二日目~精霊~
「まさか妖精のすみかに行く途中で妖精にからまれるとはな。」
ジランは町から出て一時間くらい
歩いたところで羽のはえた子供にからまれていた。見た目では少女が三人、少年が二人といった感じだ。だが一人の少女だけ羽がはえていない。
「依頼の妖精と違うじゃねえか。」
依頼で退治する妖精は人差し指と
同じ大きさだ。妖精のなかにもいろいろな種類の妖精がいる。基本は
大きくなるごとに強くなる。
「これじゃあCランク並だぞ。」
「ぶつぶつ言ってないで、さっさと物だけ置いてどっか行け!」
ジランの前で少年が叫ぶ。
「あいにく、何も持ってねぇよ。」
「じゃあ服でいい。」
「絶対に嫌だね。」
ジランは必要な言葉だけ言う。
「ねぇ、もうやめようよ。」
羽のはえていない少女が言う。
「ちょうどいい。お前、あいつとやれ。」
「嫌だよ!」
「妖精に逆らった罰だ。それとも、お前は自分は関係ないとでも言うのか?自分が妖精じゃないからって。いいよ。分かった。お前はもう仲間じゃない。」
「...やるよ。やるから許して...」
「じゃあさっさとやれ。」
「うん。」
少女は涙目でジランの前に歩いて来る。少年は後ろに下がる。
「お前、ハーフだな。」
ジランが自分の目の前に来た少女に言う。
「精霊と人間の。捨てられたのか?」
さらにジランが言う。
「なんで分かったの?」
少女は涙を目に溜め、言う。
「そういう気配がするからだ。どうだ?俺と一緒に来ないか?」
ジランが言う。
「なんで?」
少女の声は震えている。
「可哀想だから。あいつらはお前のこと、仲間だと思ってないんじゃないか?」
「分かってる。そんなことわかってるよ!!」
少女は泣きながら叫ぶ。
「じゃあこいよ。」
ジランは驚いた様子もなく、冷静に
言う。
「私が倒れているところを助けてくれたんだよ。そんな裏切ることは
できないよ。」
「利用したかっただけだろ。」
「おい、さっさとやれ!」
遠くにいる少年が叫ぶ。妖精は耳がいい。さっきの話を全部聞いていた。だからまずいと思った。三日前に拾った精霊が利用する前にどこかに消えてしまうと、自分達が
食料を与えた分損をするからだ。
「ごめんなさい。」
「なにがだ?」
少女は答えない。
「できるだけ痛くないようにするから。」
少女は両手を前に構える。
「ウインド」
少女の手から風の塊が飛び出す。
ジランは少女が「ウ」を発した時点で横にとんでいたので、当たらない。
「風の魔法か。ウインド!」
ジランは風のグローブをはめている。
「ウインド」
少女はそこから一歩もうごかず、
風の塊を飛ばす。
風の塊同士がぶつかり、消える。
「戦いが終わったあとにもう一度聞く!」
ジランが少女に向かって叫び、距離をとる。
「...ウインドクロス!」
X型の風がジランに向かって飛んでくる。
ジランはこれも横に飛んでかわし、
「ウインドキャノン!」
大きな風の塊を放つ。
「トルネード!」
少女は目の前に細長い竜巻をおこす。
ジランのウインドキャノンは少女の
作り出した竜巻に飲まれ、消える。
「無理か。」
ジランはポツリと呟く。竜巻がゆっくりとジランに近づいてくるが、
まだ距離がある。
「リーナもいないし、いいよな。
できれば力は使いたくなかったけど。」
ジランから凄まじい力が溢れだす。
「死ぬのと生きるの、どっちがいい?」
ジランは少女ではなく後ろにいる妖精達に聞く。
「ひぃぃ!」
妖精達は慌てて逃げ出す。
「仲間をおいて逃げるようなやつらを本当に仲間だと思えるか?」
ジランが少女に近づきながら問う。
「.....」
少女は膝をかくんと落とす。それと同時に竜巻は消えた。
「だからいっただろ?」
少女はしゅんと項垂れる。ジランが
頭をぽん、と叩く。
「一緒にこないか?」
ジランがもう一度、少女の頭をぽんぽん叩きながら聞く。
少女は目に涙をためながら
「私はあなたに怪我させようとしたんだよ?」
「それがどうした?一緒に来るかこないか。どっちだ?」
少女は黙って頷く。今にも泣き出しそうだ。
「よし、行くか。乗れ。」
少女に向かって、ジランがしゃがみ、言う。少女はジランの背中に乗る。
少女はジランの背中で泣き続けた。
「ここが妖精の住みかか。」
ジランはそのあと三十分くらいで
目的地についた。
「これくらい広かったら充分楽に
戦えるな。」
少女は泣き疲れたようでジランの
背中で眠っている。
「誰なの?」
小さな妖精が湖から姿を現す。
「お前らか。略奪をしたのは。」
「ええ。それがどうしたの?」
妖精は平然とした様子で答えた。
「だからもう襲わないように捕まえに来たんだよ。」
「人間が私達妖精を捕まえられると思う?」
妖精はくすくす笑う。ジランはいらっとしたが、顔は崩さない。
「まあ、虫籠がないから今日は
無理だな。明日また来てやるよ。
じゃあな。」
ジランは妖精に背を向け帰ろうとする。
「私と話したんだからなにか置いて帰りなさいよ。」
「あいにく、なにも持っていない。」
「もってるじゃないの。」
ジランはもう歩き出している。
「なにをだ?」
「背中にいる精霊よ。精霊のエネルギーはおいしいのよね。」
瞬間、妖精の頬を掠め、なにかがヒュン、と音をたてて通過した。
妖精の頬から血が出る。
「もう一度聞く。なにをだ?」
ジランからはなにか黒いオーラが
出ている。
「な、なにもないわ。明日覚悟しなさいよ!」
妖精はそそくさに姿を消した。
「せいぜい最後の時間を楽しむんだな。」
ジランはそういってそこから離れた。
(意外とあまり時間はかからなかったな。)
ジランは町の入り口の前に立っていた。現在時刻は五時半。
ジランは町の中に入り宿屋へ向かう。
「昨日ここに止まったんですが、
もう一晩おねがいします。」
「はい、分かりました。千ゼンおねがいします。」
「はい。」
ジランはカウンターに硬貨を十枚
置く。
「それでは、ごゆっくり。」
ジランは頭を下げ、二階に上がり、
自分の部屋に入った。
(リーナ達はまだみたいだな。)
背中で寝ている少女を布団に寝かし、
リュックから食料を取り出して食べる。
食べ終わると食料を机の上に置き、浴場に向かう。
それから五分後少女が目を覚ます。
目を擦り大きく伸びをする。
机の上に置いてある食料を見つけ、
食べ始める。少しすると扉がガチャリと開き、ジランが入ってくる。
「よう、気分はどうだ?」
「...」
「そんなによくないみたいだな。」
ジランが少女の様子を見て言う。
「俺にも仲間がいるんだけどな。
力のことは言わないでくれよ?」
「どうして?」
「俺にとって都合が悪いからだよ。まあお前と同じくらいの年の子は気づいてるんだがな。名前は?」
ジランがまだ名前を聞いていないことを思いだす。
「セナ。」
「何歳だ?」
「六歳。」
「そうか。まあこれからよろしくな。」
「うん。」
しばらく沈黙が続く。
「散歩でも行こうか。」
ジランが立ち上がる。セナも立ち上がったので行くと言うことだろう。
ジランが扉を開ける。




