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15 紅い瞳と、王命

「フィ〜リアっ!」


じゃーん!と効果音がつきそうな勢いで、

ヴェルナが差し出したのは――


先日雑貨屋で「可愛い!」と目を輝かせていたうさぎのチャームだった。


「こっちのピンクの方がフィリアね!

好きな色、何かな〜って思ったんだけど……」


チラリとフィリアの翠の魔石の指輪を見る。


「なんか、翠色よりピンクの方が似合う気がしたの!」


ニコニコと笑うヴェルナ。


「これでお揃い!」


制服の留め具に、ぱちん、とチャームをつける。

自分にも、フィリアにも。


「この間の魔獣討伐事件では本当にありがとう。

お礼…こんなんじゃ足りないけど、

いつかフィリアが困っていたら絶対助けるからっ!」


ヴェルナは小さく拳を握り、

もっと強くなるから!と笑った。


フィリアは、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


――ああ、ヴェルナが友達で、本当によかった。



始業の鐘が鳴る。


「最近、魔獣の動きが活発化しています」


教師の声に、教室が静まり返る。


「王宮より、“魔力共有”の講義要請がありました」


ざわり、と空気が揺れた。


そして――視線が一斉に、フィリアとヴェルナへ向く。


先日の魔獣討伐。

魔力不足だったフィリアへヴェルナが魔力を送り、

Cランク魔獣『蒼嵐牙ヴァルグレイ』を討伐したという噂は、すでに学院中へ広まっていた。


「皆さんも知っての通り、

あと少し魔力があったら助かったであろう、

そんな状況が今後起こりうる可能性があります」


先生は少し息を吐き、言葉を続ける。


「魔力共有は本来、推奨されません。

魔力欠乏は死に直結し、魔力過多は“酔い”を引き起こします」


ごくり、と誰かが唾を飲む。


「ですが、噂だけで試みて事故が起きるよりは――

正しい知識のもとで学ぶべき、という判断になりました」


一瞬、教師は目を伏せた。


「同属性でペアを組み、共有は三秒間のみ。

同じ属性同士でも相性があります。

少しでも反発を感じたら、即座に中断すること」


そして。


「フィリア・リヴァリエさん」


教室の空気が張り詰める。


四属性適性を持つ彼女は、誰と組むのか。


そもそも組めるのか――期待と好奇の眼差し。


「魔力共有をしたことがあるヴェルナさんと組んでください」


どこかで残念そうな溜息が漏れる。


それを打ち消すように、


「それでは、皆さんペアを組んで!」


先生がパンパンと手を叩き、指示を出した。



「フィリア、流すよ?」


先日無意識下で流したとは言え、

今回も成功するとは限らない。


失敗したらと思うと、緊張する。


ヴェルナは深く息を吸い、

静かに魔力を込め始める。


じわり、と温もりが手のひらから伝わる。

身体がぽかぽかと温まり、

内側から力が湧いてくるような感覚。


ふと、ヴェルナと目が合う。


その瞬間。


「――っ」


突然魔力の流れが止まった。


「ヴェルナ、どうしたの?」


「フィリア、その瞳……」


ヴェルナは気づいてしまった。


休日、王都で遊び歩いたあの日――


フィリアの瞳には、薄く翠色が宿っていた。


そして、今は……。


(何が運命よ、あのストーカー!)


「私の目がどうかしたの?」


不思議そうに尋ねてくるフィリア。


……これは、教えていいことなのか。


そのとき、ひやりと冷たい風が教室を撫でた気がした。


「……ちょっと紅く充血してるかなって、思っただけ」


そう濁した。



そうこうしているうちに、


「フィリアちゃん!俺とも魔力共有しようよっ!」


人懐っこい笑みを浮かべてカイルが近づいてくる。


「聞いてよ〜、この間ヴェルナとやってみたらさぁ、

ヴェルナの魔力が熱いの何のって…」


ドゴッ!


激しい音と共に、カイルのお腹にヴェルナの拳がめり込む。

前に見た光景だなぁ……。


それでもめげないカイルは、

「ねぇ、3秒だけでいいの〜。一瞬だけだからさ〜。

ほら、他の人の魔力って気になるじゃん!」


他の人の魔力が気になる気持ちはわかる。


フィリアは、ほんの少しだけ躊躇したが――


「一瞬だけなら…」


そう言って手を差し出すフィリア。


ラッキー♪と手を繋ぐカイル。


「この、馬鹿っ!!」


ヴェルナが止めに入るが、コンマの遅れ。


「うわっ、なにこれ。ちょー気持ちいい!!」


カイルの嬉しそうな声が教室に響き、

学生たちが色めき立つ――かに思えた。


突如、空気が重く、薄くなる。


教室内が一瞬、暗く感じる。


その中心で。


エルヴィンだけが、にこやかに――微笑んでいた。


終業の鐘が鳴った。


助かったとばかりに、学生たちは大きく息を吐き、

この場にいたくないとそそくさと立ち去っていく。


「なぁ、ヴェルナ。

一瞬すげぇ寒くなかった?」


プチっ!


何かが裂ける音が聞こえた気がする。


ヴェルナの声が怒りで震えている。


「カ〜イ〜ル〜!ちょっとこっちへきなさ〜い!

フィリア!また今度ね!」

と言って、騒動の主犯を引っ張って去っていった。


残されたフィリアとエルヴィンは先生に呼ばれた。


「フィリア・リヴァリエさん。

貴方には今後きたるべき時に備えて、各属性の方と魔力共有の練習をしていただくことになりました」


その言葉に、エルヴィンが即座に反応する。

「他属性と魔力共有って、どういうことですか?」


「火属性はヴェルナ・イグナティアさん、

風属性はエルヴィン・アステリアさん、

水属性はクラウス教諭……」


一拍。


「――これは、王命です」


空気が、凍る。


「また詳しいお話が来るでしょう。

それまでは、魔力酔いを起こさない程度に魔力共有の練習をしていいですよ?」


とフィリアとエルヴィンを交互に見て、

先生は静かに去っていった。


「……王命、だと?」


エルヴィンは静かに呟き、

怒りに震えていた。



それから数日後。


レオニス殿下から、

個別サロンへの招待状が届いた。


まるで、すべてを見透かしているかのような、

美しい筆跡で。


お話を読んでいただき、ありがとうございます(*´꒳`*)

またブックマークなどしてくださった方、ありがとうございます!泣いて喜んでます。


ヴェルナとフィリアのお揃いのうさぎのチャームのイメージイラストを置いておきます。

うさぎ可愛い。もふもふ。

※AIが作成してくれました。

挿絵(By みてみん)

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