三日目~謎の過去~
「お風呂は始めて? 」
隣でリオンが騒いでいる中、リーナは聞く。
「うん。」
サナは少し緊張しながら答える。
「頭洗うから目つぶっててね。」
サナは目を固く瞑る。
それを見てリーナは頭にシャワー
をかけ始める。サナは気持ちよさ
そうだ。
リーナは丁寧にサナの綺麗な長い
金色の髪を洗って行く。
そして二人は体を洗い終え、浴槽
にゆっくりと入る。
「私のどこがこわいの?」
リオンの声が聞こえなくなったので、今の一番の疑問をサナに聞く。
「....」
サナは黙って俯いている。
「黙ってちゃ分からないよ。」
リーナが優しく聞く。
「....女の人が苦手なの。」
サナが小さな声で言う。
「どうして?」
リーナがまたゆっくりと、優しく、
たずねる。
「.....」
サナはまた黙る。リーナはサナが口を開く時を静かに待つ。
「なんで!?」
隣からリオンの大きな声が
聞こえてくる。サナは体をビクッとさせる。リーナがなにか言おうとする。
「その時はできなかったんだ!!」
今度はジランの大きな怒鳴り声。リーナは動揺する。
(ジランがあんなに取り乱すなんて。あっちでなに話してるんだろう?)
リーナは不安になる。サナが今の声
で決心したようで話しはじめる。
「あのね、一週間前にね、すてられてね、女の人に拾われたの。」
サナが少しずつ言葉を口にする。
向こうは静かになっている。
「そしたらね、家につれていかれたの。その時はうれしかった。でも」
サナの言葉が少し途切れる。
「そのあと手と足に縄つけられて叩かれたの。なんども、なんども。」
サナの声が震える。リーナは黙って聞く。
「でも我慢しようと思ったの。そしたらその次の日の朝、町につれていかれて....」
サナの言葉が途切れる。
リーナが優しくサナを抱き締める。
サナはそのリーナの腕の中で大声で泣いた。
しばらくサナは泣き続けた。
「そんなの酷すぎるよ!」
その間にもリオンの声は聞こえて来たが、ジランの声はサナの泣き声で
聞こえなかった。
「もう大丈夫?」
泣きやんできたサナにリーナが聞く。
「....うん。」
「じゃあ、上がろっか。」
リーナ達は浴場を出る。リオンの声はさっきのを最後になにも聞こえなくなった。
「まだ上がってきてないね。」
「うん....」
サナもさっきの声が聞こえていたようで心配している。
「これが力を隠す理由だ。」
ジランはそこで一旦、止める。
「.....」
リオンは俯き、黙っている。
「....そろそろ上がるか。」
「...うん。」
二人は浴場から出る。
外に出た時には二人はもうすでに
上がっていた。
「気持ち良かったね。」
リーナが二人に言う。
「...ああ。そうだな。」
ジランは少し間を開けて言う。
その表情は少し暗かった。
リオンは黙っている。静かな時が流れる。
「部屋に、もどるか。」
「うん....」
ジランが歩き出し三人が続く。
一番後ろにリオンが黙って歩く。
ジランが自分の部屋の鍵を開け、中に入る。
「サナ。リーナのところに行ってこい。いろいろ話したいだろ。」
ジランが部屋に入ってこようとするサナに言う。
「え....うん。分かった。」
サナは隣の部屋に行く。
「ふぅ。」
ジランは大きめのため息をつく。
「.....」
ジランは座禅をくみ、瞑想をし始める。
「なにがあったの?」
リーナは布団に潜り、少しも動かない。
「......」
リオンはなにも言わない。
「うーん。ジランに直接聞いてこようかな?」
リオンの体がぴくっと動く。が
それ以上の反応はない。
リーナは立ち上がり部屋を出る。
隣の部屋に入ろうとドアノブに手を
かける。しかし、部屋から妙な力が
溢れてくる。
(なに?この禍々しい空気は。)
リーナはその力に恐怖を覚えながらも、ガチャリと扉を開ける。
中はとても静かだった。
さっきの感じた力はなんだったのかと思いながら中に入る。部屋には
ジランが座禅をくみ、瞑想していた。リーナはジランの顔に近づいて
見る。
「なんだ?」
ジランが口を開く。
「わっ!びっくりした。」
リーナは突然のことで驚く。
「なにしてたの?」
リーナはジランから離れてから聞く。
「見てて分かったろ?」
「...いつから気づいてたの?」
「入ってきてすぐ。」
リーナはやっぱりなと思った。そもそも扉のガチャリという音で気づくはずだし、人の気配でわかるはずだからだ。
「じゃあなんでなにも言わなかったの?」
「じゃまされたくなかったから。」
ジランがいうのは多分瞑想のことだろう。ジランは座禅を崩して胡座をかく。
「邪魔した?」
「ああ。まあもう終わったからいいよ。」
いつものジランの様子に少し安心
しながらリーナは本題に入る。
「リオンになに話したの?」
「なんでもいいだろ?」
少し面倒そうにジランは言う。
「よくないよ。あんな大きい声ジランがだすの珍しいもん。心配になるよ。」
リーナは少し悲しそうに言う。
「....ごめんな。でも、このことはまだ言えない。いつか話すよ。リオンは放っておいてあげてくれ。」
ジランは少し間を開けてから話す。
「...分かった。」
リーナは他にもいろいろ聞きたかったが、ジランの表情が暗かったので、もう追求をやめることにする。
「ねるときはどっちかの子供をこっちにいかせてくれ。」
扉を開けたリーナに後ろからジランが言う。
「今日は三人で寝るよ。ジランは一人でも問題ないでしょ?」
リーナが精一杯の笑顔で言う。
「...ありがとな。」
ジランがリーナに言う。
「うん。」
リーナは扉を閉め、とても小さく、
ため息をつく。
ジランはもう一度座禅をくみ、瞑想
をはじめる。
「ふぁー...」
リーナは布団から起き上がり、大きく伸びをする。子供二人を起こさないように部屋を出て浴場に向かう。
あのあとサナはそのまま一緒に寝て、リオンは布団に潜ったままねてしまった。
浴場で体を洗い、なにごともなく
浴場を出た。
(まだ二人は寝てるかな。)
現在時刻は五時。起きるには早すぎた。
(ジランのところに行こ。もう大丈夫だと思うし。)
リーナはジランの部屋の扉を開ける。
鍵は閉まっていなかった。だが、
そこには誰もいなかった。
「...どこいったんだろ。」
リーナの胸が不安でいっぱいになる。
「やることもないし。探しに行こう。」
宿屋から出て適当に歩く。
三十分ほど探したが、どこにもいない。
「あとは彼処だけか。」
ふぅとため息をつきながら、町のはしっこのほうにある高い塔を見る。
あの塔にいなければ、ジランは外に出たということになる。
「絶対いるよね。」
リーナは自分に言い聞かせるように言いながら塔に向かう。中は階段が
何重にもぐるぐると壁にそって巻いてある。リーナはそこを十分かけて上る。
頂上にジランがいた。塔の柵から町を見ていた。
「ジラン!」
リーナはジランに駆け寄り、背中に飛びつく。
「探したんだよ?」
リーナが声を震わせながら言う。
「ジラン?」
なんの反応もないジランを不思議に
思い、リーナが声をかける。
「ああ。悪かった。ごめんな。」
ジランが振り向きながら言う。
「いったいいつからここにいたの?」
リーナはジランから離れながら言う。
「お前が部屋から出てってから一時間くらいしてからだな。」
「なにしてたの?」
リーナは昨日と同じ質問を聞く。
「ここでずっと瞑想してた。」
「じゃあさっきも?」
「さっきのはただぼーっと町を見ていただけだよ。」
「じゃあもう大丈夫なの?」
「ああ。」
ジランがはっきりと答える。
「じゃあ、戻ろ?」
ジランの手を引きながら、リーナは言う。
「ああ、そうだな。」
ジラン達は歩きだす。




