9国会議への準備
目を覚ますと…、天井が見えた。
見慣れた天井、自分の部屋。
侍女が「殿下!!」と叫ぶ。「お目覚めになりましたか、心配致しました…」
「……何日経った?」
「もう3日でございます!!」
「3日か…」と俺が言う。
「……孫武殿と韓非子殿には、感謝しなければ、お陰で体も心も充実している。」
「え?」
「いや、何でもない…」
ミア姉様が飛び込んでくる。が、顔が怖い…
「ルーク!!」
「はい……」
「少し休みなさいと言ったはずですよ…」
「いや、もう休みました。3日間も…」
「……それは休んだのではなく、過労による気絶です。」
「……申し訳ありません」と俺が言う。
ミア姉様が「全く…あなたという子は…」と言う。しかし、その目が少し赤い…
会議まであと2日である。
「倒れている間に、エリカとヴィクターへ命じていただいた様で、ありがとうございます。8カ国のそれぞれの弱点と目的を調べるように動いている様ですね…」
「しっかり手は回しています。さぁもう少し休みなさい、何か食べ物を持たせます」と、侍女にも命じて用意を促した。
その報告が来たのは…昼すぎである。
昼に来たことが不思議で、「なぜ昼に?」と聞くと、ヴィクターの顔が引きつる。
「ミア様からの、『きつ〜い』言いつけです」
「本当に殺されるかと思うほどで……。夜に報告しているのを見つかったら……、私たちは命がありません!」
侍女たちが…、激しく頷く。
「……あ、後でミア姉様には俺からも感謝しておく」と俺が言う。
「どうか殿下からもくれぐれも、お伝え下さい…」とヴィクターが言う。
「本当に俺たちの命のために…」
「この話終わらないので、そろそろ本題に入っていいですか?」とエリカが言う。
「どうぞ…」
「9国それぞれの情報を整理しました…」とエリカが言いながら、地図を広げる。
「まずラングリア連合国── シオン殿下です。北東部の蛮族を取り込んでいますが、まだ基盤が不安定。急いで正式な国家として認めてほしい。それが本音ですね…」
「イーレン公国は?」
「財力は豊富ですが、軍事力がまだまだ弱いです…。商人の国なので当然ですが、軍事的な脅威がある限り、安心して商売ができない…。だから休戦を望んでいます。但し、結局は休戦の条件で有利な立場を取ろうとするはずです…」
「代表のランブルグという男は?」
「劇場型の交渉人です…」とヴィクターが言う。「こういった場では、場の空気を支配することを好む。相手を言葉で追い詰めて、有利な条件を引き出す。商人にありがちな手法ですが…。特に、相手が若いと見ると、舐めてかかる傾向があります…」
「俺が若いので、これは来るだろうな…」
「…、確実に来ます」
「ノーザンランド連合国── ブレストは?」
「第5部族がまだ統一できていません」とエリカが言う。「まだ国が不安定な中で弱い立場。それにも関わらず、本人が来るということは……、何かを狙っている。何かを確認しに来る、あるいは…という可能性もあります」
「聖バルドル神聖国は?」
「会議を主催することで影響力を持とうとしています。どの国にも付かない代わりに、どの国からも一目置かれる立場を狙っている…」
「リンデン公国とホーリーグレイル公国は?」
「2つとも、大国に飲まれたくない。それだけです。休戦が成立するなら賛成するでしょう…」
「ユニティ連合は?」
「イーレン公国と同盟を結んでいます。イーレンの動きに合わせる。良くも悪くも独自の判断はしません…」
「キングマリン海洋連合は?」
「両天秤ですね、あそこは…」とヴィクターが言う。「会議の結果次第で、有利な方に動く。何はともあれ、様子見といったところでしょう…」
俺が地図を見る。9国の思惑が、頭の中で動き始める。
「ありがとう」と俺が言う。「これで…」
「殿下…」とエリカが言う。
「何か、動きますか?」
「情報を制する者は……、世界を制する」と俺が言う。
「……誰の言葉ですか?」とヴィクターが聞く。
「俺の心の師の言葉だ…」
「国王様ですか?」
「……似たようなものだ」と俺が言う。少し笑う。
「殿下、会議で何をするつもりですか?」とエリカが言う。
「まずは、3年間の休戦を取り付ける…、そこが最低条件だ…」
「どうやって?」
「9国全員が……、今すぐ戦いたくない理由を持っているからな…」と俺が言う。「その理由を使う。戦わずして、休戦という形を作る…」
「しかし、おそらくはランブルグが邪魔をしますね…」
「そうだろうな…、わかっている。邪魔をする者が、ある意味一番わかりやすい。何が怖いかを隠してる様で、ふとしたきっかけで、行動や言動に出る、そうなれば建て直せないだろう…」
ヴィクターとエリカが顔を見合わせる。
「殿下」とヴィクターが言う。「今回、勝てますか」
俺が少し考える。
「勝ちを求める者は勝てる」と俺が言う。「しかし正しさを求める者は、長く勝てる。だから俺は、勝ちではなく、正しさを持っていく」
2人が黙る。
「……行こう」と俺が言う。「8カ国が待っている」
2日後。
9国会議が始まる。
会議という戦場で「言葉という名の武器」で、戦争が幕を開ける…




