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第120話 作用・反作用のしっぺ返し

挿絵(By みてみん)


 地下実験場に、空気を震わせるような不気味な充填音が響き渡る。

 木島はコントロールパネルに張り付き、狂気に満ちた笑い声を上げながら魔力砲の出力を限界まで引き上げていた。砲身に組み込まれた魔石がかつてないほどの輝きを放ち、周囲の空間が熱を帯びて歪む。


「ひひっ! 見ろ、これこそが物理法則に基づいた最強の熱量だ! 信仰心などというオカルトで、この数字を超えられるものか!」


 木島が発射ボタンを力強く叩き込んだ。

 直後、太陽が地下に出現したかのような凄まじい閃光が視界を白く染め上げる。


 ズドォォォォォォッ!!!


 三上の全力射撃すらも上回る、圧倒的な質量の極太魔力ビームが放たれた。光の奔流は、実験場の最奥に設置されていた特厚のチタン合金製ターゲット群を、音を立てる間もなく分子レベルで一瞬にして蒸発させた。

 その規格外の破壊力に、対決していた三上でさえも息を呑んで立ち尽くす。


「どうだ! 私の勝ちだ、オタク坊主!」


 勝利を確信し、高らかに笑い声を上げる木島。

 しかし、彼の背後に立っていた源田は、冷や汗を流しながら全く別の「ある異変」に気が付いていた。


「おい、木島! 伏せろ!!」


 源田が叫んだその瞬間、悲劇は起きた。

 魔法使いである三上は、極太のビームを放つ際、無意識のうちに自分自身の魔力と身体強化を使って、発射時の凄まじい「反動」を相殺している。

 だが、機械である『きじま君4号』には、そんな魔法的な衝撃吸収能力など備わっていなかった。ただ純粋なニュートン力学、すなわち『作用・反作用の法則』が、放たれた圧倒的なエネルギーと同等の力となって、巨大な砲身へ容赦なく牙を剥いたのだ。


 ギィンッ!! という金属がひしゃげる不吉な音が響いた。

 床に打ち込まれていた強固な固定アンカーが、反動のエネルギーに耐えきれず次々と千切れ飛ぶ。


「えっ……」


 木島が間抜けな声を漏らした直後、数トンはある魔力砲の巨体が、すさまじい勢いで「後方」へと吹き飛んだ。

 宙を舞う鉄塊と化したきじま君4号は、分厚い防爆壁を紙屑のように突き破り、木島が長年かけて心血を注ぎ、なけなしの予算をかき集めて揃えた数億円規模の精密分析機材が並ぶエリアへ、一直線に突っ込んでいったのである。


 ドゴォォォォォンッ!!


 本日二度目となる、しかし先ほどとは比べ物にならないほど悲惨な大爆発が地下に轟いた。

 爆炎と黒煙が晴れた後、そこには見るも無惨にひしゃげた魔力砲と、跡形もなく粉砕され、火花を散らす高額機材の山が広がっていた。


「あ、あぁ……私の、私の可愛い機材たちが……」


 床に膝から崩れ落ちた木島は、真っ白に燃え尽きた表情で瓦礫の山を見つめていた。その両目からは、一筋のツーッとした涙がこぼれ落ちている。

 源田は、無表情のまま手元のタブレット端末をスワイプした。そして、恐ろしい速度で被害総額を冷徹に算出していく。


 カチャカチャと響く冷たいタップ音の後、源田は崩れ落ちている木島の前に立ち、画面を突きつけた。


「一発数百万円のレールガンの方が、修理費と賠償金のトータルコストで見れば、遥かに安上がりだったな」


 そこには、ゼロの数がいくつも並んだ、天文学的な額の損害賠償請求書が表示されていた。


「そ、そんなぁぁぁぁぁっ!!」


 地下実験場に、マッドサイエンティストの断末魔のような絶叫が虚しく響き渡る。

 その悲惨な光景を少し離れた安全圏から眺めながら、ヒミコは持参していたツナマヨおにぎりを一口かじり、「……ん。やっぱり、人間が一番すごい」と、マイペースに呟くのであった。



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