三日目~神秘~
ジランの手に銀色の霧が集まる。
そしてその霧は銀色の一本の長い棒の形になる。長さは腕一本分。
「それが君の武器かい?」
男がジランに聞く。
「まあな。あと数個あるが。」
ジランはそれに答える。
「それが本気じゃないということか?」
再び、男がジランに聞く。
「そっちも本気じゃないだろ。
いくぞ!」
ジランが男に向かって駆け出す。
ジランが男に近づき、銀の棒を横に
振る。
男はそれをジランに近づくように飛んでかわし、剣を頭の上に両手で振り上げ、ジランの頭に降り下ろす。
ジランはそれを横に少し動いてかわす。男の剣が空を斬る。
男が着地した瞬間にジランは棒を
相手の右腕を狙って振る。
男は斬り下ろしていた剣を持ち上げ
、受け止める。そこで十数回、キン、と剣と棒が交わる。
ただ、武器の長さはジランのほうが
短い。ジランの方が接近戦では有利
と男は判断し、後ろに下がり、距離をとる。
ジランは体勢を立て直し、後ろに下がる。
「ブラックブラスト!」
男はジランが下がったと同時に黒い大きい玉を放つ。
ジランは空いている左手を玉にむけ、吸収する。
玉が消えるとすぐ前に男がいた。
玉を撃ったと同時に走ったのだろう。玉のせいでジランには男の姿が
見えていなかった。男はジランに剣を斬り上げる。
ジランは大きく後ろに飛んでかわす。
「暗黒技・絶!」
男が剣を振り下ろす。すると、大きな黒い斬撃がジランにむかって飛ぶ。ジランは咄嗟に棒を横に持ち、
前に出す。黒い斬撃は棒に当たり、
爆発する。
「ぐあ!」
ジランは後ろに吹っ飛ぶ。背中で着地する。
「これで終わり?」
男はジランに聞く。
「...」
ジランはなにも言わない。
「じゃあぼくはいくよ。次は本気でやってね。」
男はゆらりと消えた。
「ふう。」
ジランはそのまま立とうとはしない。
なにか言おうと思ったが、言ったところで意味がない。
「はぁ。」
結局ただため息をつく。
「大丈夫?」
サナが心配そうに駆けよって来ていった。
二人も後からやってきた。
「俺は大丈夫だよ。」
サナの頭を優しく撫でる。サナは少し、表情が和らいだ。
「本当に大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。」
「...本気だせばよかったのに。」
リオンが誰にも聞こえないように小さな声で言った。
ジランは聞こえたが、放っておいた。サナが隣の木の根に座る。
「先いっといてくれ。あとから追い付く。」
「でも怪我してるじゃん。」
「ヒールがあるから大丈夫だ。」
「じゃあ今使えば」
「時間がかかるんだよ。」
「私はすぐにできるよ?」
「妖精捕まえるときにバテてたら
どうしようもないだろ?自分でやる。」
「私はそんなくらいじゃバテないよ。」
ジランは面倒くさくなってくる。話をしながら地面に胡座で座る。
「頼むから先行ってくれ。さっさと終わらせるためにも。」
「...分かった。」
リーナはジランが面倒くさくなっていることに気づき、渋々了解する。
「私、後からいくよ。」
サナがジランの隣で言う。
「わかった。じゃあジランと一緒に来てね。」
「うん。」
「妖精捕まえたら虫籠に入れといてくれ。」
ジランがリーナにリュックをつきつける。
「後から追い付くんじゃないの?」
「おいつけなかったら時間食うだろ?もしものため。俺が行くまでに終わってたら報酬金全部やるよ。」
「行ってきます!」
リーナは走り出す。慌ててリオンもついていく。
「終わったらここに帰ってこいよ!」
ジランが遠くのリーナ達にむかって言う。リーナは手を挙げた。
「疲れた...」
リーナ達が見えなくなって、ジランが呟く。
「さっきのことは気にしなくていいからな。」
サナが驚く。今言おうとしたことが当てられたからだ。
「...うん。」
サナは少し間を開けてから頷く。
「でも、痛そうだったよ?」
「でも治ったろ?」
「うん。」
サナはあのときのジランの魔力を
思い出して、少し怖くなる。
ー暗く、悲しく、強い力。
サナが感じたことのない、恐ろしい力だった。
「さてと。なにするかな。」
ジランが両手をぐぐーと伸ばす。
「怪我治さなくていいの?」
「んー面倒くさい。」
「じゃあ一緒にいけたんじゃ?」
「たまにな、一人になりたいときがあるんだよ。もう追いかける気もしないしな。」
「じゃあ私いないほうが良かった?」
サナが不安そうにする。
「大丈夫だ。」
「なんで?」
「さあな。」
サナが立ち上がりジランの後ろに立つ。
「とりあえず、傷治すよ。」
サナの手に優しい緑の光が灯る。
「大丈夫だって。あいつらのこと
心配じゃないか?」
ジランがサナが心配になっていないかチェックする。
「ぜんぜん?じゃ、治すよ。」
そういうと緑の光をジランに当てる。
「それじゃあ治らないぞ。」
「なんで?」
「回復速度が遅いからだ。」
「ひどい怪我なの?」
「...まあな。」
「じゃあすぐ治さないと。」
「ほっといたらすぐ治るからほっといてくれ。」
「ほっといて治る怪我なんてあるの?」
「これは呪いみたいなもんだ。魔力をすいとって、体力を奪う。どういうことか、分かるな?」
サナがヒールをやめる。ヒールは
対象者に回復魔力を与えて回復させる。つまり今ジランにあげた魔力は
すべてその呪いの糧になってしまっていた。
「...」
サナが俯く。
「これはほっとけば、勝手に魔力がなくなって自滅する。ほっとかないと治らないんだよ。まあ強力な治癒魔法を使えばべつだが。」
ジランはそこで言葉を止める。
「ごめんなさい。」
サナが声を震わせて言う。
「まあ言わなかった俺が悪かった。気にすんな。」
「でも」
「大丈夫だから。泣くなよ。」
「うん。」
声を震わせてサナが言う。
「よし、この森を探索するか。」
ジランが立ち上がる。
「あんまり動かないほうがいいんじゃ」
「いいから。」
ジランがサナの手を引く。
「う、うん。」
サナは困惑しながらも、されるがままにしている。
「ここだよね。」
リーナが地図を見ながらリオンに聞く。
「うん、多分。行こう。」
リオンが先に進む。
「一人で行ったら危ないよ。」
リーナが慌ててついていく。
森の中には小さな泉があった。
「ここかな?」
「...」
リーナが意識を集中させる。
「泉の中に五匹か。」
リーナが呟く。
「じゃあこの池吹き飛ばせばいいの?」
リオンが物騒なことをリーナに聞く。
「そんなことしたらジランにお金貰えなくなるよ。」
リーナは金のためにリオンのやろうとすることを制し、大きく息を吸い込む。
「妖精達ー!今の話聞いてればどうなるかわかるよねー!ここに入ったら許してあげるよー!」
リーナが大声で叫び、虫籠を開け、
地面に置く。
「後十ー秒ー」
リーナがそう叫ぶと妖精達がばしゃばしゃと出てきた。
「さーん、にー、いちー、ゼロ!
みんな入ったね。」
リーナががちゃんと虫籠をしめる。
中に五匹の妖精。
リーナはここに来て時、力を出して
妖精達を威嚇したので、妖精達は
怯えていた。だからすぐに出てきた。カウントダウンの五くらいで
全部入っていた。
「よし、おわりっと。行こ?」
「うん。早かったね。」
虫籠を持ち、二人はあるきだす。
「こんな神秘的なところがあったんだね。」
サナが言う。あのあと二人は適当に
歩き、ここにたどりついた。
森の中にとても横に大きな切り株。
なにか神秘的な力を感じさせた。
「ああ。サナ、下がってろ。ここからは俺の戦いだからな。手出すなよ?」
「うん、分かった。」
ジランは切り株の上に乗る。
《破人の異種の青年よ。こいつを倒すことができたなら特別な武器の力をやろう。》
どこからか声が響く。
するとジランの前の空間がゆれ、すぐ前にジランと同じ形をした、黒い影が現れた。
《この戦いでは剣以外の使用は
認めない。銀で戦闘能力を高めることもなしだ。構えろ。》
ジランの手に銀色の霧が集まる。




