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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
王令と、盤上の再編 8歳の立法者、誕生す

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星図を描く者──八歳の夜明け

「始めを慎むこと末を慎むが如くすれば、敗るること無し」

ーー孫子ーー

「千里の行も、足下より始まる。大業の成るも、その一歩に始まる」

ーー韓非子ーー


最後まで最初のように慎重であれば、敗れることはない。

千里の道も一歩から始まる。どれほど大きな仕事も、最初の一手から動き出す。



学院に戻った夜、俺は机に向かっていた。

今まで起きたことを、頭の中で整理し始めた。


学院に来た時、俺は8歳ではなかった。前世の49年間を持った、7歳だった。

学院での3年間で、盤の見方を学んだ。

学院封鎖戦で、戦の重さを知った。

王城で、盤の広さを知った。

シオン兄上との別れで、自分の立ち位置を確認した。


そしてトーマスの死で、知った…

俺の選択の1つ1つが重いものだと…

間違ったり、選択によっては、誰かが死ぬ…

その重さを、忘れてはならない。


学院一本化で、自分のやり方を確信した。

父王との謁見で、次の盤が見えた。

オスカー兄上との出会いで、自分が何に向いているかを知った。

フリッツとの三日間で、守るべき顔が、体に入った。


その先に誰かがいることを、忘れるな。

オスカー兄上の言葉が、残っている。


8歳が、国法を変えようとしている。

前世の49歳の俺が聞いたら、笑うかもしれない。

あるいは、羨むかもしれない。


前世では、俺は何者でもなかった。

普通の人間として、普通に生きて、普通に死んだ。

後に残るものは、何もなかった。


法が変われば、100年後の人間の暮らしが変わる。

軍法制が整えば、次の戦の形が変わる。

新武器が生まれれば、守られる命の数が変わる。


これが、俺の絵だ。

オスカー兄上は、紙の上に世界を描く。

俺は、法の上に国を描く。

そしてその絵の先に人がいる。


俺は頭の中に、1枚の図を描いた。

中央に、王城。

北に、アルベルト兄上とシオン兄上。最前線。

東に、ジュリアン兄上。商業と防衛。

西に、侯爵とフリッツ。近衛と王剣騎士団。

そして中央の内側に、俺…


俺の周りに、ミア姉様、エド、派閥の仲間たち。

1人ひとりが、それぞれの場所で、それぞれの役目を持つ。

星が散らばって、しかし、それぞれが動いている。


星図だ…

俺は今、この国の星図を描こうとしている。


窓の外が、少しずつ明るくなっていた。



ヴィクターが朝食を持って来た。

「……また朝まで起きていたのですか、党首殿。」


「少し考えていた。」


「少し、というのは、殿下の場合、一晩中ということですね…」


「……そうかもしれない。」


ヴィクターが朝食を机に置いた。机の上の紙片を一瞬見た。

「……何か描いていたのですか?」


「盤の図だ。」


「……なるほど。党首殿、一つ聞いてもよいですか?」


「どうぞ。」


ヴィクターが少し真剣な顔をした。

「……この先、殿下が動かそうとしていることは、本当に大変なことです。国法の改変を試みた者は過去に全員、貴族の抵抗に遭い、途中で頓挫しています。それを、殿下はどうやって乗り越えるつもりですか?」


俺は少し考えた。

「1つは、法の内容を正しくすること。反対する者が「この法は間違っている」と言えないように、理屈として完璧な法を作る。反対できるのは利権だけ、という状況にする。」


「……もう一つは?」


「時間だ…」

ヴィクターが少し眉を上げた。

「時間?」


「急がない、ということだ。三年と言ったが、急いで壊れるより、時間をかけて確かなものを作る方がいい。貴族の抵抗は、法が機能し始めれば、次第に薄れる。法の恩恵を受ける平民の数が増えれば、貴族は抵抗しにくくなる。時間は、俺の味方だ。」


ヴィクターが、少しの間俺を見た。

それから、静かに言った。

「……党首殿は、何歳なのですか?」


「あはは、8歳だよ。」


「……そうですね。」


ヴィクターが一礼して退出した。

俺は朝食に手をつけた。温かかった。


窓の外に、朝の光が広がっていた。

学院の建物が、光の中に浮かんでいた。


ここで戦が起きた。

あの夜の広場の静寂は、まだ頭に残っている。

重いものとして…


しかし、今俺がやろうとしていることは、あの夜のような静寂が、二度と必要にならない世界を作ることだ。

法が正しく機能すれば、戦の前に解決できることが増える。

軍法制が整えば、無用な犠牲が減る。

新武器が生まれれば、守れる命が増える。


それが、俺の星図だ。


俺は、心の中で、言葉を刻んだ。


星図は、描き続けることで完成する。

今日も、一手を動かす。


朝が来ていた。


8歳の立法者が、動き始めた。

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