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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
3年生・学院封鎖戦編 学院は落ちない、俺たちが守る

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白旗と暗闇 先発隊殲滅(後)

「攻めて必ず取るは、其の守らざる所を攻むればなり」

ーー孫子ーー


攻めて必ず取れるのは、相手が守っていないところを突くからだ。


先発隊の300名が、中央広場に入った。


俺は先頭を歩いていた。

松明が点いていた。広場が明るく照らされていた。

300名の兵士たちが、石畳の上に広がった。

指揮官が馬の上で周囲を見渡していた。


校舎の壁が四方を囲んでいた。

大門から入って来た方向を振り返ると、門はまだ開いていた。

しかし南北の小門は、いつの間にか閉じられていた。


誰も気づいていなかった。

俺は広場の中央まで歩いた。

そして止まった…


振り返った。

指揮官が、俺の目を見た…


その瞬間、指揮官の顔に、何かが走った。

……違和感。

7歳の子供の目が、降伏した者の目ではなかった…


「……?、待て、これは……!!」


大門が、音を立てて閉まった。

同時に広場の全ての松明が、一斉に消えた。

完全な暗闇が、広場を包んだ。


300の兵士が、ざわめいた。

何かを叫んだ。剣を抜こうとした。

しかし暗闇の中で方向がわからなかった。

隣の兵士と体がぶつかった。密集した状態で、みな動けなかった。


壁の上から、声がした。

ヴィクターの声だった。


「射て」

矢が、降った。


音もなく、暗闇の中から矢が来た。

密集した300の中に、次々と矢が刺さった。

叫び声が上がった。倒れる音がした。

しかし相手は暗闇の中で、どこから来るのかがわからなかった。


壁の上の弓組には、輪郭が見えていた。

2日間かけて慣らした目が、暗闇の中で熱を持つ人の塊を捉えていた。

狙って射る必要すらなかった。

密集した塊に向かって射れば、当たった。


その直後…


四方の屋根と高所から、別の音が降ってきた。

空を切る、低い唸り声のような音だった。

投げ槍だった。


校舎の屋根の上に配置された槍組が、一斉に投げ打ち下ろした。

一年生・二年生の者たち。教師陣。フリッツの部下…

弓の心得はなくても、高所から密集した人間の塊に向けて槍を落とすだけでいい。

四方八方から、槍が降り注いだ。


矢は静かだった。しかし槍は違った。

空を切る音が聞こえてから、次の瞬間には刺さっていた。

どこから来るか、見えなかった。

東から矢が来る。と思えば、北の屋根から槍が降る。

槍を防ごうと上を向けば、西の壁から矢が来る。


300の兵士たちが、完全に崩れた。

密集した人間同士がぶつかり合い、転び、踏まれ、暗闇の中で上から来るものと隣の人間の区別すらつかなくなった。


俺は広場の隅に移動していた。

エドが俺の横にいた。剣を抜いていた。

しかし、使う必要がなかった。


矢と槍が、交互に降り続けた…


300名が広場に詰め込まれ、出口を塞がれ、暗闇の中で方向を失っていた。

抵抗しようにも、相手が見えなかった。

逃げようにも、大門も小門も閉じていた。


指揮官の声が闇の中から聞こえた。

「降伏する! 降伏だ! 止めろっ!」


俺は、何も言わなかった。


……止めない。


毒が塗られた矢と槍は、刺さった瞬間から時間をかけて効いていく。

傷が浅くても、毒が体を蝕む。

叫び声が上がり続けた。倒れる音が続いた。

しかし弓組も槍組も、手を止めなかった。


長い、長い時間に感じた。

実際には、一刻と経っていなかったかもしれない。


広場が、静かになった…


ヴィクターが壁の上から言った。

「……殿下」


「松明を戻してください。弓組と槍組は配置を維持。」


再び光が広場に戻った。

俺は、目を逸らさなかった。


300名が、広場の石畳の上にいた。

立っている者は、ほとんどいなかった。

矢と槍を受け、毒に侵されて膝をついた者、倒れた者、動かなくなった者…

折れた槍が、広場のあちこちに刺さっていた。

指揮官は広場の中央で膝をついていた。

その目が、俺を見た…


何かを言おうとして、言えなかった。

毒が、もう声まで奪っていた。


俺は広場を見渡した。

それから、壁際に向かって言った。

「フリッツの部下の方々。お願いします。生徒は全員、広場から出てください。今すぐ!!」


カイが、何かを言いかけた。

俺はカイを見た。


「出ろ。これ以上見る必要はない。本当にお前たちはよくやった。」


カイが、俺を見た。

それから頷いて、槍組の一年生・二年生を連れて広場から出ていった。

アネットも、弓を持ったまま壁上から降りた。

教員たちも、静かに退いた。


広場に残ったのは、俺と、エドと、フリッツの部下三名だった。


フリッツの部下たちが、静かに広場に降りた。

音がなかった。

その後に続くことを、俺は見なかった。

エドが、俺の前に立って背を向けた。

見せないための背中だった。


音がした。

俺はその音を、数えなかった。


しばらくして、フリッツの部下の一人が俺の横に来た。

静かに、一礼した…

それだけで、わかった。


「ありがとうございました…」


俺は広場を見た。

石畳の上に、先発隊300名が眠るように横たわっていた。


ーーこれが、戦争だ。ーー


俺はその言葉を、頭の中だけで言った。

口には出さなかった。


エドが振り返った。

「……損害は?」


「こちらはゼロだ。」


「何だ?」


「……何もない。」


トーマスが来た。顔が青かった。

「……殿下。本当に終わりましたか?」


「一段目は終わりです。次が本番です」


ミア姉様が走ってきた。

「ルーク! 無事ですか!?」


「問題ありません」


「よかった……! 心配しました……!」


ミア姉様が、俺の顔を一瞬だけ見た。

何かを言いかけて、止めた。

代わりに静かに言った。


「……フリッツへの連絡は、もう入れました。次の段階に移ります。」


俺は頷いた。

「ありがとうございます、ミア姉様…」


夜が、更けていった。

本隊は今頃、「学院は落ちた」と信じている。


……次は、火だ。

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― 新着の感想 ―
痛快なシーンでした♪ 「水は高きを避けて低きに赴き、兵は実を避けて虚を撃つ」 次もめっちゃ期待でドキドキ♡
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