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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
3年生 学内派閥闘争編

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軍を作る 法と術と勢

5000枚の支度金を手にした夜、俺はノートに三つの文字を書いた。



法とは、規則だ。

誰もが従う明確な基準を作ること…


術とは、人の使い方だ。

誰に何を任せるか、誰をどう動かすか…


勢とは、流れだ。

時と場所と状況を味方につけること…


この三つが揃えば、7歳の王子でも軍を動かせる。

揃わなければ、どれだけ金があっても烏合の衆にしかならない。


まず、術から始める。

人を集める。


翌朝、俺は同級生を集めた。


「話がある」


8名のノルマ合計、69900枚。

俺のと合わせると、金貨135900枚

期限は1ヶ月…

普通の計画では無理な事を説明し、そして北への遠征計画を、全員に説明した。


「一から軍を作る。まずは5000枚の支度金で傭兵と志願兵を集める。指揮するのは俺たちだ。それぞれの得意なことで動いてくれ!」


ラウルが手を挙げた。

「……志願兵の集め方、俺に任せてくれないか」


「理由を聞かせろ」


「うちの家は財務省系だ。各地の税務所との付き合いがある。税務所は各町の台帳を持っている。どこに腕っぷしのある奴がいるか、大体わかる。俺が顔を出せば、話を聞いてくれる人間が何人かいるはず」


俺は頷いた。

「任せる。ただし条件がある。集めた全員に理由を伝えろ。

なぜ戦うのか。何のために集まるのか。それを伝えた上で来た者だけを連れてこい。」


「……理由を、伝えるのか?」


「必ずだ。理由を知らずに動く人間は、最初の困難で崩れる。理由を知っている人間は、困難でも動ける。」


ラウルが少し考えた後、頷いた。

「わかった!」


ヴィクターが続けた。

「傭兵の確保はフォン・クラーゼンの名で動く。ただし、俺が選別する。報酬だけで動く者は弾く。過去に実戦経験があり、指揮系統に従える者だけを通す。」


「それでいい。選別の基準を書いて出せ。俺も確認する。」


クルトが言った。

「俺は訓練を担当する。集まった人間の練度を上げる。俺の剣術の腕なら、基礎の叩き込みは三日でできる。」


「頼む。ただし叩き込む内容は俺が決める。剣術だけじゃない。部隊としての動き方、合図の使い方、退路の確保の仕方まで含めろ。」


エリカが静かに言った。「情報の整理を手伝う。斥候が持ってくる断片的な情報を、地図に落として整理する役が必要だろう?」


「正確だ。ヴィクターと連携してやってくれ」


ニコラスとマルティン、ヴォルフガングの三名が、顔を見合わせた。


「俺たちは…何をすればいい?」

ニコラスが言った。


「各部隊の実働補佐だ。エドの下に入って動いてくれ。

エドが一番、人を使う場面で困る。お前たちがいれば、エドは、戦いに集中できる。」


三人が頷いた。


ミア様が手を挙げた。

「私、補給と資金管理やる! 得意だよ!」


俺はミア様を見た。

補給と資金管理。軍を動かす上で最も地味で、最も重要な役割だ。

それを即座に選んだ。


「では頼みます、ミア姉様。」


ミア様が、固まった。

数秒止まり、動かなかった。


それから、ものすごい勢いで噴火が起きた。


「──っ、やるっ!! 絶対やる!! 任せて!! ルーク絶対後悔させないから!!」


ミア様が両手を握りしめて、目を輝かせていた。

完全に限界突破した顔だった。


ラウルが俺に小声で言った。

「……今のは何だ?」

「投資だ…」

「どういう意味だ…」

「一言で、仕事の質が上がる。悪くない取引だろう?」


ラウルが呆れた顔になった…


クルトが小声でヴィクターに言った。

「……あいつ7歳だよな?」


ヴィクターが静かに答えた。

「7歳だ…」


「怖くないか?そのうち俺らまであ〜なるんじゃ…」


「…」


エドは何も言わなかった。

ただ、俺を一度だけ見た。

呆れ、ではなかった。

しかしそれが何なのか、俺にはまだ読めなかった。


全員の視線が、最後に一人のところで止まった。


エドだった。


エドは、ずっと黙っていた。

俺の話を聞きながら、誰の言葉にも反応していなかった。


「エド…」


俺が呼んだ。


「……実戦部隊の先頭に立ってくれ。お前の剣は、学院全体で見ても突出している。傭兵も志願兵も、強い人間の背中を見れば動ける。お前にしかできない役割だ…」


エドは、俺だけを見た。

その目の奥に、また何かがあった。

しかし、頷いた。


「……わかった。」


次に、法を定める。


頭の中に、ある思想が流れた。

法とは賞罰を明確にすること。

働いた者には必ず報い、約束を破った者には必ず罰を与える。


それが守られない組織は、最初の試練で崩れる。

俺はその思想を、自分の言葉に変えた。


「軍の原則を定める。三つだ」


「一、指揮系統は絶対だ。誰が何を決めるか、全員が把握しておけ。戦場では、この系統を外れた独断は禁じる。理由は問わない」


「二、約束は必ず守る。報酬は成功の翌日に正確に支払う。一枚も誤魔化さない。命令に従わない者は即座に解任する。情けはかけない。但しこちら側も同じだ。俺たちが約束を破れば、軍は崩れる」


「三、情報を先に制する。戦う前に相手を知り尽くせ。相手には俺たちを知らせるな。情報のない戦場に出るな」


全員が頷いた。


ミア様だけが…

「もうルークかっこいいんだから…姉様キュン死しちゃう…」と小声で言っていた。


最後に、勢を作る。


人集めに、ラウルが三日間動いた。


財務省系の伝手を辿り、六つの町を回った。

台帳を確認し、腕のある人間に直接話をした。

ラウルが伝えた言葉は、俺が言った通りだった。


「なぜ戦うのか。何のために集まるのか…」


ラウルは各町で、その理由を丁寧に語ったという。

後日、ラウルが俺に言った。


「……説明したら、思ったより集まった。理由を話したら、みんな自分で考え始めた。俺、今まで人を集めるのにそんなこと考えたことなかった…」


「お前が自分の言葉で語ったからだ。それが伝わったんだ、皆に…」


ラウルが少し黙った。

「……ルーク、お前って本当に七歳か?」

「七歳だ。」

「嘘くさい…」


志願兵は180名集まった。


ヴィクターの傭兵選別も、予想以上の結果だった。


フォン・クラーゼンの名で接触した傭兵団のうち、

ヴィクターが「報酬だけで動く者は弾く」という基準で絞り込んだ結果、120名が残った。


「弾いた人数の方が多かったな」

「質の問題だ。300名の烏合より、120名の精兵の方がいい」

ヴィクターらしい判断だった。


クルトが三日で訓練を仕込んだ。


剣術の基礎だけではなく、俺が決めた「部隊としての動き方」を全員に叩き込んだ。

合図。退路の確保。負傷者への対応。

クルトは元々教えることが上手かった。

三日後、訓練場に来た俺は、その仕上がりに少し驚いた。


「クルト、三日でここまで上げたのか?」

「楽しかったぞ! 俺、向いてるかもしれない!」


クルトが笑っていた。

いつもの笑顔だったが、その目に確かな自信が入っていた。


そしてエドが、予想を超えた動きをした…


エドは実戦部隊の先頭に立ちながら、傭兵と志願兵の間に自分から入っていった。


言葉は少なかった。

しかし訓練の中で、エドは1人1人の動きを見ていた。

この男は剣が使える、この男は耐久力がある、この男は判断が速い。

誰も指示していないのに、エドはその観察を自分のノートに書き留めていた。


俺がそれを知ったのは、訓練が終わった夜だった。


エドが俺の部屋に来て、一枚の紙を置いた。


「これ、使えるか?」


紙には、300名分の人間の特性が書かれていた。

名前。

得意な動き。

体力の限界目安。

向いている役割。


俺は時間かけて読んだ。


「……いつ書いた?」

「訓練しながら…」

「三日で300名分を?」

「見ていれば、わかる…」


エドが淡々と言った。


俺はその紙を、エリカに渡した。

「地図に落とした情報と合わせて、部隊編成の案を作ってくれ。エドの観察を基にしていい」


エリカが紙を受け取った。「……わかったわ。」


その夜、俺はノートを開いた。


エド。

施設出身

剣術最上位

無口

しかし人を見る眼を持っている。


300名を三日で観察しきった。

この男は、いずれ指揮官になれる。まだ本人は気づいていないかもしれないが…


俺はその一行を書いて、ノートを閉じた。


合計300名の傭兵と志願兵。

そこに同級生九名が加わった。

合計310名。俺たちの軍だった…


勢は、こうして作られた。

強い核があれば、その周りに人が集まる。

集まった人間が動き始めれば、流れが生まれる。

流れができれば、数の差は意味を変える。


三週間の準備期間中、斥候の報告が次々と届いた。


相手の布陣が、日を追うごとに明確になっていった。

丘の北斜面に本陣。首領の天幕は、北斜面の最高点に設置されていた。

東側に前衛の主力、西側に斥候部隊。

南側の谷を通る一本道が、唯一の補給路だった…


俺はその地形を頭の中に叩き込んだ。


補給路は一本。そこを断てば、兵3000名は孤立する。

西の高地を制圧すれば、相手の斥候部隊は機能を失う。

正面から圧力をかければ、相手は南を固める。

南を固めた瞬間、東から補給路に回り込む。


三段の仕掛けだ。

一段目で目を向けさせ

二段目で喉を断ち

三段目で退路を塞ぐ…


さらに俺は、もう一手を用意した。


斥候から、相手内部の情報を得ていた。

首領の補佐役と、主力部隊の隊長格の間に、報酬の配分を巡る内紛がある。

隊長格は首領への不満を持ち、南下前に独自に動くことを検討しているという。


内部の亀裂を、使う。

戦闘の前日、俺はラウルを呼んだ。


「相手の隊長格に、こっそり文を届けてくれ。投降した場合の条件を書いてある。戦闘が始まった後、混乱の隙に動けるなら動け、と」

「……相手の内部を割るのか」

「争う必要がなければ、争わなくていい。そういうことだ」


ラウルが頷いた。

「わかった。やってみる」


三週間の準備期間中、ミア様の動きは俺の想定を超えていた。


310名分の食料・装備・薬品の調達を、ミア様が一人で仕切った。


複数の商人と同時に交渉し、最安値で品質の高い物資を確保した。

支度金の使途を1枚1枚記録し、毎晩俺に報告してきた。


「今日の残高は3200枚。明後日までに追加で800枚の装備費が出るわ。今週末に補給の第二便が来るから、その前に倉庫の整理が必要だよ」


淀みなく笑顔だった。

しかし数字は正確だった。


俺は一度だけ聞いた。

「補給の計算は、どこで学んだ?」


ミア様が少し首を傾げた。

「父様から…先の大戦のとき、補給が切れた部隊から崩れていったって。それでよ…」


先の大戦

最高司令長官

その娘が、幼い頃から戦場の補給論を学んでいた。


「えへへ、役に立てた?」

「非常に役立っている」


ミア様が跳び上がるように喜んだ。

「やったー! また何か手伝えることあったら言って!!」

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