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39.5 漆黒が去った後と、闇の門〜ダリウスの孤戦〜

これはおまけ話です。

本編とは少し離れたお話のため、

飛ばしていただいても大丈夫です(*´꒳`*)


ダリウス様隊長の戦闘回。

おまけエピソード書いてみました。

「隊長!闇の門が開かれました!」


警報装置が耳障りな音を鳴らし続ける。


「総員、直ちに出撃準備! 門へ急行する!」


ダリウスの低い声が駐屯地に響いた。


「相手は古代より封じられていた“闇の聖者”だ。どれほどの存在か予測はできん。だが――国に被害を出すわけにはいかない」


鋭く剣を抜く。


「死力を尽くせ!」


『はっ!!』


数十名の魔導士と騎士が応え、一斉に駆け出した。



だが。


闇の門へ辿り着いた瞬間、誰もが言葉を失った。


「……これは、一体……」


門の周囲で待機していた第一隊。


その全員が、地面に倒れ伏していた。


「おい! しっかりしろ!」


隊員の一人が駆け寄った――その瞬間。


「うわぁぁっ!?」


地面から黒い腕が飛び出した。


闇の手。


それが隊員の全身へ絡みつき、

一瞬で地面へと引き倒す。


そして。


さっきまで動いていた男が、

ぴくりとも動かなくなった。


その光景に戦慄が走る。


何が起こったのか隊員達が理解する前に、


ずるり。


ずるり、と。


先程まで存在しなかった闇の手が、

次々と地面から這い出してきた。


まるで、新たな獲物を見つけたかのように。


「ひっ……来るなぁぁ!!」


混乱した隊員が火球を放つ。


だが。


闇の手は、大きく口を開くように膨れ上がり、

ばくりと火球を喰らった。


「……嘘、だろ」


傷一つついていない。


それどころか、魔力そのものを喰らっている。


一瞬で理解する。


これは、“倒せる存在”ではない。


アレは触れてはいけない。


隊員達の間に、恐怖が一気に広がった。


ぐるり。


無数の闇の手が、一斉にこちらを向く。


顔などない。


それなのに。


――笑っている。


そう理解した瞬間。


闇が襲いかかった。



「ぎゃぁぁぁっ!!」


次々と倒れる隊員達。


魔法は呑み込まれ、

剣で裂いても霧のように散り、

再び集合して襲いかかってくる。


触れられた者から、次々と倒れていく。


魔力核が存在しない。


有効打が見つからない。


焦りが募っていく。


「私が囮になる!」


ダリウスが前へ出た。


「総員退避!!」


――全滅だけは避けねばならん。


闇の手を牽制しつつ、隊員全体を守るように幾重ものシールドを展開する。


闇の手が叩きつけられるたび、シールドが砕け散る。


一枚。


また一枚。


だが、その僅かな時間で隊員達が後退していく。


すると。


闇の手が、標的をダリウスへ切り替えた。


「……意思があるのか」


素早く跳躍し闇の手から距離をとる。


闇の手が地面から湧き上がる。


横から。


背後から。


影ある場所すべてが敵だった。


ビシィィッ!!


横合いから飛び出した闇の手が、シールドを叩く。


切り裂こうと剣を構えた瞬間。


「っ!」


背後の気配を感じ、反射的に飛び退く。


直後、さっきまで立っていた場所から闇の腕が突き出した。


……遅れていれば、捕まっていた。


野獣なら臭いがある。


人なら殺気がある。


だが、これは違う。


音も、気配もなく現れる。


倒す方法がわからない。


未知の敵。


……彼らは退避できているだろうか?


チラリと横目で隊員達をみる。


こちらにおびき寄せたおかげか、

大部分の退避が済んでいる。


どうやら、闇の門から一定の距離を離れると、隊員を追うのを止めているようだ。


その様子を見て安堵する。


……私もそろそろ退避を始めるか。


無数の闇の手に囲まれながら、退避経路を考える。


「……なるほど」


戦いながら、ダリウスは気づく。


闇の手が現れるのは、“影”からのみ。


それは私の影も含まれるが、恐るものではない。


光魔法が使えなくとも。

ーー影を消すことなど、どうとでもなる。


ダリウスは短く詠唱を行う。


ベキィィッ!


地面が硬度の高い岩へ変質していく。


土が、鏡面のように滑らかな大地へ変わっていく。


鏡地生成(ミラージュ・テラ)!」


陽の光に反射した光が周囲を照らし、影を消し飛ばす。


出現場所を失った闇の手が、四散した。


「今だ!」


一気に駆け抜ける。


すぐに、自身の影から這い寄る気配を感じる。


散光砂(ルクス・ダスト)


土粒子を纏わせ光を散乱させることで、

自身の影を消しながら駆け抜けていく。


至近距離から襲われないだけで、生存率がまるで違う。


影を作らせない、または一点に集める戦術の構築。

触れないこと前提の戦い方。


早めに隊の再編が必要になるな……。


光属性の者がいなくても、

光を生み出す方法も考えなくては。


今後の戦術を組み上げていく。


その時だった。


「っ!!」


逃げ遅れた隊員の背後から、闇の手が迫る。


「やらせるかっ!!」


シールドの構築は間に合わない。


なら。


身体強化をかけ、跳躍する。


そして。


――雷鳴のような一閃。


星光を帯びたロングソードが闇を裂いた。


闇の手が霧散する。


再生しようと黒い霞が集まるが――薄い。


再形成できていない。


「これは……」


ダリウスは剣を見た。


星光を纏う刃。


……なるほど、さすが我らの殿下だ。


残った隊員へ振り返る。


「第一駐屯地の封印部隊と合流しろ! 負傷者はクラウス医師の救護班へ!」


そして。


ダリウスは、口元に笑みを浮かべた。


「私は残る」


星光を纏う剣を握り直す。


「少し――試したいことができたのでな」


そのまま、一人。


再び闇の門へと駆け出した。

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