ったのです。」


フリッツが、一礼した。

「……承知しました。密使を出します。」


レオンが、黙って聞いていた。

俺を見た。

「……殺さないのか?」


「まだ、決めていません。父上の判断を待ちます。」


レオンが少し考えるような顔をした。

それから静かに言った。

「……お前は、変わった王子だな。」


「そうですか?」


「ああ。俺が知っている王族は、もっと自分の判断を疑わなかった。」


自分の判断を疑う。

それが弱さなのか、それとも。


夜明けの光が、廃屋の中に満ちていた。

包囲が完成した。

孤島の中で俺たちは、父王の返答を待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>『自分の判断を疑う。』 ↑↑↑(*^ー゜)「彼を知り己を知れば・・・」ですね♪ 敵の状況と自分の現状(能力、リソース、限界、弱み)を客観的に認識する・・・出来そうでw出来ないwのに第5王子殿下ゎさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ