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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
金の檻と、水底の龍

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母上の愛情攻勢と、56歳の敗走

「戦わずして勝つ──」

ーー孫子ーー

しかし世の中には、戦わずして負ける戦もある。母親の愛情がそれだ。



褒賞の儀が終わって昼前、俺はある事実を知らされた。


「母上様が、お待ちです」

トーマスがそう言った時、俺は一瞬固まった。


ーー母上。


イーダ・フォン・ヴァルトハウゼン。

第5王子の母。父王の第三妃。

会っていない…3年間…


前世の記憶を持つ俺にとって、「母親」というのは複雑な概念だ。

56歳まで生きた前世では、母親は早くに逝っていた。

今世の母上は、俺が学院に送り出される前、まだ4歳か5歳の頃の記憶しかない。

柔らかい匂い、膝の上、低い子守歌の声…

記憶は断片的だった。


「……わかりました。伺います」


母上の部屋は、王城の中で最も日当たりの良い場所にあった。


扉を開けた瞬間、俺は1歩で状況を把握した。


部屋の中央に、女性が立っていた。

30代半ば。栗色の髪。柔らかい目元。

その目が、俺を見た瞬間、潤んだ。


来た…。

「ルーク!!」


次の瞬間、俺の体が浮いていた。

抱き上げられた。


七歳の体は軽い。それは知っていた。

しかし実際に抱き上げられると…


止められない…


56歳の精神は、7歳の体に閉じ込められている。

正直母親が年下…

心中複雑である…

そしてその7歳の体は今、母親に抱き上げられて、頬ずりをされていた。


「大きくなった……! でもまだこんなに小さい……! !心配したのよ! 学院で大変だったって聞いて……!!」


……うん、落ち着け、俺。

…… 56歳だ。俺は五56歳だ。

…… 精神年齢的に、抱き上げられ、頬ずりをされる年齢ではない。


しかし、柔らかかった。

温かかった。

匂いを、思い出した。


…… 負けた。


俺は母上の肩に頭を乗せた。

少しだけ。本当に少しだけ。



その後、3時間に及ぶ愛情攻勢が始まった…

まず食事だった…

「ちゃんと食べていた? 顔が細くなった気がする。もっと食べなさい!!」


「食べています、食べています!!母上、学院の食事は十分ですよ!!」

「でも足りなかったでしょう?はい、もう一口!!」

「……い、いただきます。」


……56歳が、スプーンで食べさせてもらっている。

……誰にも見られていないことを確認した。

…… トーマスは廊下で待機させた。正解だった。


次に髪だった…

「ちゃんと手入れしてもらっている? ここ、少し跳ねているわね、直しましょう!!」


「じ、自分でできます!!」


「いいからじっとしていなさいっ!!」


「……はい。」


……56歳が、母親に髪を梳かされている。

……これが3年ぶりの再会か。

…… しかし不思議と、嫌ではなかった。


「ルーク、怖かった?」

母上が、髪を梳かしながら言った。声が、少し変わっていた。


「学院で、戦があったって聞いたわ。あなたが真ん中にいたって…、怖かった?」


俺は少し考えた…


「……正直に言ってもいいですか、母上?」


「もちろんよ!!」


「怖くは、ありませんでした。ただ…」

俺は少し止まった。


「あの夜の広場の静寂は、まだ頭に残っています。怖いとは違う。でも、何か重いものが残っている感じがします。」


母上の手が止まった。

しばらく何も言わなかった。

それから、静かに言った。


「……それでいいのよ。」


「え?」


「重いものが残るのは、正しいことよ。何も感じなかったら、その方が怖い…あなたはまだ7歳なのに、ちゃんと重さを感じているんだから……それで、いいのよ…」


……7歳なのに、か。


俺はその言葉を、少しの間噛み締めた。


「……ありがとうございます、母上」


「いいのよ。さ、もう一口食べなさい。」


「まだ続くのですか?!」


「続くわよ。三年分よ!!」


「……承知しました。」


……56歳の敗走、確定。

しかし、悪くなかった。


俺はそれを、心の中だけで認めた…

誰にも言うつもりはなかった…

……絶対に!!

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― 新着の感想 ―
w(ノ∀≦。)ノ56歳の敗走www♪ 母(の愛)ゎ強しw♡
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