表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/38

23 壊れた理性と、黒に染まる瞳

「さてと、僕はこの後用事があるので失礼するよ」


レオニスはそう言って、ひらりと手を振った。


「サロンは一日借りてるから、後はごゆっくり」


軽い調子でそう言うと、扉をぱたりと閉める。


残されたのは、フィリアとエルヴィンの二人だけだった。


沈黙が落ちる。


見られながら魔力共有するのは、恥ずかしかった。

それに――


ラグナの魔力が、まだ身体の奥に残っている。


あの約束。

魔力を満たしてはいけない。


それは殿下も……同じ?


色々なことがありすぎて、頭が追いつかない。


どうしていいかわからず立ち尽くしていると。


「……フィリア」


先に口を開いたのはエルヴィンだった。


「ひゃいっ」


急に名前を呼ばれ、身体がびくっと跳ねる。


その反応に、エルヴィンはくすっと笑った。


「フィリア……」


「は、はい。なんでしょう……?」


首をかしげるフィリア。


エルヴィンは少しだけ迷うように目を細めて。


「ねぇ……ぎゅって、していい?」


そう言って、フィリアと同じように小首を傾げる。


その仕草があまりにも可愛くて。


フィリアは思わずふふっと笑ってしまう。


「どうぞ?」


両手を広げる。


そのまま、エルヴィンがぎゅっと抱きしめた。


胸に頬が当たる。


ドクン、ドクン。


エルヴィンの鼓動がやけに大きく聞こえる。


服の生地は触り心地がよくて。

体温は驚くほど温かい。


幸せなひとときに、フィリアはそっと目を閉じた。


その時だった。


背中に回された腕に、少し力がこもる。


ぎゅっと――

抱きしめる力が強くなる。


「……好きだ」


切なく、苦しそうに吐き出された声。


どうしてそんな……。

今にも壊れそうな声で「好き」なんて言うの。


その一言に、顔が一気に熱くなる。


……好き。


頭の中でその言葉を何度も繰り返す。


でも、理解が追いつかない。


その「好き」は――

どんな意味の、好き?


エルヴィンがそっと髪を撫でる。


身体がびくっと震える。


どうしていいかわからず、言葉が出ない。


「フィリアは……」


エルヴィンはそこまで言って、言葉を止めた。


もし今、その答えを聞いてしまったら。


どんな答えだったとしても――

きっと、フィリアを離しておけなくなる。


狂おしいほどの想いを、抑えられなくなる。


「フィリア……」


囁きながら、頬に手を添える。


そっと顔を上げさせると。


恥ずかしそうにこちらを見るフィリアの瞳があった。


その目に――

灼紅が、まだ混じっている。


ラグナの魔力。


……まだ残っている。


その事実を認識した瞬間。


何かが、ぷつりと切れた。


――まだ、あの男が残っている。


次の瞬間。


ぐいっと顔を引き寄せる。


貪るように、キスをした。


見開かれる灼紅の瞳。


そして――


翠の瞳が、ゆっくりと黒く染まっていく。


黒い魔力が、するりとフィリアの身体をなぞる。


まるで、身体の奥に残る灼紅を、探しているかのように。


身体の奥から、灼紅の魔力が引き抜かれていく。


代わりに。


黒い魔力が、住み処を探すように入り込んでくる。


息が吸えない。


――苦しい。


「……ぃやっ!」


フィリアは力いっぱいエルヴィンを押し返した。


ぐっと睨みつける。


そこにいたのは――


乱暴してしまったことに。


拒絶されてしまったことに。


そして、彼女の瞳を黒碧に染めてしまったことに。


すべてに絶望しているエルヴィンだった。


バタンッ!


言葉を交わすよりも早く。


フィリアは涙を浮かべたまま、部屋を飛び出していった。




学院の王室専用サロン。


調度品は上品だが華美ではない。

白を基調とした室内は、夕刻の光に照らされてオレンジ色に染まっている。


その部屋に、一人佇んでいる人物がいた。


レオニス・ルミナリア。


王国第一王子。


そして、闇の門の問題対応に追われている人物。


「定期報告を頼むよ」


誰もいない壁に向かって、レオニスが言う。


すると影から、すっと一人の青年が姿を現した。


黒髪の青年。


「……御意」


静かに膝をつく。


王子直属暗部《Vesper》の一人、レイン。


「闇の門から溢れ出す魔力は変わらず。王宮魔導先遣隊のおかげで、門はまだ閉じたままです」


「闇の魔力については光魔法での打ち消しを試していますが、光魔法適性者が少なく……」


「光属性適性者探しの件はどうなっている?」


「それが……」


レインが言いにくそうに俯く。


「何があってもいい。全部教えて?」


レオニスは穏やかに言った。


「六属性適性検査の魔導機を、市井で秘密裏に使用したところ……光属性は集まりませんでした」


「それどころか――闇属性適性者が明らかに増えています」


「……やっぱりか」


レオニスは驚く様子もなく呟く。


「レインは下がっていいよ。引き続き光属性の調査を」


「闇属性適性者については、頃合いを見て聖協会へ報告を」


「……御意」


そう言うとレインはすっと影に溶けるように消えた。


レオニスは大きくため息をつく。


闇属性適性者。


神話では、闇は悪として封印された存在。


そこへ闇属性適性者が現れたら――


どうなるか。


その危険を避けるため、

六属性検査の魔導機は早くから回収され、


街には四属性検査の魔導機だけが広まった。


闇の迫害を避けるため。


そして、光の優位性を保つため。


王家の安定のために。


それが――


こんな形で問題になるとは。


時折、四属性適性がないのに

魔力量だけが異様に高い子供がいる。


そんな場合は秘密裏に六属性検査を行う。


もし光か闇なら、聖協会で保護する。


レインもその一人だった。


闇属性は諜報能力に優れ、王家にとって貴重な戦力になる。


父である国王は今、

闇の門の再封印に躍起になっている。


だが。


どうも引っかかる。


何かを隠している。


そう思わせる違和感がある。


「こちらでも調べておくか……」


そう呟き、レオニスもまた影へと消えていった。


お話しお読みいただき、ありがとうございます(*´꒳`*)

よろしければ、ブクマや評価などをしていただけると励みになります。


ブクマしてくださった方ありがとうございます。泣いて喜んでおります。゜(゜´ω`゜)゜。



これから闇へと堕ちていくエルヴィン。

頬クイ…ほぼ顎クイですが。

イメージイラストを置いていきますね。

※AIが作成してくれました。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ