内側からの影
3日が経った…
ヴィクターがルークの下に戻ってきた。
「絞り込み終わりました…」とヴィクターが言った。ルークの前に立ち、「軍議の夜に動ける立場にいた者です」と告げた。
紙を広げた…
10名ほどの名前がある。
全員が王国軍の内部の者。
将軍クラス、副将、側近…、全員がアルベルトの周辺にいた人間だった…
「この中に、指示を出した者がいます…」とヴィクターが言った。
「そして指示を受けて動いた者が、別にいます…」
「2段構えか…」とルークが言った。
「はい…、指示を出した者が直接手を汚さないための構造ですね、これは組織的な暗殺です…」
ルークがリストを見た…
名前を見る、顔が出てこない名前もある…
アルベルト兄上の側近の名前もある。
「アルベルト兄上の側近が…」
「可能性を排除できません…」とヴィクターが言った。「でも、確証がない。今の段階では、全員が疑いの対象です…」
「側近が動いたとして、誰の命令が有力だ?」とルークが言った。
「それが、まだ見えていません…」とヴィクターが言った。「しかし一つ、言えることがあります…」
「何だ…?」
「今回の暗殺は、ブレストには利益がありません…」
ルークが「続けろ…」と言った。
「ブレストがアルベルト殿下を消しても、北伐が終わるわけではありません。むしろ王国軍が怒りで結束する可能性がある。ブレストほどの男が、そのリスクを取るとは考えにくい…」
「では、王国の内部に、アルベルト兄上を消したい者がいると…」
「はい…」とヴィクターが言った。「それも…、ただ消したいのではなく、混乱を作りたい者です。北伐が中断されれば、王国内部の権力の空白が生まれます。その空白を狙っている者がいる…」
ルークが「そうか…」と言った。
「殿下…」とヴィクターが言った。「それともう一つ…」
「言ってくれ…」
「シオン殿下の軍の動きと、暗殺のタイミングが…、重なっています…」
ルークが「重なっている、とは?」と言った。
「シオン殿下が本陣から離れた日と、暗殺が行われた夜が…、同じです。偶然という可能性もあります。ですが、無視できない一致です…」
「シオン兄様が指示を出したと…」
「それは断言はできません…」とヴィクターが言った。「ですが、証拠がありません。しかし、タイミングと、シオン殿下が北伐でアルベルト殿下と常に緊張関係にあったことを考えれば、排除できない可能性です…」
ルークが「……わかった」と言った。
「引き続き調べてくれ。特に…、指示を出した者の特定を急いでくれ、頼む…」
「承知しました…」
「エリカは?」
「引き続き現地を調べています。もう少し時間をください…」
「頼んだ」とルークが言った。
ヴィクターが下がった後、ルークが1人で地図を見ていた。
北伐の戦線、アルベルトが落ちた高台、シオンの軍が消えた方向…
全部が、繋がっているようにも見える。
全部が、関係ないようにも見える。
「兄上は、誰かに殺された…」とルークは呟いた。誰にでもなく。「俺の兄上が…、俺と話した兄上が… 死ぬな、命令だと言った兄上が…」
手がきつく握られた…
「絶対に必ず突き止める…」
静かに言った…
怒りではなかった…
でも、揺れなかった…
バロックの天幕からエドに算術を教える声が聞こえてくる。
その声を聞きながら、ルークは地図を見続けた。
「疑いは証拠なく、証拠は疑いとともに動く……」
ーー韓非子ーー
疑いだけでは動けない。
証拠だけでも足りない。
ルークが地図を見ていた。
答えはまだない。
しかし、動き続けるしかなかった。




