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16.5 困った幼なじみと、危ない実験 〜ヴェルナとカイルの魔力共有〜

これはおまけ話です。

本編とは少し離れたお話のため、

飛ばしていただいても大丈夫です(*´꒳`*)


ヴェルナさんは書いていて楽しいです。

おまけエピソード書いてみました。

「ねね、ヴェルナ〜。魔力共有してみない?」


目を輝かせながら、幼馴染がそう持ちかけてくる。


この前の魔獣討伐の話を聞かせてしまったのが、どうやら失敗だったらしい。


「そのお願い何回目よ!」


ヴェルナは即座に声を荒げる。


「前にも言ったでしょ? フィリアと魔力共有できたのは偶然!

今までそんなことしたことなかったんだから!」


何度断っても、カイルはまったく懲りない。


「そりゃあ、私だって興味はあるけどさ……」


あの後、ヴェルナは魔力共有について文献を調べてみた。

だが、どの本にもやり方は書いていない。


代わりに書かれていたのは、同じ一文だけだった。


『危険性が高いため、高位魔法、または禁呪に準ずる扱いとする』


――要するに。


危ないからやるな。


それだけだった。


「じゃあさ、俺がヴェルナに入れるから受け取ってよ」


カイルがキラキラした目で言う。


「それなら……」


興味はある。

もしカイルが成功するなら、参考になるかもしれない。


ヴェルナはおずおずと手を差し出した。


「ありがとう〜♪」


カイルは嬉しそうに、その手に自分の指を絡めてきた。


「ちょっ……ちょっと待ちなさいよ!」


ただ手を握るだけだと思っていたヴェルナは、驚いた。


恥ずかしくなって手を引こうとするが――


「……ん?」


抜けない。


ニヤニヤ笑いながら、カイルが両手でヴェルナの手を包み込む。


「ダメだよ、ヴェルナ。

約束はちゃんと守らなきゃ」


じっと見つめられて、ヴェルナは言葉を失う。


「わ……わかったわよ!

なら、早くしなさいよっ!」


頬を赤く染め、顔をそらす。


恥ずかしくてカイルの顔なんて見ていられない。

ぎゅっと目を閉じ、魔力共有が終わるのを待つ。


……。


…………。


「ん?」


何も起きない。


身体の変化も、魔力の感覚もない。


ゆっくり目を開けると。


カイルはヴェルナの手を握ったまま、


「おりゃ!」「とぉっ!」


などと謎のポーズを取りながら、


「おかしいなぁ……」


と首をひねっていた。


「……何してるの?」


呆れ顔で聞くヴェルナ。


「なんて言うかな。入り口が狭くて魔力が入らない?

流そうとしても拒まれるんだよね」


少し考え込み、


「あ、いい例え思いついた」


カイルはスッキリした顔で言った。


「入ろうとすると、ヴェルナにずっと平手打ちされて、家に入らせてもらえない感じ!」


ドゴォ!!


腹部に拳がめり込む。


「ぐふっ!」


恥ずかしさで死にそうだったヴェルナの怒りが爆発した。


「これで気が済んだでしょ!

魔力共有はおしまい!」


そう言って立ち去ろうとすると――


「待って」


カイルがヴェルナの腕を引き、そのまま抱きしめた。


「っわ!!」


突然のことに、ヴェルナは固まる。


カイルがぽつりと呟く。


「ヴェルナは、フィリアちゃんに魔力をあげたんでしょ?」


何度も話したことのある話題。


「えぇ……そうよ」


なのに、なぜか胸が締め付けられる。


カイルの鼓動が聞こえる。


「ナーちゃんが盗られる気がしたんだ」


昔の呼び名。


胸が、ちくりと痛む。


「だから」


「ヴェルナは俺にも魔力をくれなきゃいけない!」


「不公平だー!」


カイルは頬をぷぅっと膨らまして叫んでいる。


「……っ!」


この男は本当に!!


さっきまでの乙女心と罪悪感を返してほしい。


ふぅ、と小さくため息をつく。


「……わかったわよ」


ヴェルナはカイルの手を取り直す。


「怪我しても知らないからね」


何度も触れているはずの手。


それなのに、自分の手よりずっと大きい。


もう腕相撲も指相撲も敵わないんだろうな、

なんて考えていると。


「ヴェルナ〜、まだぁ〜?」


こいつは本当に空気を読まない。


ヴェルナは深呼吸して、魔力を集中させる。


自分の魔力を集める。


ファイアーボールを出すときと同じ感覚。


それを――


相手に流す。


ぐっと力を込めた。


魔力が勢いよく流れ込んだ。


――やった!


成功した!


と思った瞬間。


「あっちぃぃぃぃ!!」


カイルが手を離し、床をゴロゴロ転がる。


「ちょっ!どうしたのよ!?」


駆け寄るヴェルナ。


カイルの手首には――


火傷のような痕。


「……!!」


ヴェルナは絶句する。


私の、せいだ。


それを見てカイルは笑った。


「大丈夫だよ〜。

これくらい平気だって〜」


「…………ぅ」


ヴェルナが何か呟く。


「なぁに、ヴェルナ?」


「医務室へ行くわよ!!」


半泣きで腕を引っ張る。


その必死さが少し嬉しくて、カイルは笑った。


「わかったわかった!」


カイルはヴェルナを撫でながら、医務室へ向かった。



「はぁ〜……」


手首を見た瞬間、クラウス先生は大きくため息をついた。


「魔力焼けですね」


先生はぽよぽよとした水の塊を作り、カイルの手首を冷やす。


「何をしたかは大体予想できますが、一応聞きます」


興味なさそうな声。


「どうしてこうなったんですか?」


「その……魔力共有を……」


ヴェルナが小さく答える。


クラウスは肩をすくめた。


「まぁ、私も魔獣討伐の件を聞いた時、

魔力共有をするなとは言いませんでしたし」


「お互い様ですね」


そしてちらりとカイルを見る。


「……おそらく、そちらが乗せたんでしょうが」


びくっ。


「……ははっ」


カイルは笑うしかなかった。


「液体が消える頃には炎症は引いています。

治療は以上です」


そして最後に言った。


「ただし」


「多少、痕が残るかもしれません」


「まぁ目立つほどではありません」


「良い思い出として残しておきなさい」


そう言って奥へ去っていった。


「……痕、残るの?」


青ざめるヴェルナ。


「私のせいで……ごめんね?」


心配そうに聞くと、


「責任とってね?」


そう言って笑うカイルに、

ヴェルナは顔を真っ赤にする。


「……ほんと、バカなんだから」


そう呟きながらも、

ヴェルナはカイルの手首から目を離せなかった。

「いいもの手に入れちゃった」

カイルは嬉しそうに、手首に残る小さな火傷痕を眺める。


ヴェルナには申し訳ないけど、

カイルにとってはヴェルナとの消えない思い出ができたことが嬉しくてたまらなかった。


「しっかし、あの先生、相当なくわせ者だな」


きっとクラウス先生は、やろうと思えば痕も残さず綺麗に治療できた。

ただ、それをしなかったのは……。


お礼をすべきだろうか?

いや、そういう人ではないし。

たぶん、言っても認めないだろう。


……いつか、何かの機会にお礼をするか。


再び火傷痕を、そっとなぞる。


ヴェルナが心配しない程度に、

からかおうっと。


ずっと、忘れないように。


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