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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
富国強兵

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201/202

大会という名の罠 賢き者③ 残る者

皆様の温かいご支援のおかげで、201話とならました。


気がつくとあっという間…

文才のない私が、ここまで好き勝手に書いて、収集つかなくなって、書き溜めてた物も吐き出して、ペースは随分と落ちておりますが、ここまで来れました。


物語は中盤を過ぎてるであろうと思っておりますが…


どうなるかは…


書いてる本人もわかっておりません…


引き続き、宜しくお願い致します。


全ての皆様に感謝を…


ひょっとことことこ でした!

 1問目が終わる。採点官が静かに点数を記録している。アークとヨークは互いを見ない。盤上だけを見ている。


 レーンが「2問目です」と言う。


「緒戦において赤軍は黒軍方の前線にある砦を次々と攻略し、連戦連勝を続けている。この勝利の連続が軍全体に2つ目の慢心を生み出している。この状況で赤軍が完全勝利するためにさらに何をすべきか示せ」


 アークが口を開こうとした瞬間、ヨークが「少し待て」と言う。


 全員がヨークを見る。


「問いに答える前に…、 一つ確認したい」とヨークが言う。「黒軍は本当に負け続けておるのか?」


「どういうことですか?」と採点官が言う。


「連戦連勝とあるが…」とヨークが言う。

「黒軍が意図的に負けておる可能性はないか?砦を捨てながら…、赤軍を奥へ奥へと誘い込んでおるのではないか。補給線が伸び切って身動きが取れなくなったところで、一気に本陣を狙うつもりではないか?わしにはそう見えるし、わしが敵ならば考えるが…」


 会場が静まる。


「その根拠は?」と採点官が言う。


「砦を捨てた軍が、なぜ次の砦に逃げ込む?」とヨークが言う。

「普通は退路を守りながら本陣に向かって引くものじゃ。しかし問いの設定では、砦から砦へと引き続けておる…。まるで赤軍を奥に誘導するかのように…。しかも黒軍本陣がどこにあるか…、この問いには書いておらぬ。赤軍は連戦連勝しながら、肝心の本陣がどこにあるかを把握しておらぬのではないか…」


 アークが「……確かに」と言う。

「俺も戦場で見ている。わざと負けて引き込んで、補給線が伸びたところで背後から断る。砦を捨てながら退くのは…、普通の敗走とは動き方が違うからな…」


「連戦連勝しておるということは、前線が進んでおるということじゃ」とヨークが言う。「前線が進めば補給線は伸びる。食料、矢、馬、全てが本陣から遠くなる。今この瞬間に赤軍の補給線がどこまで伸びておるか…。 それが最大の問題じゃ。慢心の問題ではない。罠の中に入っておるかもしれぬという問題じゃ…」


「仮に罠だとすれば、どうすべきですか?」とレーンが言う。


「即時停止じゃな…」とヨークが言う。即答だった。「前進を止めて、斥候を全方位に出す。黒軍本陣の位置を探す。補給線の背後に敵の別動隊がいないかを確認する。奥に誘い込まれておるなら…、前進すればするほど、首を絞められる。止まることが最善手じゃな…」


「しかし、前進を止めれば、今まで築いた勢いが失われませんか?」と採点官が言う。


「勢いと命、どちらが大事か…」とヨークが言う。「勢いに乗って進んだ結果、補給が断たれて全滅した軍を、わしは三つ知っておる。勢いとは麻薬じゃ…。止まれなくなった時点で、慢心より始末が悪い。黒軍はそれを狙っておるのかもしれぬな…」


「前進を止めることを、兵にはどう伝えますか?」とアークが言う。


「正直に伝えることじゃな…」とヨークが言う。「情報収集のために止まると伝える。食料があと何日分か…。矢がどれだけ残っておるか…。馬の状態はどうか…。数字を見た兵は、止まることの意味を理解する、怒鳴る必要も、罰する必要もない。現実が一番の薬じゃ…」


「確認した結果、黒軍が本当に誘い込もうとしていたとすれば?」とレーンが言う。


「罠とわかれば…、逆に使える」とアークが言う。「黒軍は赤軍が奥に来ると思っておる。来ないとわかった時、黒軍は動揺する。動揺した黒軍が動き始めたところを叩く。罠と気づいた者が…、罠を仕掛けた者より強い」


「そういうことじゃな…」とヨークが言う。

「問いは慢心にどう対処するかじゃった。しかし、慢心より先に…、この連勝が本物かどうかを疑うことが、完全勝利への最初の一歩じゃよ…。あんたらは、わし達が合格するまでは、敵か味方かわからいでな…」


 採点官の一人が、「問いの前提を疑うところから入るとは……」と呟く。

レーンが採点官を見る。全員のメモを取る手が…、止まっている。



 「3問目です」とレーンが言う。


「総大将が平定後の王都支配を見据え、本陣で酒宴を開き悠々と休憩を取っている。勝利を確信した総大将の慢心が生まれている。この状況でどう対処するか示せ!」


 アークが「総大将の酒宴を…、武器にする」と言う。


「武器?」と採点官が言う。


「黒軍の斥候は必ず赤軍の様子を見ておる…」とアークが言う。

「総大将が酒宴を開いておるという情報が届けば、黒軍は『赤軍は完全に油断しておる。今が奇襲の好機!』と判断する。その判断を誘い出すために…、 酒宴をもっと大きくする。やるなら徹底的にやるかな…」


「どういうことですか?」と採点官が言う。


「全員が水で酔ったふりをする、王の名前でも出せば総大将とて、この芝居にのってくるであろう」とアークが言う。「総大将も、将も、兵も、全員が水を飲みながら酔っている演技をする。大声を上げる。笑い転げる。どんちゃん騒ぎをする。特に黒軍の斥候が見やすい位置で…、派手にやる。黒軍の斥候が『赤軍は完全に正体を失っている』と報告すれば、黒軍は動く。動いてくれれば、こちらの思う壺だ!」


「しかし、全員が演技をしている間、戦闘の準備ができないのでは?」と採点官が言う。


「表と裏を分けるんだよ…」とアークが言う。「酒宴をやっている部隊と、水面下で迎撃の準備を整えている部隊を分ける。黒軍の斥候が見える場所では酒宴を続ける。斥候が見えない場所では、粛々と決戦の準備を進める。総大将だけは素面のまま全体を指揮する。見た目は完全に油断した軍。しかし実態は……、罠が張られた軍だ」


 ヨークが「更に言えば…」と続ける。

「黒軍の砦にでも、酒を差し入れさせるのじゃ…」


 採点官が「……?酒を?敵に?」と言う。


「そうじゃよ…」とヨークが言う。

「赤軍が余裕の証として、近くの黒軍の砦に酒樽を贈る。勝者が敗者に施しをする…、そういう形にする。黒軍の兵がその酒を受け取れば、守備の緊張が緩む。受け取れなければ、受け取れないという事実が、黒軍の兵の心に引っかかる。どちらに転んでも赤軍に有利じゃ…」


「敵が毒を疑って受け取らない可能性は?」と採点官が言う。


「疑わせることにも意味がある」とヨークが言う。「毒かもしれぬと思いながら、目の前に酒樽が、食料がある。それが黒軍の兵の心を削る。飲みたいのに飲めない。余裕を見せられているのに、何もできない。その焦りと屈辱が…、判断を鈍らせる。戦いは剣だけでするものではないのじゃ」


「酒宴と差し入れを同時に行うことで、黒軍全体の士気を削るということですか?」とレーンが言う。


「加えて…」とアークが言う。

「黒軍が奇襲をかけてきた瞬間、迎撃の陣が既に張られている。酔っているはずの赤軍が、突然整然と動き始める。黒軍の兵の目には、それがどう映るか。奇襲に来たはずが、逆に包囲されておる。その瞬間の黒軍の恐怖が…、戦意を根こそぎ奪うって手筈よ…」


「酒宴で油断を誘い、差し入れで士気を削り、奇襲を罠に変える」とヨークが言う。

「総大将の慢心を対処するどころか、慢心そのものを最大の武器に変えるということじゃ。問いは慢心にどう対処するかじゃった。しかし、わしらの答えは…、慢心を消すのではなく、使い切ることじゃ…。その為なら王命でも王子でも何でも使う…その為に王より戦時においては現場の判断を最優先させるとなってあるはずじゃ」


 採点官たちが黙っている…

 レーンが採点官たちを見る…

 全員のメモを取る手が、…、また止まっている。


「ハルト…」とレーンが小声で言う。


「……はい」とハルトが言う。

「わかっています……ですが、凄いですね」


 2問目から3問目にかけて…、盤上の上で、戦場が全く別の顔を見せ始めている。

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