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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
3年生・学院封鎖戦編 学院は落ちない、俺たちが守る

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二日間の猶予と、7歳の軍師(前)

「勝兵は先ず勝ちてしかる後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いてしかる後に勝ちを求む」

ーー孫子ーー


勝つ軍はまず勝てる状況を作ってから戦う。負ける軍はまず戦ってから勝ちを求める。



先発隊が来るまで、2日。

俺はその夜、学院の大集会室に声をかけられる者を全員集めた。


集会室に、人が集まった。


まず玄狼衆。

トーマス、クルト、ラウル、エド、ヴィクター、エリカ。

それから旧蒼穹会から吸収した残留メンバー4名。ミア姉様。

合計12名。これが俺たちの中核だ。


その隣に、他派閥の居残り組が固まっていた。

鉄環会からフォン・ハウザーと3名。

白鷺派から2名。

暁明社から1名。

遠征に出なかった、あるいは出られなかった者たちだ…

フォン・ハウザーが腕を組んで俺を見ていた。

何かを言いたそうで、まだ言ってこなかった。


壁際に、3名が静かに立っていた。

フリッツの部下だった。

3名とも、一見すると学院の使用人か何かに見えた…

しかし立ち方が違う。

目の動き方が違う。

フリッツと同じ気配を、3名それぞれが持っていた。

残り8名は現在、外で情報収集に動いているという。

この3名が今夜の戦力として学院に控えている。


戦闘系の教員が4名、別の壁際に並んでいた。

剣術担当、弓術担当、体術担当、それから戦術理論を教えるヴェルナー教諭。

ヴェルナー教諭だけ、手に羊皮紙を持っていた。

既に何か書いていた。


最後に一年生と二年生の代表が、扉の近くに立っていた。


一年生序列一位、カイ・フォン・ゼーラー

13歳。細身で眼光が鋭い。

学院に入学して半年で序列一位を取った男だ。


一年生序列二位、レナ・フォン・アッヘン

同じく13歳。短く切りそろえた黒髪。

剣術の成績が飛び抜けている。


二年生序列一位、マクシム・フォン・ライナー

14歳。がっしりとした体格で、声が低い。


二年生序列二位、アネット・フォン・シュタール

14歳。おとなしそうに見えるが、弓の腕が教員水準と言われている。


4名は緊張した顔をしていた。

当然だ。普段は上の学年と集会を持つことはない。

ましてや、その中に第5王子がいるとは思っていなかっただろう。


俺はカイ・フォン・ゼーラーに向いた。

「お前のところは何人いる?」


カイが少し姿勢を正した。

「一年生は遠征に出ていない者が18名います。但し全員が戦闘に使えるわけではありません。体格・練度・精神面から判断して、実戦に出せると俺が判断しているのは8名です。」


「その8名、今夜使えるか?」


「全員、話しました。来る気があると言っています。」


マクシム・フォン・ライナーが続けた。

「二年生も同様です。残留は18名。但し実戦に出せるのは10名と判断しています。残り8名は後方支援や補給に回します。」


「それでいい。後方も立派な戦力だ。」


4名は緊張した顔をしていたが、目が逃げていなかった。

ここに来た時点で、覚悟は決まっているということだ。


俺は全員を見渡した。


玄狼衆12名

他派閥居残り7名

フリッツの部下3名

戦闘系教員4名

一・二年生代表4名

そして後方に控える一年生18名

二年生18名

計36名

そのうち実戦に出せるのは一年生8名

二年生10名

計18名


合計で30名が今この集会室に集まり、外に36名が待機している。


これが、今俺たちの持っている全てだ。


俺は黒板に向かった。

「まず現状を共有します」

チョークで数字を書いた。


先発隊(斥候部隊)300

2日後の夜に到達


第一部隊1200

4日後の夕刻に到達


後続三部隊(本隊含む)合計約4500

合計6000超の大軍

到達はさらにその後


シオン兄上たちの帰還

5日から6日後


室内が静まった。


フォン・ハウザーが低い声で言った。

「……6000超。それに対して今ここに30名か…」


「そうです…」


「……正気か?」


「正気です。だから正面からは戦いません。」


クルトが言った。

「俺たち30人で先に来る三百人を相手にするのか?」


「そうです!」


「……えー」


「クルト…」


「はい…」


「感想は後でいいです。」


一年生のカイ・フォン・ゼーラーが手を挙げた。

「……あの。俺たちは何をすればいいですか?」


俺はその少年を見た。13歳。序列一位。

緊張していたが、目が逃げていなかった。

「ある。ちゃんとある。今から説明する。」


トーマスが静かに言った。

「この人数では、正面からは戦えません。」


「そうです。だから戦いません…」

全員が俺を見た。


俺は黒板に「最大任務」と書いた。

「今の俺たちの最大任務は一つです。遠征軍が戻るまで、学院を持ち堪えること。これを全員の共通認識にしてください。勝つ必要はない、潰れなければいい…但し、ただ耐えるだけでは、数の論理で押し込まれます。だから積極的に、相手の頭を混乱させながら時間を稼ぐ。」


エドが静かに言った。

「……具体的には?」


俺はチョークを走らせた。

「作戦は三段構えです。」

一段目 先発隊を学院に引き込み、ここで叩く。

二段目 第一部隊を分断し、学院の近くで足止めする。

三段目 本隊を火で止める。

「シオン兄上が戻った時、相手の戦力を最大限に削いでおく。それが俺たちの戦い方です」


ラウルが言った。

「……先発隊を学院に引き込む、とはどういうことだ?」


俺は答えた。

「偽りの降伏です…」


室内が、また静まった。


「先発隊が来た時、俺たちは白旗を上げます。降伏の意思を示す。相手はその報告を本隊に送るために伝令を出す。その伝令を確認してから、次の段階に移ります。」


「伝令を確認してから、とはどういう意味ですか?」

トーマスが聞いた。


「本隊に『学院は降伏した』という誤報を送らせるためです。本隊は、学院がすでに制圧済みだと思い込む。警戒を緩めます。気を緩めた状態で移動してくる。それが四段目の仕掛けに繋がります。」


エドが少し考えてから言った。

「……先発隊を引き込んだ後はどうする?」


「学院の中央広場に誘導します。そこで松明を一斉に消す。暗闇の中に先発隊を置いて、弓で叩く。」


「弓が使える人間は何人いる?」


「確認します。ヴィクター」


ヴィクターが静かに答えた。

「玄狼衆の中で弓の練習経験があるのは7名。精度はばらつきがある。ただし…」

ヴィクターが壁際を見た。

「アネット・フォン・シュタール。お前は弓の腕が教員水準と聞いている。」


二年生序列二位のアネットが、わずかに緊張したまま頷いた。

「……はい。」


「弓組に加わってくれ。」


「わかりました。」


「弓術担当の教員も弓組に入ってください。弓組は東西の壁上に配置します。精度は問わない。数です。広場に300人が詰め込まれた状態なら、外れても当たります。」


「弓を使えない者は、どうします?」

ラウルが聞いた。


「投げ槍です。槍組の主力は一年生の8名と二年生の10名、計18名だ。カイ、マクシム、レナ、お前たち代表3名も槍組に入れ。それから剣術・体術担当の教員と他派閥居残り組の希望者。フリッツの部下3名にも加わってもらいます。後方待機の一年生10名・二年生8名は補給と伝令だ。しっかり頼む」


フリッツの部下の一人が、静かに頷いた。

言葉はなかった。


「槍と矢を大量に用意します。そして……」


俺は少し間を置いた。

室内の全員が、俺を見ていた。


「全ての矢と槍の先端に、毒を塗ります。」

室内が、静まった。


「残虐だとわかっています。しかしこれは確実性の問題です。暗闇の中で弓と槍を撃ち込んでも、致命傷でなければ戦闘能力が残る。先発隊が1人でも機能する状態で広場を脱出すれば、作戦が崩れます。先発隊は斥候部隊を含んでいます。情報を外に出させてはならない。だから1人も生かして帰しません。」


誰も口を開かなかった。


カイ・フォン・ゼーラーが、顔色を変えていた…

レナも、マクシムも、アネットも…

それは正直な反応だった。


俺は続けた。

「但し、生徒にトドメを取らせるつもりはありません。矢と槍を放った後、動いている者の確認と、確実な処置は……」


俺はフリッツの部下3名を見た。

「フリッツの部下の方々にお願いしたい。これは生徒にさせられる仕事ではありません。こちらの指揮系統を保つ為、相手の命を完全に断つために、確実に…よろしいですか?」


フリッツの部下の一人が、静かに前に出た。

深く礼をした。言葉はなかった…

それだけで、了承の意味だとわかった。


「広場の四方を囲む校舎の屋根と高所に分散して配置する。

松明が消えた瞬間から、四方八方の高所から一斉に投げ打ち下ろす。弓組が東西の壁上から矢を射る。槍組が四方の高所から槍を降らせる。上から来るものが2種類ある。どちらを防いでも、もう一方が来る…」


フォン・ハウザーが、表情を引き締めたまま言った。

「頭の上から、二種類か…」


「そうです。」


「……なるほどな。鉄環会は槍組に入る。うちは腕のある奴が多い」


「ありがとうございます。」


ラウルが続けた。

「……投げ槍は有効か。三百の武装した兵士相手に?」


「有効です。矢より重い。暗闇の中で頭上から落ちてくる槍は、防ぎようがない。矢は音が小さい。槍は空を切る音がする。その音が、密集した300の中に恐怖を広げます。どこから来るかわからない。防げない。逃げ場もない。

300が暗闇の中で矢と槍の両方から叩かれれば、それがどれほど鍛えた兵士であっても、組織的な行動はできなくなります。」


ヴェルナー教諭が羊皮紙から目を上げた。

「殿下。1点確認です。弓組と槍組の配置を同時に行う場合、双方の射線が重ならないよう調整が必要です。特に東西壁上の弓組と、北南屋根の槍組の角度に注意が必要かと…」


「正確な指摘です。ヴェルナー教諭、配置図の作成をお願いできますか?」


「既に描き始めています」


カイ・フォン・ゼーラーが静かに言った。

「……一年生も全員、目隠しするんですか?」


俺はカイを見た。

「そうだ。お前たちも全員やる。理由を言う。」


俺は全員に向き直った。

「弓組と槍組、全員に今夜から目隠しをして行動してもらいます。食事も、移動も、訓練も、全て目を塞いで。2日間、光のない状態に目を慣らす。当日の夜、相手が暗闇で目が見えない時、俺たちの目は開いている。弓は暗闇でも輪郭を捉えて射る。槍は頭上から密集した塊に落とすだけでいい。

その差が、この作戦の核心です。」


室内が沈黙した。


エリカが静かに言った。

「……二日間、目隠しで?」


「そうです。」


「……わかった。」


クルトが言った。

「いや待って、飯食えるか俺?」


「食えます。手で確かめながら食べれば。」


「それ飯食ってるって言えるか?」


「クルト」


「はい…」


「二日です。頑張ってください。」


レナ・フォン・アッヘンが小声で言った。

「……先輩たちってこんな感じなんですか?」


マクシムが同じく小声で答えた。

「……たぶん、こんな感じだ。」


ミア姉様が静かに言った。

「ルーク。私は後方で何をすればいいですか?」


「情報の一元管理をお願いします。各所の動きを全部ミア姉様のところに集めて、俺に届けてください。それからフリッツへの連絡ルートを確保しておいてください。後の段階で、フリッツの部下の方々に動いてもらう必要があります。」


ミア姉様が頷いた。

「わかりました。任せてください。」


壁際のフリッツの部下の一人が、ミア姉様に静かに一礼した。

お嬢様、と口だけが動いた。


俺は黒板を見た。

「今夜から準備を始めます。全員、各自の役割を確認してください。質問は今夜中に出してください。2日後の夜には、もう動いている。」


俺はカイとマクシムを見た。

「カイ、マクシム。お前たちの後輩の命はお前たちが守れ。使える8名と10名を、ちゃんと動かせ。いいな!!」


二人が、同時に頷いた。


誰も何も言わなかった。

ただ、全員が頷いた。

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― 新着の感想 ―
「善く戦う者は、人に致して人に致されず」 なんか凄いカリスマ♡♡♡ 7歳の軍師⸜(*ˊᗜˋ*)⸝カッコいい♪
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