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転生したら第5王子で兵法(孫子)と法家(韓非子)で、無双王を目指す  作者: ひょっとこ、とことこ
富国強兵

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大会という名の罠 強き者③ 網

 予選2日目。


 俺は中央会場の高台から全体を見渡している。昨日より人の動きが活発だ。残れる者と残れない者の差が、段々と見えてきている。


「今日は何人残るの?」とラウルが聞く。


「各会場4人です。9会場で36人」


「36人!! 多い!!」


「多くはありません」と俺が言う。

「必要な200人からすれば、まだ足りない」


「200人って言うけど…、大変な数だよね」


「だから大会を開いたんです」


 ラウルが「そっか」と言う。なんとなく納得したような顔をしている。



 朝一番の報告が上がってくる。


「北東会場…、ラングリア連合国側の蛮族の血を持つ男が、誰も近づけない状態になっています。昨日から誰とも話しておらず、試合以外では微動だにしないそうです」


「名無しの男に似ていますね…」と俺が言う。


「殿下、もしかしてそういう人が各会場に1人ずついるんじゃないですか?」とエリカが言う。


「かもしれません。だから、より各会場に目を光らせるよう伝えてください」


「東会場…、イーレン公国の斥候と思われる者が、商人に偽装しながら他の参加者から情報を集めています。周囲の参加者に話しかけて、出身地や経歴を聞き出しているようです」


「ヴィクター!」と俺が言う。


「はい…」


「東会場の斥候の動きを全部記録してください。何を聞いているか、誰と話しているか。全部です…」


「なぜですか?」


「向こうが集めた情報が、こちらの情報になります。斥候が何を気にしているかを見れば…、そうすればイーレン公国が何を恐れているかが、わかります」


 ヴィクターが「なるほど…」と言う。すぐに伝令を出す。



 午前の試合が始まった頃のことだ。


 ラウルが会場内をうろうろしている。何をしているのかと思って見ていると…、急に立ち止まる。


「あ!!」とラウルが叫ぶ。


「何ですか?」とエリカが言う。


「あいつ…、斥候っぽくない!? なんか周りをキョロキョロ見てるし、強そうなのに試合よりも人と話してる時間の方が長いし!!」


 会場内の数人が振り返る。その中の一人…、商人風の服を着た男が、一瞬だけ固まる。


「静かにしてください!!」とエリカが言う。小声で…。しかし声が震えている。


「え、ダメだった?」


「当たり前です!! 大声で言うことじゃないです!!」


「でも合ってた?」


「合ってます! だから余計ダメなんです!!」


 俺はその斥候の動きを見ている。男が自然を装って視線を逸らす。しかし、足が少し速くなっている。動揺している証拠だ…。


「ラウル…」と俺が言う。


「なに? 俺まずいことした?」


「いいえ。ありがとうございます」


「え?」


「気づかれたと思った斥候は、慌てて動きます。慌てると…、ボロが出ます。自然に振る舞おうとして、逆に不自然になりますから…」


 ラウルが「俺、役に立った?」と言う。


「はい。結果的に…」


「やった!!」


「次は意図的にやってみますか?」と俺が言う。


「え? どういうこと?」


「怪しいと思った人間に、わざと声をかけてみてください。反応を見たい…」


「俺が囮ってこと!?」とラウルが言う。


「そうです…」


「…なんか雑に使われてる気がするけど」


「大事な仕事です」と俺が言う。


「本当に?」


「本当に…」


「わかった!! やる!!」とラウルが言う。なぜか嬉しそうだ。


 エリカが「殿下…、本当にラウルを使うんですか?」と言う。


「使えるものは全部使います」と俺が言う。


「ラウルが…、可哀想です」


「褒められてる気がするから大丈夫です!!」とラウルが言う。


「褒めてないです…」とエリカが言う。


「褒めて!!」



 ラウルが早速動く。


 会場の端に立っていた別の怪しい男に近づいていく。俺は高台から見ている。


「よ!! どこから来たの!? 強そうだね!! 出身どこ!?」


 その男が「……北の方だ」と言う。答える。ということはこの男は斥候ではなさそうだ。


「北!? ノーザンランド連合国の人?」


「…まあな」


「ブレストの配下の人?」


 男が少し表情を変える。


「なぜそれを?」


「なんとなく!!」


 男が「なんとなく、か」と言う。少し笑う。警戒が薄れている。


 俺は見ている。あの男はブレストが送り込んだ偵察ではなく…、純粋な参加者だ。しかしブレストの名前に反応する。ブレストの配下か、あるいはブレストと何らかの繋がりがある。


「エリカ、あの男を記録してください。ブレストとの繋がりを調べます…」


「…わかりました」


「ラウルは……意外と使えますね」と俺が言う。


「聞こえてます!!」とラウルが叫ぶ。遠くから。



 午後。中央会場で4人を絞る戦いが激しくなってくる。


 名無しの男は淡々と勝ち続けている。相変わらず感情がない…、表情がない…、ただ勝つ。しかし、その動きを俺はずっと静かに見ている。


 見れば見るほど…、わからなくもなる。


 あれは何者なのか…

 どこから来たのか…

 何を失ったのか…


 残り3枠を巡って、他の参加者が激しく戦っている。俺はその全員の動きを見ている。


「この人は本大会で使えます…」と俺が言う。


「理由は?」とエリカが聞く。


「重心の取り方が安定しています。疲れても崩れない。長い戦いに向いています」


「この人は?」


「向かない。瞬発力はありますが、スタミナが切れたら終わりです」と俺が言う。


「この人は?」


「賢き者の部門に回します」と俺が言う。


「え? 強くないですか?」


「強いですが……戦い方が頭脳派です。相手の癖を3手先まで読んで動いています。剣より頭の方が向いています」


 エリカが「殿下は何を見ているんですか?」と言う。


「全員を見ています」と俺が言う。



 夕方。中央会場の4人が決まる。名無しの男含め4名。


「各会場の速報が届いています」とヴィクターが言う。「北部中央会場……ブレスト側の強者が4人全枠を独占しました」


「ブレストが本気を出してきましたね…、あるいは…」と俺が言う。


「どうしますか?」


「招待します。全員」


「本大会で当たりますよ?」


「それは楽しみです」と俺が言う。


 ラウルが「楽しみって言える感覚がもうわからないよ…」と言う。


「そのうちに、慣れます」と俺が言う。


「慣れたくない!!」


 俺は各会場の報告書を見ている。36人の名前が並んでいく。その中に…、様々な国の匂いがする。


 網を張っている。魚が入ってきている。


 あとは…、どう仕分けるかだ。

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