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29.5 手に余る闇と、頭の痛い問題〜レオニスの憂鬱〜

これはおまけ話です。

本編とは少し離れたお話のため、

飛ばしていただいても大丈夫です(*´꒳`*)


苦労人で策士なクラウス殿下。

おまけエピソード書いてみました。


「さて、どうしたものか」


学園を揺るがした、闇の魔力暴走事件。


表向きは、闇の魔力がどこからか入り込み、多感な時期の学生達の欲望を刺激した、というなんとも曖昧な事件。


実態は、学生の一人がみんなの負の感情を吸収し、自分の中で増幅し暴走を起こしてしまった。

今回学生達の中で、欲望に抗えなかった面々は、きっと闇属性の適性がある者だ。


炙り出しができたのは僥倖といえるのだったが……。


レオニスは、その事後処理に追われ、頭を抱えていた。


世間の闇の魔力が濃くなってきているとはいえ、

学院内でここまで濃くなった原因を究明せよと要請がきている。


原因ねぇ……。


思い当たる節が一つしかない。


エルヴィン・アステリアは、

闇属性適性者だ。


それも、かなりの。


あ〜もう、どうするんだよ。


レオニスは、報告書を片手に、天を仰ぐ。


通常、四属性適性者の魔力は、

自然界の恵みによって魔力を得ている。


しかし、光属性と闇属性は違う。


光属性は太陽がある限り、

光を受けるだけで自然と溜まっていく。


そして、闇属性は……。


人々の感情の機微や自身の感情の起伏、

負の感情や気配すらも、自然と吸収してしまう。


そのため、定期的な放出や分解が必要であった。


エルヴィンは、他者への興味も感情もない「人形」のようであったため、今まで暴走することはなかった。


しかし、フィリアに出会い、知ってしまった。

怒り、嫉妬、憎悪、そして愛惜。

様々な感情を知ってしまったことで、闇の魔力を増幅し、暴走させてしまった。


それが今回の事件の真相。


そもそもがアステリア公爵家が、

エルヴィンの闇属性適性を隠していたのが問題だ。


確かに一人息子で、家督を繋がなければならない子を聖教会に預ける選択肢を躊躇するのはわかる。


ただ、その聖教会で、闇の魔力の調整方法について教えてもらえていなかったのが原因でもあり……。


(今回は揉み潰せるけど、また暴走させたら後がない)


何も教えず、うまく闇の魔力を調整できるようにならないだろうか?


(……いや、エルヴィンはすでに自分に闇属性の適性があることに気づいているはずだ。

なら、訓練すべきだな。……僕の手で)


……。


………。


だぁぁぁっ!


学院で起きた様々な事件を思い出し、

報告書片手に、椅子の背もたれにのけぞった。


「僕ってさ、王子だよね?」

何もない空間に問いかける。


少しの沈黙の後、

「はい、そうですね」

と答えが返ってくる。


「普通、王子や王様がやらかしたのをさ。

臣下が振り回されて、あたふたするもんじゃない?」


ため息混じりに話すレオニス。


その回答に対する返事はない。


ラグナもエルヴィンも、やりたい放題だ。


「もう、王子なんかやめて。

フィリアさんとひっそり田舎でスローライフでもしようかな〜」

そう少し大きめな声で話す。


話してしまうと、案外それもいいかもしれないと思い始めてしまう。


「青空の下でさ、野菜とか育ててさ……。

僕は育てるのが得意だからね」

そう言って、ははっと笑う。


「魔力も、植物も、……もちろん、女の子も、ね」


と、独り言のように付け加えるレオニスの口元には、慈愛と、ほんの少しの危うい独占欲が滲んでいた。


影から紅茶とお茶菓子を持って、

側近のレインが現れた。


「殿下は、お疲れのようですね」


そう言って、机にすっと置く。


アールグレイの芳醇な香りが、部屋を包んでいく。


「レインはさすがだね。気がきくよ」

と微笑んで紅茶を嗜む。


ふと窓の外に目を向ける。


闇が晴れた学院。


その下で、今回の事件をきっかけに、新たな恋がたくさん芽生えたようだ。


「……まぁ、闇も悪くない、か」


レオニスの唇に、不敵な微笑みが戻った。

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