エルフの森へ
本話からちょっと書き方が変わります
長いようで短かったサンカの街を出たレージは、未知の分岐点でヒマーリと別れを惜しんでいた。
「行くのですね」
紅い髪を煌びやかに靡かせ、エミリアは惜しむ瞳をレージに向ける。その切なげな言葉は空気に溶け、その様はまるで離れ離れになる恋人のようだった。
彼女の雰囲気に当てられ、レージは返す言葉が出てこない。この街を離れることに後ろめたさすら感じるほどの重たい空気に、レージは何も言えないで居た。
そんなレージを見かねて、エミリアの後ろに回ったローラが助け舟を出す。
「何よエミリア。いい雰囲気だしちゃって」
実際はただの揶揄い目的だったようだが、それでもレージからすれば有り難いことだった。
エミリアは顔を赤面させて咄嗟にローラへと振り返る。そこに、ニヤニヤと笑みを浮かべるメンバーと驚いて駆け寄るリーシャが殺到する。
「へー……?」
「え、エミリアさん!?」
「ほほう……そうかそう――」
各々がそれぞれの反応を示す中、エミリアの傍らに立って煽ろうとしたキーラだけは腹に強烈な一撃を食らって沈黙した。キーラにとって予想外だったのか、不意打ちに近い一撃がキーラを襲ったようで、確実に一瞬呼吸が止まっていた。彼女だけはという意思が感じられる一撃だった。まあ、自業自得なわけだが。
とはいえ、目の前でキーラが沈んだとしても他のメンバーからが静かになる訳ではない。地に伏してピクピクと痙攣しているキーラを尻目に、何やら女子会的なものが始まってしまったため、レージは困り顔で事の成り行きを見守る。だが、そんなレージと目が合った者が居た。たまたまではなく、ずっとこちらを見ていた彼女が歩み寄る。
「これ……皆で作ったの……良かったら……」
一人女子会に参加していなかったアマリアからバスケットを渡された。中から調理されたパンや野菜の匂いがするため、それが弁当であることが分かる。バスケットは顔より大きい程度のものだったが、冒険に持って歩くには邪魔になる。しかし、魔法のポーチに入れて仕舞う事ができるレージは別だった。少し弁当を眺め、すぐにポーチに仕舞う。
礼を言おうとアマリアを見ると、彼女は視線を外し、まだ何か言いたげにしていた。
「エルフたちは警戒心が強いから……攻撃されないように気を付けて……」
恥ずかしそうに手を組みながらも、心配した顔で、途切れとぎれに言葉を紡ぐ彼女は、言葉尻と共に大きな体を縮こませてしまった。
その健気な姿に、レージは思わず自然に笑って感謝を伝える。
「ありがとう。君こそ気を付けて」
「う、うん……」
アマリアはさらに小さくなり、身体をレージの正面から逸らした。その身体全身で恥ずかしいという気持ちを表現しているようである。
話すことが苦手なのは伝わってくるが、それでも教えてくれた彼女に優しい気持ちで微笑んだ。気づけば周囲は静かになっていて、両社はつかず離れずの距離を保つ。
しかし二人の距離は大きく縮まっていた。その空気を甘いものだと勘違いしたものが間に割って入る。
「綿さん……わたさんぞ……」
エミリアから受けたダメージが大きく、上半身を前に倒しながら突かれた腹を抑えるキーラに睨みつけられる。しかしすぐに、エミリアに首根っこを押さえられ、唸り声を上げながらキーラは後ろに下げられた。代わりにエミリアが会話を引き継ぐ。
「レージさん。無理してはダメですよ?」
「ああ……じゃあ、また」
エミリアの言葉に短く返答を返した後、レージは昨日まで通っていた道の反対へと進む。途中で聞こえてくる涙声に軽く手を振って応え、それは斜面になった道が彼女たちの姿を隠すまで続いた。
レージは少しだけ“楽しい”という感覚を味わいながら、この道の先にあるエルフの国「トリエント」に向かう。
レージが見えなくなった後、キーラはがっかりしたような感情を覚えていた。独り言のような声量で隣のエミリアに言う。
「……いったか。不思議なおとこだったな。奴は」
彼について考えを巡らせるキーラの呟きに、エミリアが微笑して楽しそうに答える。
「ふふ……そうね。不思議なヒトだったわね」
奴が何者なのかは分からなかった。一見すると普通で、しかしどこか致命的に欠けているような感じがした。それは知識的なモノなのか、感情的なモノなのか、それとも――
結局のところはよく分からない。ただ、奴を見ていて一つだけ分かったことがある。奴は――
――奴は、私に似ている。
隣ではリーシャが未だ涙を流し、ローラがハンカチでそれを拭いている。フランとレイはリーシャを慰め、アマリアは未だに恥ずかしそうに俯いていた。
再び、エミリアとキーラは奴の進む道を眺める。不思議と別れを惜しむ感情を覚えていたが、しかし同時に、キーラの楽園≪ヒマーリ≫をかき乱したレージに強い怒りが湧き上がっていた。
次に会った時は――
キーラは強く拳を握りしめた。
幻霧の森を横目に、レージは代わり映えのない道を歩いている。
時刻はまだ早朝。夜行性の動物は眠りにつき、日中に活動する動物は目覚め始める時間帯。周囲にはレージ以外の人影が全くない。静まり返った道を、先ほどまでの賑やかな空気の余韻に浸りながら一人寂しく歩き続ける。
代わり映えのない道をかなり歩き、太陽が辺りを眩いくらいに照らし始めた頃、ようやく横に見えていた幻霧の森が途切れた。道の突き当りには看板が立っており、その奥にはまた森がある。だがそれが幻霧の森と繋がっている様子はなく、全く別の森であることが窺える。
看板によれば、左の道からエルフの森に入れるようだ。
「左か……」
緩やかにカーブしている左の道を見るが、一応右の道も眺めてみる。森と森の間に挟まれたそこは、まるで獣道のような道だった。地面の多くが緑に覆われていることから、人の往来は少ない様子だ。しかし、昔は大勢の者がここを通っていたのかもしれない。
その先が気にはなるが、方角的にそちらには行きたくない。そのため、レージは素直に左の道を進む。緑の外縁を歩き、太陽が高くまで昇った頃にようやく「エルフの森」と書かれた看板を発見した。薄々は勘付いていたが、先ほどから見ていたこの森が目的地だったようだ。
すぐに中に入ろうかとも思ったが、弁当を持たされていたことを思い出す。森に何があるか分からない以上、今のうちに食べてしまった方が安全だ。
森に少し入り、歩いていた道の見える木陰に腰を下ろして、ポーチからバスケットを取り出した。早速蓋を開けて弁当を確認する。
「サンドイッチ……だよな? あれも……」
中に入っていたのは、手に取りやすい大きさに薄く切り取られたパンに具材を挟んだ物だった。明らかに綺麗で美味しそうな物が二つ、普通に美味しそうな物が二つ、多少形が崩れた物が一つ、それっぽい形をしているが完全に異物なのが一つ入っていた。最後の一つが強烈に主張するせいで、本当に食べても良い物なのかと疑ってしまう。
ひとまずそれは見なかったことにして、最初に綺麗なのを二つ食べてみる。シャキッと瑞々しい野菜にソースが合う、具材の味を存分に引き立てられた非常に美味しい物だった。次いでその隣を食べる。先のと比較すれば見劣りするが、味としては非常に美味しい物だった。そして次、多少形が崩れた物を食べたが、極端に言えば、ただ切って挟むだけの料理で悪くなるわけがない。使っているものも同じで、パクリと食べてみても大して可笑しなところはない。味は悪くない。
「うん。大丈夫……だいじょう――」
最後に異常なえぐみを感じ、思わず咀嚼が止まる。一体何かと思えば、弁当に残る最後のサンドイッチの側面に汁が染み込んでいるのを視界に捉えた。恐らくあれが移ったのだろう。
レージは口に残った物を全てのみこみ、サンドイッチのような異質な何かを見つめる。
正直言ってあれは食べたくない。しかし、せっかく作って貰った物だ。食べないのは流石に失礼ではないか。
しばしの葛藤の後、意を決してサンドイッチを手に取り、一息に口へと運んだ。同時に感じる圧倒的な刺激、そして後からくる苦味やえぐみ。まるで片っ端からスパイスやら何やらを突っ込んだような一貫性のない味は、味覚に疎いレージをも悶絶させる。
「ふぐっ……!」
急いで水筒を取り出して、口の中にあるものを水と共に胃へと流し込んだ。喉元過ぎれば熱さを忘れるとは言うが、まだ幻肢痛のように口に残っている。舌がヒリヒリしている。
生まれてこの方、大抵の食べ物は好き嫌いなく食べてきたが、流石にこれは限度を超えている。
「ふはぁ……二度と食わん」
次、彼女たちと会った時には、こんなものを作る前に止めるよう伝えよう。
レージは彼女たちとの思い出の一つとして、このことを頭の隅に留めて置こうと考えた。
気を取り直し、レージは森を注意深く見渡した。幻霧の森とは違い、木漏れ日が差し、風が気持ちい穏やかな森といった印象だ。木々は幻霧の森の物と比べれば細く、草も背丈が低いため見通しが良い。索敵しやすく隠れる場所にも困らない、そんな場所だ。
偶然このようになったとは考え難い。ここはエルフの森、エルフたちが誇る自然の要塞。これらも備えの内なのだろう。
見える限り続く緑は何処までも永遠に続いているように感じ、この森の広大さを物語っているようだった。どの方角に何があるのか不明のため、レージは取り合えず真っ直ぐに歩みを進めた。
「ん?」
周囲に気を配りながら幻霧の森で例えれば中腹くらいまで進んだ頃、不意に何かを感じて立ち止まった。違和感の方向に視線を向けると、何かが木々を伝って近づいてきていることが見え、反射的に身構えた。
目の前まで近づいたそれは、樹上から姿を現して目の前に飛び降りた。
「おにいさん、だあれ?」
目の前に現れたのは、緑色の服を着た幼い子供だった。髪は服と同じ鮮やかな緑色で、目鼻立ちは人形のように整っている。先端の尖った蝶の羽のような耳と、薄い緑の瞳が特徴的だ。
子供は、小首を傾げてレージに近づいてくる。警戒心を持ってその子を見るレージだったが、敵意のないその態度を受けて警戒を解いた。訝しく思いつつも地面に膝をつき、目線の高さを合わせて子供と対話する。
「僕はレージって言うんだ。森の外から来たんだけど……君は?」
不信感を抱かれないよう、努めて優しく問う。少年は純真に満面の笑みを浮かべ、レージに元気よく名乗った。
「マーティ!」
嬉しそうにレージに寄ってくるこの子――マーティは、純粋無垢な眼差しをレージに向ける。
マーティに抱いた疑心や自身の後ろめたさと相まって、キラキラとしたその眼差しに浄化されてしまいそうだ。しかし、圧倒されている場合ではないと気を確かに持つ。
一切の疑いも持たないマーティの頭を撫でながら質問を続ける。
「マーティはエルフなの?」
「うん!」
ここに来ているはずの悪魔は見つかっていないが、エルフの方とは出会うことはできたようだ。子ども一人なのが気になるが、この近くに大人のエルフが居るということだろうか。それにしては、周囲に人影の一つも見えないし、そのようなモノは何も感じない。そもそも、マーティはかなり遠くから来たように思える。
気になったレージは逸る気持ちを抑え、努めて穏やかにマーティへ次の質問をする。
「どこから来たの? 大人たちは?」
マーティは振り向き、自分が来た方向に指し示してから答える。
「あっち!」
指さした方向には何の変哲もない木々しかなかったが、少なくとも直接見えない遠くから来たことは分かった。抽象的な返答とは言え、向かうべき方角が分かったことは僥倖と言えよう。
だがすぐ別の疑問が湧いてくる。事前に聞いていた説明では、エルフは警戒心がとても強いとのことだった。しかし、目の前のエルフは欠片も警戒心を示さない。そもそも、なぜ離れた住処からわざわざここまで来たのだろう。それも子供一人でだ。
レージはニコニコと笑顔を浮かべ続けているマーティへ簡単に疑問をぶつける。
「どうしてマーティはここまで来たの?」
「あのね、おうちからおっきな妖精さんが見えたの。それで来たらおにいさんがいたの」
レージは周囲を見渡すが、おっきな妖精さんなど何処にもいない。それどころか動物の一匹もいやしない。ここに居るのは自分とこの子だけだ。
偶然にしては出来過ぎている。となると、その妖精とレージを見間違えたということになるが、その可能性には首を捻らざるを得ない。遠くからこちらを見ることなど不可能なのだ。木々など複数の遮蔽物越しに何かを見ることなどできる訳がない。視力が良いというレベルの話しではない。
不自然なことではあるが、レージはエルフについて詳しいわけではないと考えを改める。魔力に対する適性が極端に高い魔力のように、“目が良い”というのがこの種族の固有能力なのかもしれない。この子だけという可能性もありうるが。
「どうかしたの?」
ニコニコとしていたマーティが、今度は不思議そうにレージを覗き込む。レージは頭を優しく撫でてそれに応えた。
この子にこれ以上を訊いても仕方ないだろう。まだ情報が少ないため、ここでこれ以上考えても仕方がない。
「マーティ、大人の居る所まで案内してくれないか?」
「いいよ! こっちこっち!」
マーティはレージの腕を引っ張って走り出す。引っ張られてレージも走り出すが前を駆けるマーティは思いのほか速く、レージは慌てながらも速度を合わせて付いて行った。
どれくらい走っただろう。想像をはるかに超えた距離を走ったレージは、幼い子供相手にそこはかとない戦慄を覚えていた。
それなりの距離があるのは理解していたが、マーティの行動範囲はとても子供のそれとは思えない。いくら森の住人といえど、これは流石におかしいことだ。はっきり分かる。この子がおかしい。
一般的なエルフに対する認識を改める必要があると考え始めたところで、地上や樹上に幾つもの気配を察知した。マーティも速度を落とし始め、気配の近くで立ち止まった。レージもその隣で止まる。
「トト!」
笑顔を浮かべたマーティが地上に居るエルフの女性の名を呼んだ。女性は涙ぐみながらそれに応える。
「マーティ様! いまお助け致しますぅ!」
女性が叫ぶと、周囲のエルフたちが一斉に弓に矢を添える。まだ弓を下げてはいるが、いつでも打てるように準備している。聞いていた通りの警戒心だった。
不意に樹上から矢が飛んでくる。しかし、反射的に魔法で風を生み出したレージに当たることはなく、矢はレージから逸れて後ろの木に刺さった。
数人のエルフがレージを睨みつけ、矢を持ち上げる。だが、矢を持ち上げなかったエルフの一人が樹上から叱責する。
「アーシア! 何を勝手なことを!」
叱責されたエルフは話しを聞く様子はなく、躊躇なく次の矢を射かける。騒ぎを聞きつけた仲間が駆け付け、辺りは騒然となった。
「ふぇ……」
どう対応したものかと思案していると、レージの影に隠れるようにしがみついていたマーティの目に涙が溜まる。いま泣かれると流石に不味いと思い、すぐさま頭を撫でて宥める。
「おーおー、大丈夫だからな」
「う……うん……」
マーティの頭を撫でている時は攻撃が止み、エルフたちは様子を窺う。だがレージのその行為は、駆け付けたうちの一人の怒髪天を衝く。
「く……! 総員、攻撃! 王子を奪還しなさい!」
白っぽい厚手のローブを身に纏う指揮官のような女性が、怒鳴るような声でレージへの攻撃を指示した。周りのエルフたちは乗り気ではない様子だったが、渋々矢を射かける。矢の数が増えるにつれて、レージの魔法も威力を増していく。全員が総攻撃を仕掛ける頃には、樹上に止まって居られないほどに強い暴風へと変わっていた。攻撃どころではなくなったエルフたちの手が止まり、それを確認したレージの魔法も消える。辺りには静寂だけが残った。
しかし、一人のエルフが矢を番える。レージもそれに応じて魔法を再展開しようとしたその時、それらを固く鋭い声が制止する。
「止めなさい!」
その威厳ある声に、エルフたちは一斉に振り向く。足元で震えていたマーティもその声を聞いて勢いよく顔を上げた。
そこに居たのは、艶やかな緑色のドレスを着た女性だった。明らかに高貴な外見をする女性は、こちらを見透かすような視線を送る。しかし、その表情はすぐに穏やかなものへと変化した。
「私はトリエントの王、マーリナ・トリエントです。貴方はどちら様でしょう?」
女性――マーリナは、一転して柔らかい声でレージに問いかける。そこで、足元で震えていたマーティが、マーリナの姿を確認して跳び付いた。
「ママー!」
文字通り胸に跳び付いたマーティを、マーリナは優しく抱擁する。愛おしい目でその顔を撫でるマーリナだったが、再びレージに視線を向けた。
「僕はレージ。悪魔を追ってここまで来た」
周囲のエルフたちが“悪魔”の言葉に反応して騒ぎ出す。しかし、一人のエルフはレージを睨みつけ、弓を番えて引き絞る。
「止めなさい」
「しかし……」
マーリナの制止を受けても弓を下げないエルフだったが、彼女の威圧するような視線に堪らず弓を下した。他のエルフにも同様の視線を送ってからレージとの対話を続ける。
「悪魔ですか?」
「ああ。僕は人族の街から来たんだが、そこで悪魔がこの森に行くと言っていたのを聞いた」
レージは淡々と事実を話し、マーリナは静かにそれを聞く。周りの視線がマーリナに集中し、今か今かと次の指示を待つ。しかし、次に声を発したのは、マーリナの胸元でぐずぐず泣いていたマーティだった。マーティは上目遣いでマーリナを見る。
「おにいさん、連れてきたらだめだった?」
マーリナはマーティの瞳をジッと見つめる。こちらが不安になるほど真剣に見つめるが、次の瞬間には穏やかな笑顔へと戻っていた。
「いいえ、そんなことはありません。お客様として屋敷に来て頂きましょう」
「ほんと?」
勝手に進み始めた話しに、その場に居た者全てが驚きを表した。当然、その中には当事者のレージも入っている。
「え……いや、それは……」
レージは咄嗟に断るための言い訳を考える。
なぜなら、周りのエルフたちから歓迎されているとは言い難いこの状況で、碌な会話すらすることなく弓を射かけるような相手に何をされるか分かったものではないからだ。ちょっと聞き込みをしてすぐに離れるつもりだったのだが、エルフたちの生活圏にまで入ってしまえば行動が大きく制限されてしまうだろうし、マーティの件もある。いざとなれば力技で何とでもなりそうではあるが、できるだけ穏便にしたいため憚られる。
レージは断ろうと考えているが、大喜びするマーティがレージの傍らまで駆け寄って来る。護衛は止めようとする意志は見せるが、その背へ咄嗟に手を伸ばす程度だった。
「おにいさん行こ!」
「え、ええっとなぁ……」
満面の笑みを見せるマーティは、レージの返答を待たずにその手を取る。レージはどうにかして断ろうと考えるが、有無を言わせず引っ張られて行く。結局、マーティの笑顔には敵わず、隣にエルフの国の女王に張り付かれたのを最後に、諦めて受け入れざるを得なかった。




