新三年生、全員賛同
「善く兵を用うる者は、譬えば率然の如し」
ーー孫子ーー
「威は徳より生じ、徳は力より生ず」
ーー韓非子ーー
優れた指揮官の軍は頭を叩けば尾が、尾を叩けば頭が動く。
威厳は徳から生まれ、徳は力から生まれる。
新学期が始まった日の朝、俺は新三年生を集会室に集めた。
去年の二年生が三年生になった連中だ。
総勢20名
去年の学院封鎖戦で一緒に戦った者たちもいる。
遠征に出ていて、封鎖戦のことを知らない者もいる。
俺のことを、ほとんど知らない者もいる。
俺は教壇の前に立った。
室内がざわついていた。
なぜ集められたかわからない者が多い様子だった。
俺は少し間を置いてから、口を開いた。
「当学院は、今日から一派閥になった。全員が、基本的に我が派閥の団員だ。」
室内が静まった。
「異議がある者は、腕で示したいなら、我が側近が相手をする。頭で示したいなら、我が参謀が相手をする。どちらでも、好きな方を選べ!」
…しばらく、誰も動かなかった。
去年の封鎖戦で一緒に動いた連中が、先に口を開いた。
ゲオルクが手を上げた。
「俺たちは入ります、党首殿。オークションで選ばれなかった可能性もあったんで、正直ほっとしてます!」
隣のフリーダが頷いた。
「同じく。封鎖戦の時に党首殿の動きを見ていました。ついていきます!」
去年の二年生たちが、1人また1人と頷いていった。
残りの者たちも、その空気に引かれるように、少しずつ頷き始めた。
しかし1人だけ、動かない者がいた。
クラウスという男だった。
遠征組だ。封鎖戦のことを、話でしか知らない…
「……俺は、納得できない!」
室内が、再び静まった。
クラウスが腕を組んで前に出た。
「8歳の子供が党首だと?」
「…ふざけるな、腕で示せというならやってやる!!」
俺はクラウスを見た。
それから、エドを見た。
「エド…」
「……ああ」
エドが前に出た。
クラウスがエドを見た。
エドは表情を変えなかった。
ただ、静かに立っていた。
「……お前が側近か。やってみろ!!」
クラウスが踏み込んだ。
……一瞬だった。
クラウスの拳がエドに届く前に、エドが動いた。
手首を取って、体を回した。
クラウスが床に倒れた。
エドの膝がクラウスの背に乗った。
それだけだった。
3秒と、かからなかった。
室内が、完全に静まった。
エドがクラウスの背から膝を外した。立ち上がった。
クラウスが、ゆっくりと起き上がった。
しばらく、何も言わなかった。
それからクラウスが、俺を見た。
「……わかった。入る…」
「は?」
エドが言った。
「入らせていただきます。宜しくお願い致します。」
可哀想に…
俺は全員を見渡した。
「……以上だ。これから宜しく頼む。」
誰かが言った。「宜しくお願いします、党首殿!!」
それが広がった。
新三年生、全員賛同。
エドが俺の隣に戻ってきた。
「……楽だったな。」
「お前が楽にしてくれたんだろ?」
「……まあ、な。」
ミア姉様が後ろから小声で言った。
「エド、かっこよかったわねえ…」
「……うるさい」
「照れてる?」
「照れてない」
俺はノートを開いた。
新三年生
全員賛同
側近エド
仕事、3秒で完了
参謀ミア姉様
戦力外コメント担当として機能中
盤が、整ってきた
ペンを置いた。
学院は、1つになった。
ここから、本当の盤が始まる。




