玄狼衆の朝
翌朝、玄狼衆の集会室に全員が集まった。
新入り三年生の十名が、壁際に並んでいた。
ラウル、クルト、ヴィクター、エリカ、ニコラス…
俺、エド、マルティン、ヴォルフガング…
そして、ミア様。
昨日まで公式序列二十位最下位だった名前が、今日から別の重さを持って、同級生たちの心を落ち着かせない。
ミア様が、隣のカタリナに小声で話しかけていた。
「カタリナちゃん、よろしくね! 私ね、剣術があんまり得意じゃないんだけど、教えてもらえる?」
カタリナが固まっていた。
昨日のあの目を見ていなければ、俺も同じ顔をしていたかもしれない。
ラウルが俺の横に来た。
「なあ……ミア殿下、でいいのか?」
「令嬢だ。殿下ではない。ミア様でいい…」
その瞬間、ミア様が振り向いた。
「え! ラウル君、私のこと話してた? ミアって呼んで! 様はなしで!」
ラウルが俺を見た。俺は小さく首を振った。
難しく考えても仕方がない相手だ。
シオン兄上が入ってきた。
室内が、一瞬で静まった。
ミア様だけが小声で「あ、兄様だ」と言っていたが、誰も反応できなかった。
シオン兄上は全員を一度だけ見渡した。
温度のない目が、室内を通過した。ミア様にも同じ温度で通過した。
「三日で動けるようにしろ…」
それだけだった。上級生が頷いた。
シオン兄上は部屋を出た。
扉が閉まった後、ミア様が小声で「かっこいい……」と言っていた。
俺たちは呆れ返るしか他なかった…
見た目と行動は、相変わらずの天然である。




