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57 恋心と、星巡祭の約束

「皆さん期末試験お疲れ様でした。追試の方は追って連絡いたします。それでは良い星巡祭を」


教員が教室を出た瞬間に、

教室から様々な声が響き渡った。


試験はなんとか合格できた……とは思う。

けれど、結果はきっと散々だろう。


その場でしばらく動けずにいると、

遠くから明るい声が聞こえてきた。


「フィーリアっ!試験どうだった?」


私の方は本当にしんどかった〜と、

その場で崩れるヴェルナをよしよしとなだめる。


試験中に両手いっぱいに魔力判定用クリスタルを持って歩くヴェルナを見かけたが、今にも死にそうな顔をしていたのを思い出す。


よほど大変だったんだろうな……。


「フィリアの試験はどんな内容だったの〜?

でも、フィリアだったらなんでも簡単にできそう……」


恨めしげにこちらをみるヴェルナ。

そんな反応に苦笑しつつ、


「私も散々だったよ。思い出しただけで恥ずかしいし……」


俯いたまま答える。

やり直したとしても上手く出来る感じはしないな。


「恥ずかしい試験ってなんなのよ〜!

……まぁ、終わっちゃったんだから、次のこと考えないと、ね?」


そう言って目を輝かせながら続ける。


「星巡祭、一緒にいこっ!」


満面の笑みで、お店を巡る順番をスラスラと話し始めるヴェルナ。

前から約束をしていたと錯覚するほどに、

その目は一緒に行くことを何も疑っていない。


「楽しみだね〜」


あまりにも嬉しそうな笑顔に、

どう答えればいいのかわからなくなる。


複雑な表情を浮かべていると、

頭の上から声が聞こえた。


「僕のフィーを困らせないで?」


その言葉にヴェルナはむっとした表情を浮かべる。


「フィリアは何も困ってないわよ。ねー?」


女同士の友情に入らないでくれる?と、

手で追い払うような仕草をしている。


「……あの、ヴェルナ。ごめんね」


きっと何もなければヴェルナとお祭りに行ってたと思う。


「エルともう約束しちゃってて……」


「あっ……」


ヴェルナから小さな声が漏れる。

その顔をさせてしまっていることに胸が苦しくなる。


どう答えてよいか戸惑っていると、


「あ、あーっ!私、カイルと星巡祭に行く約束してたの忘れてたー!あいつの試験結果も気になるし、様子を見にいこうかなー?」


「だから、フィリアは気にしないで!今度一緒に遊びに行こうね!」


そう言って手を振るヴェルナ。

なんだか無理させちゃってるようで申し訳ないけど、

カイルくんと上手くいくなら。


「ヴェルナ、ありがとう。また遊ぼうね」


手を振り返すと、ヴェルナは親指を立てながら去って行った。


◆


ぽすっ。


頭の上に柔らかな重みを感じる。

後ろから抱きしめるように腕が回された。


「ふふっ」


幸せそうに笑う声がくすぐったい。


「エル、どうして笑ってるの?」


「だって、フィーがちゃんと僕と行くって言ってくれたのが嬉しくて」


「それは、約束してましたし……」


「フィーは優しいから。昼はヴェルナで夜は僕ととか、3人で行こうとか言いそうで怖かった」


「そんなこと……」

あったかもしれない。

今までだったら、そう提案していたかもしれない。


「ほら、やっぱり……。

でも、それをしなかったってことは、

僕とずっといたいってことでいいよね?」


その言葉に顔が真っ赤になる。

この間から何度も自覚させられてしまう。


小さく頷くと、

ぎゅっと抱きしめられる。


「あぁ、かわいい……」

漏れ出る吐息と小さな声に胸がきゅっと締め付けられる。


「少しこのままでいさせて……」

抱きしめる手に少し力が込められる。


彼の顔がゆっくりと首元へと移る。

エルが息を吐くたびに、ドキドキが止まらない。


「ここ、教室だから、その……」


吐息に小さな声が混ざりそうで怖い。


「誰もいないよ?……誰かに見られちゃうと困っちゃう?」


身動きが取れない中、コクコクと頷く。

こんな恥ずかしい姿を誰かに見られてしまうかと思うと。


「僕は見せていいと思ってるよ。

フィーは僕のだよって……見せつけたい」


その言葉に思わず首をふるふると振ってしまう。

嫌……なわけではない。けど。

それ以上に恥ずかしいのは、どうしても受け入れることができない。


「だめ?……でも、そんな蕩けた翠の目をしてたら、

何も言わなくてもバレちゃってるけどね」


ーー僕にたくさん愛されてるって。


突然瞳を覗き込まれて、身体がきゅっと震える。

エルの顔があまりにも甘くて。

ここでこのまま愛されてしまうのではないかと。


私、今どんな顔してるのかな……。

期待してるような、はしたない顔してないかな。


「そんな顔しちゃダメだよ、フィー。

本当に食べたくなっちゃう」


親指でそっと唇をなぞられると、

身体の下から上へと快感が走る。


「星巡祭、楽しみにしてるね。

この続きはその時に、ね?」


ーー星巡祭までに気持ちの整理をしてきてね。

エルは約束を守って待ってくれているのに。


その先をどこか期待してしまっていた自分に気づいて恥ずかしくなる。

エルはきっと私の想いに気づいてる。


星巡祭でちゃんとエルに伝えよう。


エルのことを、愛してると。

いつも『魔力ゼロの私ですが、独占欲強めな公爵様に溺愛されています』をお読みいただき、ありがとうございます(*´꒳`*)


これまで金曜日・日曜日の週2回更新を続けてまいりましたが、現在のストックがなくなるため、来週以降は本編の更新を不定期とさせていただきます。


楽しみにしてくださっている方には申し訳ありません。

これからもフィリアたちの物語を最後までお届けできるよう、少しずつ書き進めてまいりますので、気長にお付き合いいただけましたら嬉しいです。


今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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