↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物資源活用機構  作者: Ichen
前舞台開始
3208/3222

3208. フーレソロ実現・魔導士とヤロペウクの仕事・焦げた太陽・ソドの協力・ 獅子『サブパメントゥの宝』を

☆前回までの流れ

三つの供物を受け取ったメーヴェは、とうとう『黒い呑みこむ扉』の問答に挑戦しました。意志を確認する問に対し、返答の用意もなかったメーヴェ。しかし天啓のような上手い答えがツラツラ。扉はついに開きました。複雑な諦めを受け入れる霊のリオラヌを連れて・・・

今回は、扉の続きです。

※今日、投稿しましたが、次回はまた一日二日あけます。申し訳ないのですがよろしくお願いいたします。

 

 黒い扉が、完全に開いた時―――



 メーヴェは『有難うございました』と扉に礼を告げ、他の者を率いるよう指示を受けて、階下にいる全員を床へ上げると、解放された黒い扉の前に立った。


 合格した。通過した。許可を得た。なんとでも表現は出来る、奇跡の瞬間・・・!不安や恐れがないわけではなくても、『自分たちが伝説の扉を通過する』ことに誰もが昂る。

 全員がこの世界の人間だが、中にいる『念』たちは以前の世界へ戻れる確信で、運び手の肉体も興奮を共有する。


 元々『念』がついてもいない、ただ『悪人側』の人間として死んだ魔法使いは、こいつらを冷めた目で見て・・・


 一度だけ振り返った、霊のリオラヌ。

 最後に、雷が打った炎を見られたのは餞(・)別(・)かと思いながら、メーヴェの後ろについて進む。


 真っ黒な大きな扉の横を、黒縁の扉枠以外が眩い白に輝く先へ。一人、また一人と、光へ消えてゆく神殿の舞台。それはこの世界の一区切りと言えるくらい、大勢の『念憑き』を送り出す場面で―――



 上から見ていた緋色の魔導士は、消え始めた神殿を横目に、緋色の衣を翻す。


 回収した『念憑き』を、この時に放した。ヨライデだけで相当な数がいたが、嵐の浜に放り出された数は、自分とラファルが集めた以上。それこそ、どこぞの軍隊くらいが・・・・・


「一国の軍、ってところだな。『念』は相当ばらまかれたのは知っていたものの(※2835話参照)。残るは善人か。だがそれも」


 独り言を引っ込め、仕事の完了を確認した魔導士は、ラファルの待つ家に戻る。

 あの数は、別(・)の(・)誰(・)か(・)による回収である。その『誰か』は、大方見当が付いていた。世界中を回って集めておくなど、誰でも出来ることではない―――



 魔導士に気づかれない距離で、多くの『念』を世界中から集めた『誰か』も見届けた。


 ヤロペウクは、念憑きを全て連れ出した光景を眺め、取り掛かった時を思い返す(※2861話参照)。大雑把な展開で、大まかな片付け方は、箒でゴミを戸口の外に掃き出すのと同じように見えた。ヤロペウクもまた魔導士同様、思うところはあってもそれに難癖付けるでもなく、雲間に消える。



 メーヴェが見た人数は一部で、メーヴェが扉を潜った以降、ぞろぞろと湧いて出た輩が続き、神殿の黒い扉は参(・)列(・)者(・)を一人として余すことなく、『異世界』へ引きこみ、閉じた。


 音も立てずに、扉が閉じた後。光も道も消え失せ、嵐の荒れを戻した海に、黒い球体の靄が浮かぶ。


 ティヤー創世神話の、古い存在が。


 ―――【黒い星だけは、世界の玉を混ぜなかった。世界の玉に手を入れて、『あぶれたものをこの手が掴む』と言った。色が抱えきれない零れたものは、黒い星の元へ行くようになった】(※2597話参照)


【遥か前に沈んだ島の話。島の成り立ちの頃、焦がした身で世界を支える役に加わり、大地の澱(よどみ)を引き受け、今も余るものを吸い込み続けている】(※2811話参照)―――



 あぶれたものを。色が抱えきれない零れたものを。今も、余るものを吸い込んで。


 創世の一人、黒く焦げた太陽もまた、これを以て一区切りとする。次は、『ニダの声』が届かなかった者たちを排出する時。


 だがこれは、取りこぼしても大して後に影響しない、灰(・)色(・)の(・)者(・)た(・)ち(・)であり、灰色の者たちを世の外へ排出しても、人間という種族がいる以上、灰色に染まる人間は常にあると、焦げた太陽は理解している。大きな変移に必要であれ、一過性に過ぎない排出でしかないのを。



 *****



 その焦げた太陽が、知(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)か(・)どうか。



 最後まで付き合う気はなかった『極北のソド』だが、卓子の表面に張った薄氷から目を上げる。ヨライデの海の一部を映した薄氷は、ソドの興味が失せたところでただの水に戻った。


「メーヴェは、どこへ流れ着くだろう」


 ぽそりと呟いた祈祷師は、黒い扉と占術師のやり取りに協(・)力(・)し(・)て(・)や(・)っ(・)た(・)具合。禁は犯していない範囲で、誰に咎められるものでもない。



 本当は、『メーヴェが供物を受け取るまで』で、協力は済んでいたのだが―――


 女龍は心臓に手を付けたし、仲間の連携で『心臓を外(※異世界)へ出す』行為も完全に果たした。この後、親(※『原初の悪』)が連れ去ったようだから、私も手を引いて良かったのだけれど、メーヴェの中の『念』は消えてしまった。


「一人では・・・心細いもの」


 あの女に憑いた『念』は、サブパメントゥの力に呆気なく捻じ伏せられた。意識を操る種族相手に、『念』しか持たない存在は耐えられない。


『念』と二人三脚なら生き残れる世界へ、旅立ったメーヴェ。行った先で勝手が利くとは思えないが、あれだけ大勢の友がいれば何とかなるか。それとも、友は裏切り、呆気なく潰えるのか。それもまた、運の采配。


「異世界行き(橋渡し)は私の仕事ではないが、『心臓』が持ち出されたら完璧なのだし。私の協力もまた、世界の動きの一つ」


 含みの多い呟きを落として、氷河の祈祷師は次の出番まで静まる。次は、この存在を賭ける時。



 紫色の目が、壁に埋まる凍った男を眺め、いつ出そうと考える。私が動く時、この者を放さないと・・・ 変化するサブパメントゥに合わせて、怨(・)霊(・)も処分されるなら良いのだが。


「父が、この男を忘れているようで何よりだ。彼にしがみつく怨霊を解き放ったら、天地の諍いは混乱しかねない」


 あの時、ドゥージを引き取って、混乱の先走りを止めた。『原初の悪(父)』の性質は混乱を許されるものの、あまりに早過ぎる手の付け方は、私に疑問だったから。


 ドゥージの怨霊が、サブパメントゥの挑戦に加勢したら、空まで行くかも知れない。


 龍族は既に、空を統一する存在(※龍王)を用意した。あの大きな龍が、空に手をかけるサブパメントゥを打ち落とすなど造作もないだろうが、中間の地も破壊は免れない。だが、今なら、時が来たと思えるにせよ。


 氷漬けにしなければ、父に使われたかもしれない男を見つめる。

 あの時分(アイエラダハッド)で、龍族と空の一族が鉄槌を下したとすれば、何もかも予測を覆すことになった。多くを消し去る権利を持つ空に、箍を外させてはいけないのだ。待つだけ待った、私の続きも狂ってしまう―――



「ここで私の親に忘れられたのは、運が残っていたか。巻(・)き(・)込(・)ん(・)だ(・)の(・)は(・)私(・)だが、少しはマシな扱いをしたつもりだよ」


 ドゥージを怨霊背負いにあてがったことを(※2380話最後参照)、若干詫びた自分に、ソドは小首を傾げ『これも変化かな』と自分に頷く。


 あの若者が。人間とサブパメントゥの合間の彼が、泣いて探した男は、ここで時を待たせた(※2401話参照)。


「ロゼール・リビジェスカヤ。私との約束は、破られることがない」


 サブパメントゥと、その怨霊が同じ括りであれば、サブパメントゥの片付け時に怨霊も消されるが、そうでなければ男の重荷は、手つかずかもしれない。


 ソドの手が、氷漬けの男に触れる。男を包む冷たい面に指を滑らせ、凍結したドゥージの行く末に『運を祈ろう』と人間じみた励ましを掛けた。


「私(・)が(・)祈るのも可笑しいけれど」


 フフッと笑ったソドは、手を離して壁を離れる。以前の世界で、悪魔と呼ばれ続けた私が。何に祈れというのだろう。


「ロゼール・・・あの日に約束したのだから、君の友達は君に返すつもりだ。ただ、世界のサイコロが吉と出るか凶と出るか。そこまでは、いかに私であっても手が付けられない」



 *****



 アスクンス・タイネレがヨライデ沖に近づき、

 イーアンは『原初の悪』に囚われ、

 ドルドレンはオリチェルザムの対決へ挑み、

 北東地下迷宮からタンクラッドたちが出発し、 

 ファタス島でフォラヴが倒れ、

 三つの供物は黒い扉を抜け、『念憑き』が全て出て行った後―――


 コルステインはテイワグナから、まだ戻らず・・・


 獅子は供物を女に渡した後、急いで向かった先はティヤーの海だった。



「コルステイン。万が一を考えたお前の頼みは、い(・)い(・)と(・)こ(・)ろ(・)を突いているかもな(※3181話参照)」


 ティヤー、南の治癒場の島。

 あの島の下に、サブパメントゥの宝がある(※2654話参照)。あれを使った武器で、ルオロフは残党サブパメントゥを切った。


「精霊も、他に隠していた。俺はどうとも思わんが、ルオロフが切った話を聞く限りでは、サブパメントゥ相手に使(・)え(・)る(・)素材だったんだろう」


 なぜ、そんなものが在るのか。なぜ、あんなものが大層な効力を。


 考えてもどこに答えがあるもので無し、獅子は着いた先で人の姿に変わり、治癒場の下を通って黒いドロドロの物質が沸く穴倉で、持ち前の箱にこれを入れ始めた。


 底無しに入る箱は、開放する場所の方を選ばないとならない。使うなら確実に、『空取り』が始まった時。下手すると仲間に影響が・・・ 諸刃の剣で、馬鹿を見るのは性に合わない。


「残党に、ぶ(・)ち(・)ま(・)け(・)る(・)まで」


 ただ、残党サブパメントゥが出てきた側から、ばらまくのは違う。どうにもならないと見定めた時にこそ。


「俺もどうなるやらだ。ルオロフの剣を咥えても何ともなかったが、『元』を浴びると終わりそうだな」


 そうは言っても、俺は残るはず。だが、確実でもない。残る道を進んでいるにしたって、最後の最後まで疑っておくべき世界。


 もしも、何かあれば。ちらっと、右腕の狼歩面を見る。最期はエサイに頼もうと決めた。こいつもどうなるか知れないが、異世界(よそ)から来た奴は可能性がある。


 ふーっと息を吐いて、箱に延々と入る物体を覗く。まだまだ、ぶ(・)ち(・)ま(・)け(・)る(・)には足りない。早くしろと、流動体の勢いを急かしながら、ヨーマイテスは次にサブパメントゥの未来を考えた。



 心配は勿論、息子の現状だが。サブパメントゥとして、果たす義務は完了させねばならない。そうしないと―――


「バニザット。お前のために、これを済ませる。完了させない内は、再会も不安定だろう。そして、もたついていたら全部が終わっちまう」


 俺は、種族の柵(しがらみ)からさえも、放免されなければならない。お前と生きるためには、許された存在を確立する必要がある。


「この奥の手が、どう働くかだな。サブパメントゥの愚行を止めりゃいいが」


 どっちにしろ裁かれる。止まらなかろうが、停止しようが、やられる時はやられるのだ。それでも『終了』を告げられるまで、抗う心を示す意味がある。


 満ちない箱に注がれる、サブパメントゥのおかしな宝。碧の目は視線を固定し、何だってこ(・)ん(・)な(・)も(・)の(・)があるのやらと・・・ 待つ時間に、創世の仕組みを想う。




 ・・・人間の支えになるように。

 遠い過去に嘆いた、サブパメントゥの頂点が、異界の精霊ヂクチホスへ渡したことも。

 繰り返す創世のやり直しの度、サブパメントゥに殺される人間を哀れみ、人間を愛したサブパメントゥのことも(※2683話参照)。

 どうにもならなかったら、これを使ってサブパメントゥを壊し、民を幸せにしてほしいと、真逆の願いを添えたコルステインの親のことなど、ヨーマイテスが知る由なく。




「早くバニザットを助けに行かないと」


 これが済んだら、あの時空へ。一刻も早く手伝いに行きたい。老魔導士なら放っておいても気にならないが、バニザット(※息子)はそう思えない。少しでも傷を負うようなことになっては。


「ちっ、早くしろよ」


 この黒いの!と悪態をついた―― 少し後。


 止め処なく入る箱の中身を確認したヨーマイテスは『これでいいか』と蓋を閉じ、大急ぎでこの場所を後にすると、箱を隠して獅子に変わった。


「待ってろよ、まだ何も起きていないといいが」


 異時空移動を、生まれついて許された獅子。走りに走って、ヨライデ城地下に繋がった、魔界の荒野へ飛び込んだ。


「俺と、コルステインくらいだ。こんな形で参戦を許されるのは・・・二度目(以前)はズィーリーも別の道から入った(※洞窟の舟)が、イーアンは舟じゃなくても入れるのか?イーアンはまだ」


 魔界の荒野のどこへ出たか。茫漠な世界を走りながら、大きな気の揺れがする方を目指し、獅子はイーアンがどうなったかを考える。『原初の悪』に捕まったままか。もしあいつが来なければ、コルステインでも・・・ 種族の頂点か、俺のような特殊能力ならこの場所へ入れる。


「イーアンが来ない状況で、コルステインも来ないとなると、ちょっとな」


 前は、コルステインも後から参加した。あいつは舟に乗る立場ではなかったから。そして俺も、自在に動けるから別で向かった。

 今回もその流れになると・・・『思いたいもんだ』ぼそりと呟く獅子は、妖精の雷が炸裂した空を見て、速度を上げる。



「賭けか。コルステインはもう、残党を追(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)時間だろ?サブパメントゥ(地下)に残党の気配はなかった。地上に感じた気配は、これまでと違う感覚だった。あいつらはもう、『試合の控え』に入ったかもしれん」


 独り言は終わる。魔物が見えた地上に、口を大きく開けた獅子は、見える範囲を塵に変えた。走りながら、出てくる魔物を片っ端から吼えて落とし、空に逃げる魔物を、獅子の風が食らい尽くす。


 コルステインがもし、来ないとしたら。それは――


 嫌なことを想像する。俺はここにいる分、引っ張り出されるまでに時間が掛かるかも知れないし、もしかすると引(・)っ(・)張(・)り(・)出(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)かもしれないが。


 コルステインが、万が一、あ(・)い(・)つ(・)ら(・)側についたら。



お読みいただき有難うございます。

出来るだけ早く連続投稿に戻りたいのですが、なかなかまとまらずに苦戦しておりまして、またお休みします。最終章は期間を長く見ています。分かりにくくならないよう努力するので、どうぞよろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。