39.5 漆黒が去った後と、闇の門〜ダリウスの孤戦〜
これはおまけ話です。
本編とは少し離れたお話のため、
飛ばしていただいても大丈夫です(*´꒳`*)
ダリウス様隊長の戦闘回。
おまけエピソード書いてみました。
「隊長!闇の門が開かれました!」
警報装置が耳障りな音を鳴らし続ける。
「総員、直ちに出撃準備! 門へ急行する!」
ダリウスの低い声が駐屯地に響いた。
「相手は古代より封じられていた“闇の聖者”だ。どれほどの存在か予測はできん。だが――国に被害を出すわけにはいかない」
鋭く剣を抜く。
「死力を尽くせ!」
『はっ!!』
数十名の魔導士と騎士が応え、一斉に駆け出した。
◆
だが。
闇の門へ辿り着いた瞬間、誰もが言葉を失った。
「……これは、一体……」
門の周囲で待機していた第一隊。
その全員が、地面に倒れ伏していた。
「おい! しっかりしろ!」
隊員の一人が駆け寄った――その瞬間。
「うわぁぁっ!?」
地面から黒い腕が飛び出した。
闇の手。
それが隊員の全身へ絡みつき、
一瞬で地面へと引き倒す。
そして。
さっきまで動いていた男が、
ぴくりとも動かなくなった。
その光景に戦慄が走る。
何が起こったのか隊員達が理解する前に、
ずるり。
ずるり、と。
先程まで存在しなかった闇の手が、
次々と地面から這い出してきた。
まるで、新たな獲物を見つけたかのように。
「ひっ……来るなぁぁ!!」
混乱した隊員が火球を放つ。
だが。
闇の手は、大きく口を開くように膨れ上がり、
ばくりと火球を喰らった。
「……嘘、だろ」
傷一つついていない。
それどころか、魔力そのものを喰らっている。
一瞬で理解する。
これは、“倒せる存在”ではない。
アレは触れてはいけない。
隊員達の間に、恐怖が一気に広がった。
ぐるり。
無数の闇の手が、一斉にこちらを向く。
顔などない。
それなのに。
――笑っている。
そう理解した瞬間。
闇が襲いかかった。
◆
「ぎゃぁぁぁっ!!」
次々と倒れる隊員達。
魔法は呑み込まれ、
剣で裂いても霧のように散り、
再び集合して襲いかかってくる。
触れられた者から、次々と倒れていく。
魔力核が存在しない。
有効打が見つからない。
焦りが募っていく。
「私が囮になる!」
ダリウスが前へ出た。
「総員退避!!」
――全滅だけは避けねばならん。
闇の手を牽制しつつ、隊員全体を守るように幾重ものシールドを展開する。
闇の手が叩きつけられるたび、シールドが砕け散る。
一枚。
また一枚。
だが、その僅かな時間で隊員達が後退していく。
すると。
闇の手が、標的をダリウスへ切り替えた。
「……意思があるのか」
素早く跳躍し闇の手から距離をとる。
闇の手が地面から湧き上がる。
横から。
背後から。
影ある場所すべてが敵だった。
ビシィィッ!!
横合いから飛び出した闇の手が、シールドを叩く。
切り裂こうと剣を構えた瞬間。
「っ!」
背後の気配を感じ、反射的に飛び退く。
直後、さっきまで立っていた場所から闇の腕が突き出した。
……遅れていれば、捕まっていた。
野獣なら臭いがある。
人なら殺気がある。
だが、これは違う。
音も、気配もなく現れる。
倒す方法がわからない。
未知の敵。
……彼らは退避できているだろうか?
チラリと横目で隊員達をみる。
こちらにおびき寄せたおかげか、
大部分の退避が済んでいる。
どうやら、闇の門から一定の距離を離れると、隊員を追うのを止めているようだ。
その様子を見て安堵する。
……私もそろそろ退避を始めるか。
無数の闇の手に囲まれながら、退避経路を考える。
「……なるほど」
戦いながら、ダリウスは気づく。
闇の手が現れるのは、“影”からのみ。
それは私の影も含まれるが、恐るものではない。
光魔法が使えなくとも。
ーー影を消すことなど、どうとでもなる。
ダリウスは短く詠唱を行う。
ベキィィッ!
地面が硬度の高い岩へ変質していく。
土が、鏡面のように滑らかな大地へ変わっていく。
「鏡地生成!」
陽の光に反射した光が周囲を照らし、影を消し飛ばす。
出現場所を失った闇の手が、四散した。
「今だ!」
一気に駆け抜ける。
すぐに、自身の影から這い寄る気配を感じる。
「散光砂」
土粒子を纏わせ光を散乱させることで、
自身の影を消しながら駆け抜けていく。
至近距離から襲われないだけで、生存率がまるで違う。
影を作らせない、または一点に集める戦術の構築。
触れないこと前提の戦い方。
早めに隊の再編が必要になるな……。
光属性の者がいなくても、
光を生み出す方法も考えなくては。
今後の戦術を組み上げていく。
その時だった。
「っ!!」
逃げ遅れた隊員の背後から、闇の手が迫る。
「やらせるかっ!!」
シールドの構築は間に合わない。
なら。
身体強化をかけ、跳躍する。
そして。
――雷鳴のような一閃。
星光を帯びたロングソードが闇を裂いた。
闇の手が霧散する。
再生しようと黒い霞が集まるが――薄い。
再形成できていない。
「これは……」
ダリウスは剣を見た。
星光を纏う刃。
……なるほど、さすが我らの殿下だ。
残った隊員へ振り返る。
「第一駐屯地の封印部隊と合流しろ! 負傷者はクラウス医師の救護班へ!」
そして。
ダリウスは、口元に笑みを浮かべた。
「私は残る」
星光を纏う剣を握り直す。
「少し――試したいことができたのでな」
そのまま、一人。
再び闇の門へと駆け出した。




