第五話 これまでにない熱い夏
「あつ……」
梅雨が明け、本格的な夏がやってきた。
俺——榛名陸は、リビングのエアコンの風を直接浴びながらダラけていた。
両親が突然の海外出張に旅立ってから、季節はすっかり夏だ。
「……陸兄さん、アイス食べますか」
パタパタと足音を立ててやってきたのは、黒髪ロングの結衣だ。
相変わらずのポーカーフェイスだが、家の中ということもあってか、膝上丈の短いノースリーブワンピース姿。白い肩や脚が眩しくて、目のやり場に困る。
結衣は俺の隣にすとんと腰掛けると、箱から取り出したソーダ味のチューブアイスを「はい」と手渡してきた。
「サンキュ、結衣。助かる」
「……ん」
一口かじる。冷たさが体に染み渡る。
結衣は自分のアイスを不器用にちびちびと舐めながら、そっと俺の袖を掴んできた。
「……陸兄さん、冷たくて気持ちいいです」
「いや、俺は冷えてねえよ? 体温上がってるわ」
無防備に体温を寄せてくる結衣にヒヤヒヤしていると、廊下から勢いよくドタバタという足音が響いた。
「ただいまー! あつーい! 陸兄ちゃん、リビング冷えてるー!?」
ドカンとドアが開いて飛び込んできたのは、部活帰りの葵だった。
汗ばんだ肌に、ぴったりとした部活のTシャツとショートパンツ姿。抜群のスタイルが強調されていて、健康的な色気が凄まじい。
「葵、着替えてから……って、うわっ!?」
「アイス食べてる! あたしにも一口ちょうだい!」
冷気を感じて飛びついてきた葵に抱きつかれ、俺の理性がゴリゴリと削られていく。背中や腕に伝わる柔らかい感触と体温に、俺は思わず「鼻の下」が伸びそうになるのを必死で耐えた。
「……葵。汗かいてる。離れなさい」
「えー、結衣姉だって陸兄ちゃんにぴったりくっついてるじゃん!」
ぎゅーっと腕を絡めてくる葵と、静かにジト目を向ける結衣。
二人の義妹に挟まれてカオスになりかけたその時——。
ピンポーン!
激しく連打されるインターホン。
ドアを開けると、そこには汗をかきながら息を切らせた凛が立っていた。
「はぁ、はぁ……! 陸! 麦茶……じゃなくて! なにやってるのよ二人ともー!?」
凛は爽やかな薄手のサマードレス姿で、ほのかに甘い香水の香りを漂わせている。
だが、俺を両脇から挟み込む結衣と葵を見た瞬間、その顔は真っ赤に染まった。
「あ、凛先輩。こんにちは」
「凛先輩おはよー! 陸兄ちゃんのアイス奪い合い中だよー!」
「奪い合いって何よ! 陸、あんたもデレデレしないの! 妹たちが無防備だからって鼻の下伸ばさない!!」
「伸ばしてねえし、デレデレもしてねえ!!」
バッとリビングに上がり込んできた凛は、強引に俺と葵の間に割り込んできた。
しかし、その勢いで俺と凛の距離が急接近する。
「うわっ……!?」
「きゃっ……!?」
ふいに重なる視線。
最近すっかり「乙女」に変貌した凛の、潤んだ瞳と耳まで真っ赤になった顔が目の前にある。サマードレス越しに伝わる華奢な肩の感触に、俺の心臓は破裂しそうなほど跳ね上がった。
「……っ!? あ、あの、陸……その、近い……っ」
「お、お前が急に割り込んできたんだろ……!」
ドギマギして固まる俺と凛。昔はジャージ姿で一緒に転がっていたはずなのに、今の凛は完全に「恋する女の子」の顔をしている。
「……凛先輩。ズルいです。陸兄さんを独占しないでください」
「あたしもー! 陸兄ちゃん、プール行こ! プール!!」
「〜〜〜〜っっ!? ぷ、プール!?」
葵の「プール」というワードに、凛は一気に目を見開いて叫んだ。
「ダメよ! 水着なんてそんな……っ! 陸、あんた絶対鼻血出して倒れるんだからね! 私がしっかり監視してあげるんだから!!」
「だから伸ばしてねえって言ってるだろ……!」
「ふふん、凛先輩も行くなら着替えよ! 出発ー!」
葵の号令で、全員で市民プールへ向かうことになった。
「……お、待たせたか?」
着替えを済ませ、プールサイドのベンチで待っていた俺の元へ、三人がやってきた。
そして俺は、目の前の光景に完全にフリーズした。
「陸兄ちゃん! あたしの新しい水着、どうかな!?」
一番に駆け寄ってきた葵は、健康的なビキニ姿。スポーツで鍛えられた引き締まったウエストと、抜群のスタイルが惜しげもなく披露されている。
「……陸兄さん。私は、これにしました」
続いて歩み寄ってきた結衣は、シックな黒のワンピース水着。ポーカーフェイスのまま、照れくさそうに俺の袖をキュッと掴んでくる姿が破壊力抜群だ。
そして最後に、おずおずと物陰から出てきたのは凛だった。
「……っ、な、なにジロジロ見てるのよ……!」
凛が着ていたのは、フリルのついたパステルピンクのセパレート水着。
普段の強気な姿勢からは想像もつかないほど女の子らしい水着で、白く華奢な肌と大人っぽいスタイルが際立っている。顔を耳まで真っ赤にし、必死に胸元を隠すように腕を組んでいた。
(うわ……破壊力高すぎだろ……)
「り、凛……すごく、似合ってるぞ」
「〜〜〜〜っっ! べ、別に、あんたに見せるために選んだんじゃないんだからねっ! 妹たちの監視用よっ!!」
俺の素直な感想に、凛は一気に顔から火が出るんじゃないかというほど真っ赤になり、バタバタと胸を押さえた。昔はジャージ姿で一緒にプールで泳いでいたはずなのに、今の凛は完全に「恋する乙女」そのものだった。
「……凛先輩。顔が赤すぎます。熱中症ですか?」
「ち、違うわよ結衣ちゃん! これは日焼け! 日焼けのせい!!」
「凛先輩ずるーい! 陸兄ちゃんに褒められて照れてるー!」
「照れてないーーーっ!!」
水しぶきが上がるプールサイドで、真っ赤になって強がる凛と、マイペースに攻める結衣、そして無邪気にはしゃぐ葵。
「陸兄ちゃん、泳ぎ勝負しよ!」
「……陸兄さん、浮き輪引っ張ってください」
「ちょっと二人とも! 陸の独占は許さないんだからね!」
猛暑が照りつける市民プール。
俺——榛名陸の目の前には、タイプの異なる三人の美少女が揃っていた。
健康的なビキニ姿で抜群のスタイルを惜しげもなく披露する葵。
シックな黒のワンピース水着で不器用に寄り添ってくる結衣。
そして、フリル付きセパレート水着姿で顔を真っ赤にして強がる凛。
プールサイドを歩くだけで、周囲の男たちの視線が痛いほど突き刺さってくる。
先に動いたのは結衣だった。
「……陸兄さん、流れるプールに行きましょう」
結衣がポーカーフェイスのまま、そっと俺の浮き輪の端をキュッと掴んできた。
黒い水着から覗く白い肌がやけに眩しくて、目のやり場に困る。
「あ! 結衣姉ズルい! 陸兄ちゃん、あたしと滑り台行こ! 一緒に滑ろー!」
葵が横から飛びついてきて、俺の腕にギュッと抱きついてきた。
水に濡れた肌の感触と、柔らかい体温がダイレクトに伝わり、俺の理性が限界突破しそうだ。
「あ、葵ちゃん! 離れなさいってば! 陸も鼻の下伸ばしてデレデレしないのっ!!」
バシャバシャと水しぶきを上げながら割り込んできたのは凛だった。
真っ赤な顔で俺と葵の間に強引に入り込んでくるが、勢い余って俺の胸元に思い切り飛び込む形になってしまう。
「うわっ……!?」
「きゃっ……!?」
不意に重なる体温。
パステルピンクの水着越しに伝わる凛の華奢な体の感触と、ほのかに漂う甘い香り。すぐ目の前には、耳まで真っ赤にして潤んだ瞳で俺を見上げる「乙女」な凛の顔があった。
「……っ!? あ、あの、陸……その、近……っ」
「お、お前が飛び込んできたんだろ……!」
ドギマギしてフリーズする俺と凛。
昔はジャージ姿で一緒に川遊びしていたはずなのに、今の凛は完全に恋する女の子の顔をしている。胸を急速に上下させながら、必死に強がろうとする姿が破壊力抜群だ。
「……凛先輩。ズルいです。陸兄さんを独占しないでください」
「そうだよー! 凛先輩だけずるーい! えーい、水鉄砲攻撃だー!」
バシャッ!!
葵が容赦なく巨大な水鉄砲で凛に狙い撃ちを食らわせた。
「きゃああっ!? やったわね葵ちゃん! 陸の監視役として、負けてられないんだから!!」
真っ赤になった顔を隠すように、凛も水鉄砲を構えて反撃に出る。
静かに俺の背後に隠れながら、水面下で俺の服の裾を離さない結衣。
「……陸兄さん、私を盾にしてください」
「いや、お前を盾にはできないだろ……!」
真夏の太陽の下、バシャバシャと激しい水鉄砲合戦が巻き起こる。
真っ赤になって強がる幼馴染と、無邪気に攻めてくる義妹たち。
「陸! あんた浮気(?)してないで私を助けなさーい!!」
「浮気って何だよ! だから付き合ってねえだろ!!」
青空に弾ける水しぶきと、絶え間ない歓声。
真夏の熱気と甘いハプニングに包まれた、俺たちの賑やかで過酷な夏休みは、まだまだ終わる気配がなかった。
うーん、設定詰め込み過ぎたらなんか、ちょっと話が上手く繋がらないので、これまで以上に手動でつじつま合わせしました。でも、文章下手なので逆効果だったかも。




