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魔物資源活用機構  作者: Ichen
三つの供物
3056/3093

3056. 7日間中 ~地下道調べと『念』のいた部屋

※急で申し訳ありませんが、3月5日から投稿をお休みします。意識が途切れて長い文章を書けず、読み直しも進まなくなっているため、回復まで数日休むかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 あの音―――


 明け方の振動の正体を知るまで。




 地下道行の組み合わせが決まった後、イーアンはミレイオが気になっていたことを訊き、何を調べてほしいか・何が怪しいかを詳しく理解した。


 ミレイオの調べてほしいところは、地下道の繋がり。

 100までの区で分けられているが、抜け道がいくつかある印象で、変に詰まっている個所や、壁があっても区が混じっている地図や、疑問が消えない。


 地下道は、短縮が可能かもしれないこと。これが他の悪人の巣に、便利な道かもしれないこと。


 余談で、昔話も参考に付く。

 ヘズロンの都は海がない。陸移動しか使えない環境だが、昔この都含む周辺が、戦争の要であった事実もある。

 もっと東へ行くと山脈の端に入るのだが、低い山を抜けるとテイワグナに出る。テイワグナ侵攻を何度も行ったヨライデの兵は、このヘズロンからも出兵していた。

 武器の産地であり、他に攻められた時代でも、ヘズロンが落ちたことは歴史上、一度もなかった。


 地下道も古代から支えていた一つとしたら、『呼びかけの室』で応援は呼べるわ、『地下道の迷路隠れ』で敵は巻けるわ、逃げ切れるわで・・・ 


 話を戻したミレイオは、ヘズロンを拠点にする悪党がいても何ら不思議ではない、とイーアンに言いたかった。どこか一ヵ所を叩いても、他がまだ残っている、とか。


『それとさ。ヘズロンの()()、発信する遺跡なんでしょ?ここを動かない連中がいても、変じゃなくない?』


 同意するイーアンは、出来る限り調べることと、悪党がいたら()()()()ことを約束した。



 *****



 地図と資料はレムネアクが読むので、資料は重いから置いていくが、地図は持参。


 そこそこ大きめの地図だが、全部重ねて丸め、一枚革を巻いて両端を縛り、イーアンはこれをたすき掛けして預かる。私の背中から奪えるやつはいないと言うと、お供ら(※ルオロフロゼールレムネアク)も大きく頷いた。



 そうして出発後。まずはミレイオがチェックした地図の、手前寄りから調べる。町の地下だから、物凄い広さを覚悟して・・・


 馬車から近かったのは、『5の水』と地図にある区。


 資料本には、ご丁寧に()()()()()()も載っていたので、レムネアクが住所を探して、広場から一つ先の路地へ行ったところ、店と店の間・・・普通の路地になぜか添うような造りで渡り廊下があった。


 一見、無意味そうな渡り廊下だが、先まで行くと廊下の(かど)に、80㎝四方くらいの板が貼られていた。引き穴は指が入る程度で、指を引っ掛けて板を外したら、そこに地下への道が現れる。


「不自然すぎますが、こういうものなのかな」


 呟いたルオロフが『目立つのに』と首を傾げる。でも大昔からあるなら、町の人間には不自然もないのか。


「こんなのが、町中にあるって・・・ 」


 ぼそっと呟いたロゼールが先に入ろうとして、イーアンが止める。『私が前に』と先頭を引き受けた女龍に、他は続く。

 階段を下りて、角の明かりで方向を確認。ルオロフが『神秘的』と褒め、ロゼールは『便利』と呼んだ。


「イーアン、光るんですもんね」


「私も人生で光ったことなかったので、龍になって最初は驚きましたが、もう慣れた」


 真面目に答える女龍にレムネアクがちょっと笑い、咳払いされて『こっちへ』と行き先を指差す。


 とりあえず、ミレイオのチェックした『5の水から→抜け道の可能性』地点へ移動。

 町の人間は普段入らないようで、簡単に外せた戸ではあれ、ここに人が入った感じは全く無かった。


「迷うから、誰も入らないのでしょうか?」


 この前、入った地下道は悪党が出入りしていただろうが、普段は?とルオロフ。


 地下道の幅は三人並べるくらいの幅。でも天井は高くなく、窓があるわけでもなし、空気は澱む。

 巨大な地下道で空気が切れないにせよ、決して新鮮な空気ではないし、長居して良いことはないだろうと・・・ルオロフの疑問に、イーアンは答えた。



 本当に、地下道――― 下水道や、他の目的で造られていない。町の地下にこんなに広がって、陥没もせずに持ち応えているとは、それも驚く。


 地震がない国だとしても、魔物騒動が生じた歴史で、少なくとも大地震級の被害はあったと思うが・・・ それでも崩れない地下の建築はすさまじい技術だと、イーアンはここを造ったヨライデ人に驚嘆する。



「あ、これじゃないですか。あっさり見つけたけど、ほら」


 かまぼこ型の通路の足元、壁の下部に煉瓦一個分抜けた凹みが点々と、目印のように続くのを、ロゼールが発見。


 この凹み、資料ではマークと一緒に『非常口へ』と書かれていた。地図には、マークは付いていても道の存在が描かれていないので、これが短縮道だろう、とミレイオは踏んでいた。

 先へ進むと、右側の壁が一ヵ所、ボコッと奥まっていた。幅1m×丈1m分、壁が沈んだ具合。


「ここが、抜け道ですか」


「ルオロフ、どいて下さい。外してみましょう」


 通路壁から奥行き50㎝ほどの沈み方で、そこだけ煉瓦の積み方が粗い。よく見ると、目地埋めしておらず、煉瓦が取れるようになっていた。

 取って、また積んで隠す。解りやすいといえば解りやすい抜け道の入り口だが、この暗さで気づくかどうか。ここにある、と知っていればこそにも思う。


 イーアンは煉瓦を引き抜き、慎重に脇に積む。煉瓦自体は一つが人の頭くらいの大きさで、男三人は手伝いたかったものの、女龍がせっせと無言で外すのを邪魔はしなかった。


「働き者ですよね、イーアン」


「ロゼール、あなたを抱えられる龍が、()()()()()で手伝いを頼みますか?」


「イーアンはいつでも俺たちに、ついて来いと背中を見せてくれます」


 ハハッと笑ったイーアンは、外した続きを覗き込んで振り返る。『行きましょう』と抜け道へ入って、皆で非常通路を体験。


 他の通路よりもずっと狭いので、腰をかがめる姿勢で進まなければならず、苦痛だった。そして、息苦しさ・精神的な閉塞感も感じた。


 結構な長さの一本道は、乾いた煉瓦を歩くだけで、緩く舞う埃が充満し、徒歩の起こす風に付いてくる。

 ロゼールが何度も咳き込み、気にしたルオロフもゲホッと。レムネアクは今回反応薄く、赤毛の二人を心配し、先頭のイーアンも気になって・・・尻尾、登場。


 抜け道は、一人分がギリギリの幅。場所交代も難しい狭さで、先頭のイーアンは埃が来ない位置で申し訳なく思い、『これ、口に当てて』と赤毛二人に、尾を使えと。ふさふさッと白い輝く尾がゆったり伸びてきて、ロゼールとルオロフは手で引き寄せる。


「龍気で呼吸がしやすいはずです。口と鼻に押し当てて」


「地下でも龍は偉大だ」


 一々、ロゼールが可笑しくて、イーアンはちょっと笑い『頑張って』と励ました。会釈したルオロフに微笑み、また進む。イーアンの後ろのレムネアクは、自分も尻尾に触れたかったが、ここは我慢した(※気管支が無事)。


 歩くこと、十数分。どこへ出るかと思いきや、直進の行き止まりは、また煉瓦を外す作業必須。イーアンは急いで煉瓦を外し、続く三人を出す。そこはまた地下通路で、煉瓦を戻してから、地上出口を目指して歩いた。


 非常通路の距離は1㎞ちょっとの体感で、非常通路後の地下道は300mくらい。直進するだけの壁際に、地上行の階段を見つけて上がり、閉じた嵌め戸を取る。ようやく外へ出たそこは、出発から五つ先の区だった。まともに地下道を進んだら、右往左往で倍以上の時間を使う。


 これはミレイオが予測を付けた場所。『当たった、さすが』とイーアンは、ミレイオの嗅覚に心で拍手。



「わぁ・・・家と家の間ですよ。四軒の家に囲まれている」


 板を外して出てきたところは、四軒の接点の中庭風。入ろうと思えば入れそうな地下道だが、使う意味もないのか。すぐそこに入り口があっても、戸の付近は枯れ葉が溜まっていた。


「こうやって逃げるのね」


 くるっと見渡し、確認したイーアンは、また地下道へ戻る。三人も続き、今度は初っ端から、イーアンが尻尾を渡す。


「確認は出来ました。ミレイオの想像通りです。ここからは、地下道も抜け道も無視して進みますので、私の尾に掴まっていて下さい。決して離してはいけません」


「どうするんですか」


 ルオロフは白い尾に手を絡めて、撫でながら聞く。掴まって離すなと言うなら、離す気はないが(※尻尾気持ち良い)、『決して離すな』とは不穏を含む。イーアンは壁に手を付け、スー・・・と、手が壁の中に沈むのを見せた。三人、凝視。手首から先が壁に入ってしまった女龍に、まさか、と慄く。



「次の目的地は、あなたたちが倒した輩の部屋です。壁にあった文字が、まだ残っているのか。それから、その部屋の隠し通路も調べますよ。()()()()()()しますので、私の尾から手を離したら、どこに()()()()()しれませんため、どうぞ離れないで」


「絶対に離しません」


 誰より先に答えたレムネアクに、イーアンは軽く頷く。お前が言うと別の意味に聞こえると思いつつ、物質置換でお供を連れた女龍は、煉瓦の壁へ足を踏み入れた。



 こっから本番――― イーアンはそのつもりだった。


 馬車から近い『隠し通路』を確かめて、本当に抜け道として利用できるなら、悪人が屯していたその部屋も、通路繋がりで安全な場所・もしくは味方に通じるところへ出るだろう。


 もういないかもしれない・・・ でも、証拠の一つ二つあれば、次はある。


 イソロピアモが関わった、ヘズロンの都。足取りでも何でも、情報は持っておきたい。あいつに三つの供物を持たせるのだから。

 『念』憑きは、イソロピアモの命令、もしくは彼自身の到着を待っていたとも思える。だとすれば、何かしらは、あるはず。


 そして、イーアン的には、もう一つ。皆に話していない懸念があった。

 朝の振動・・・ バロタータは、ちっとも気にしていなかったけれど。


 あの大樹。あの日消した、異常な巨木の意味を考えていた。なぜ、あれほど目立つものを出したのか。


 大樹からの攻撃もなかったそうで、遺跡が壊れたに過ぎない。目的が、『遺跡を壊す気ではなく』なら?


「根っこは・・・木の枝ぶりと同じくらい、広がるとか」


 すり抜ける煉瓦の層で、ぼそりと呟いた女龍は、今朝の振動が、巨木の根の齎した仕掛けでは?と考える。


 振動のあった方角は、この先――― 



 *****



 自分と一緒になら、物質置換が使える・・・でも、あんまり積極的には使わない方法ではある。


 時折、後ろを振り返って三人の様子を確認し、イーアンは『37の区』へ向かう。龍気も使う技だから、そう長いこと使う気になれないものの。でもこの手段が合っている、と判断したのは。



「こうやって移動しているのは、イーアン、あなたはもしや」


 不意にルオロフが尋ね、『はい』と肩越し振り返る。白い尻尾で繋がる三人の真ん中がルオロフで、赤毛の貴族は質問した。


「地上から37の区へ入るのを、危険と思ってのことですか?」


「ええ。誰が見ているか分からないでしょう?誰もいない確証はありません」


「鉢合わせるなら、急にという感じですね」


 イーアンの後ろを歩くレムネアクが補足し、女龍は頷く。直で行っちまった方が良いだろう、と(素)・・・ 丁寧に、問題の現場付近の出入り口を使ってバレるなど、そんな無駄は選びたくない。


 人の目がないなら、まだ。そう言い切れない複雑な地下迷路。それなら、壁をすり抜けて出くわす方が、一触即発で逃がすこともないのだ。


「今日、もしもまた別の奴らが屯していたら」


 ぼそっと呟いた僧兵の声は、イーアンの背中にしか届かず、イーアンは振り向かないまま『私が殺す』と答えた。尻尾を握る僧兵の手が、少しだけ力を緩め、女龍は『放しなさんな』と注意して・・・ 『ここだ』とレムネアクが、すぐに告げた。


 壁を抜けては通路、その繰り返しで移動し、あの部屋の横の通路に立つ。ルオロフたちも『ここです』と女龍を止め、三人は同じ方へ顔を向けた。


「あっちです、左側に」


「あれか。近くまで来れて良かった。行きましょう」


 うまい具合に、そう遠くない地点に出たイーアンは、通路に出てから尻尾をしまい、お礼を言われながら問題の現場をちらっと見る。


「行きたくない人、ここにいて」


「あなたと一緒に」 「足手まといになりませんので」 「行かないってことはないですよ、行きたいわけでもないけど」


 最後のロゼールの正直にイーアンは笑い、『素直でよろしい』と褒めて四人揃って通路を進んだ。明かりと言えばイーアンの角の光だけ。この前は、悪党の部屋から零れる明かりがあったけれど、さすがに今はない。暗い通路には、反射する龍の光が渡る。


「臭いますね」


 ルオロフの一言は、現場近く。イーアンも鼻をつく腐敗臭に頷いて、扉の開く部屋の前で止まった。なるほど。惨劇ね、と腐る死体を認めた。


 何ともないイーアンの横顔に、レムネアクは『私が』と少し申し訳なさそうに言い、イーアンは『お疲れ様』とだけ言っておいた。実際に彼が斬った人数は10人そこらのようで、後は死霊が片付けたらしいが、この気温で放っておいたら、腐るのは早い。部屋の中は、ハエやらアブやらの羽音で煩く、どこから入ってきたんだかと・・・ それはさておき。


 戸口を一度覗いて後ろに下がった赤毛二人に、『ここにいて下さい』とイーアンはお願いする。レムネアクと目が合ったが、『あんたもね』と待たせることにする。壁の文字は、レムネアクに読めない。


 女龍は独り、死体を食べる虫だらけの部屋に、翼二枚を出して入る。取りあえず、死体を調べる気はないため、先に消すことにした。ハエも一緒に。


 白い龍の頭が部屋をぐるりと振り向くや、積まれた死体も飛び回る騒音の虫も消え、ものの数秒で部屋は血の跡だけに変わる。壊れた武器や家具はそのままだが、肉を持つ死体と昆虫はいなくなる。


 虫も消して良かったのかしら、と思いつつ(※生態系)心で謝ったイーアンは、左側の壁に目を止めた。


()()()読めないか」


 書かれているのは、英語ではない。この文字は。


「都合よく、毎回英語ってわけないものね。言葉が全然違う場合もあるのよね」


 壁に遺った見慣れない文字を見つめ、イーアンは首を傾げる。こうなると厄介なので、まずは魔導士プリンター(?)に頼んでみようと考えた。


「あの人だったら、印刷のように写し取れる」


 壁の字が放置されていたのは助かった。血は飛んでいるので、読めないところもあるが、比較的高い位置に書かれているので、残っている部分が多い。スローガンのように使っていたかもしれない。目的、目標、予定・・・ ここに屯したなら、(まじな)いがてらもあるだろう。



「さて。じゃ、魔導士はここに呼ぶとして。呼べばどこでも入ってくるし、『念』のことだもの。お願いしよう。それで、もう一つの用事・・・ あれか。あれ?って?」


『隠し通路が奥の右に』とドルドレンに聞いていたので、そちらを見ると、壊れた机と椅子の残骸、その後ろの壁がそうだった。


 だが、()()()()()()()・・・・・ 扉、開いてたんだっけ? 

お読み頂きありがとうございます。

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